( 293702 ) 2025/05/25 03:28:33 0 00 子ども・子育て支援金制度
来年4月から始まる「子ども・子育て支援金制度」は、財源を医療保険に上乗せして、徴収することになっている。しかし、社会保険料の一部として、国民から広く徴収されるにもかかわらず、恩恵が子育て世代だけになることから、ネット上では「独身税」と批判の声が殺到している。
この制度を盛り込んだ改正法が成立したのは、2024年6月だった。当時の岸田総理は審議の中で、支援金を徴収するにしても「歳出改革と賃上げで実質的な負担を生じさせない」と強調したが、野党側は採決直前まで強く反発した。
現役世代には、高齢者に対する負担に加えて、物価高の影響もある。上下の世代に挟まれる現状をどう考えるか。『ABEMA Prime』では、有識者とともに議論した。
子ども・子育て支援金制度
子ども・子育て支援制度の理念は、全世代・全経済主体が子育て世帯を支える、新しい分かち合い・連帯の仕組みにある。財源は1人あたり250〜450円の負担で、総額1兆円規模となる。これにより、妊婦支援給付金、出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金、児童手当、育児期間中の年金保険料免除などの支援を行える。支援総額は約352万円(0-18歳まで累計)で、現行支援の約206万円に、新規支援の約146万円が上乗せされる形だ。
支援策として、児童手当では所得制限を撤廃し、高校生の年代まで延長され、第3子以降は月3万円にアップする。妊娠・出産時には10万円相当を給付し、国民年金保険料は子どもが1歳になるまで免除。育児休業給付は、給付率を手取りの10割程度とする。
制度創設を進めてきた自民党・国光あやの衆議院議員は、「子育て世代のかゆいところに手が届く工夫をしているが、“独身税”との批判はわかる部分もある。いかにわかりやすく伝えるかだ」と話す。「さらなる支援の拡充もやるつもりだ。0歳から2歳までの給付は、これまで50万円程度だったのが、約2倍になった。高校にも給付的なものはなかったが、それを約50万円拡充した」。
なぜ所得制限を撤廃したのか。「厳しい人に、より手厚くするのが、助け合いの社会では基本だ」としつつ、「児童手当についてはかなり議論があったが、“こどもまんなか社会”で、親の所得に関係ない給付として、所得制限の撤廃を決めた」と説明する。
「子供を産む事が幸せという価値観」に疑問を持つサトウさん(20代独身)は、今回の支援制度に対しても批判的だ。「お金がなくて、結婚式を挙げない、子どもを産めない人がいる。収入が足りず、掛け持ちで働いている人がいる中で、“独身税”を取る。国民から1から100まで話を聞いたのか。もし話を聞いていたなら、なぜ昔からやっていなかったのかとなる。もっと景気がよく、子どもが多かった時代もあった。これでは『対策を立てても、お金がないから国民から巻き上げよう』と捉えられる」。
モデルでタレントの西山茉希は、子を持つ立場から「稼ぎとは違って、支援はありがたい」としながら、「人は子どもを持つ持たないを自分で選んでいる。少子化問題を改善したいのであれば、メリットを説明して、協力を求める手順を踏むべきだ。聞いただけだと、“独身税”に感じる人もいる。言葉がひとり歩きするといい印象を与えない」と語る。
小説家の室井佑月氏は「独身でも結婚していても、本当に困っている人を先に手当てした方が、少子化に効く」と考えている。「子どもがいても、お金に困らない人はいる。反対に、子どもを作ろうと思っても、お金がないからできない人もいる。本当に弱者になったとき、国が支えてくれる方が安心して生きられる」。
国光氏によると、「こうした議論は、国会でもあった」という。その結果として「来年4月から支援金制度は始まるが、いきなり月額250〜450円増えるわけではない。保険料が増える部分は、医療費改革や効率で無駄を撲滅して、同額分を下げるため、負担は生じない」こととしたと説明する。
負担額
文筆家で情報キュレーターの佐々木俊尚氏は、「所得制限を設けても、不平等感は出る」と指摘する。「世帯年収が1000万円でも、東京と地方で生活感覚は違う。東京では年収800万で子どもを産むのが厳しくても、地方では悠々自適に暮らせる。『線引きがわからないなら、いっそ所得制限を撤廃した方がいい』という考え方は理にかなっている」。
一方で、「払う側の不公平感もわかる。団塊の世代が後期高齢者になって、医療費が増えた結果、健康保険料率が上がっている。しかし、後期高齢者を1割負担から3割負担にはしない。独身や子どものいない家庭から見れば、上からは高齢者の負担があり、自分たちにはいない子どもの負担もかぶらされ、両側から押し付けられている」とも考える。
こうした不平等感を打ち破るために、「一切負担させない方がいい。コロナ禍以降、ここ4年で税収が5〜6兆円増えている。経済成長やインフレによる税収増を、新たな財政出動に充てるサイクルにすれば、負担も増えずに賃上げにもつながる」と提案する。
しかしながら、現状では「『経済成長により税収が増える』という根本的な考えを財務省は認めていない。そこが壁になって、税収増で支援を増やせず、負担を増やす話になる。消費が冷え込むと、景気も冷え込み、どんどんデフレに向かう。マインドの引き上げに目を向けない限り、不平等感は解消しないだろう」とみている。
EXITの兼近大樹は、「理解度と気持ちの問題」を感じる。「賢い人は、自分で調べて、理由をわかっている。メディアの切り取りや、誰かわからないSNSの投稿で知る人をどうするか。人口が高齢者に傾いているから、支える若い人にお金がない。そして『子どもを増やせば、それぞれの負担額は減る』と理解してもらう必要があるが、その手前で止まっている」。
国光氏は「“独身税”だと怒らせてしまっている時点で、政府や国会の伝える力が弱いということ。そもそも役所の資料はわかりにくく、これで理解しろと言われても無理だ。相当かみ砕く必要がある。しかと受け止めて頑張る」と意気込んだ。 (『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部
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