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2014年の「ベストカーアーカイブ」では、日本人がセダンの肥大化に対して抱くアレルギーについて考察された記事が紹介されている。

日本の自動車メーカーはアメリカ市場を重視しており、アメリカではミッドサイズのセダンが人気だが、日本ではビッグセダンがあまり受け入れられていない。

一部の例外を除いて、日本ではスポーツセダンやプレミアムセダンが人気であり、クラウンよりも大きなセダンに対する抵抗感があることが指摘されている。

(要約)

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 ベストカー本誌の過去記事から名企画・歴史的記事をご紹介する「ベストカーアーカイブ」。今回は2014年の企画から、セダンの肥大化に対する日本人のアレルギーについて考察した記事をプレイバック!(本稿は「ベストカー」2014年3月26日号に掲載した記事の再録版となります) 

 

文:編集部 

 

 「今度のスカイラインもレガシィも、すっかり大きくなってしまってがっかりだね」クルマ好きなら必ずといっていいくらい、そうつぶやく。 

 

 クルマ好きはいつになっても昔を懐かしむという癖があることを差し引いても日本人のセダンに対する肥大化アレルギーはひどい。 

 

 そのいっぽうでもはや、国内の5ナンバー基準で本格セダンが作られるはずもなく、セダンを愛するならば、全幅が1800mmを超えるからダメとはもういえない。 

 

 ベストカーも最近のセダンが大きくなりすぎだと考えるが、小さければいいという短絡的な話でもないだろう。 

 

 日本の自動車メーカーが最も重要視するマーケットといえばアメリカ市場だろう。 

 

 下の表を見てほしいが、トヨタで日本国内マーケットの約1.4倍、日産で約1.8倍、ホンダで約2倍、富士重工に至っては2.3倍という数字がある。ビジネスとしてアメリカ市場を中心に考えるのはしごくまっとうだ。 

 

 さらにアメリカ市場の売れ筋で日本メーカーの強いミッドサイズセダンの2013年の販売台数を見てほしい。 

 

 なんとトヨタのカムリは40万台以上、ホンダのアコードは36万台以上、日産のアルティマ(ティアナ)は32万台以上売れているのだ。 

 

 これは日本で昨年(2013年)ベストセラーになった、トヨタ・アクアの26万2367台よりもはるかに大きい販売台数となる。 

 

 これでは日本市場を意識しろといったって無理だ。 

 

 ちなみにレガシィの販売台数が伸びていないのはモデル末期だからで、フォレスターは12万3592台、アウトバックが11万8049台も売れ、北米でのスバルの絶好調を支えた。 

 

 シカゴショーで発表された新型レガシィはこの激戦区に飛び込んでいくことになる。 

 

 その新型レガシィ(※6代目)の発表されている北米仕様のスペックは全長×全幅×全高が4796×1840×1500mm。 

 

 これがこのまま日本でも発売されれば、現行型よりも50mm長く、60mmワイドになる。 

 

 2003年に発売になり、よく売れた4代目レガシィを基準にすると160mm以上長く、幅も110mm大きいから別のクルマといえる。 

 

 しかし、日本では昨年1年間で4928台しか売れなかったレガシィB4がアメリカでは、モデル末期にもかかわらず、その約10倍となる4万2291台も売れている事実は、どうにも動かしがたい。 

 

 ではなぜ、アメリカ人はミッドサイズカーを選ぶのか? 

 

 体格のいいアメリカ人にとってのミッドサイズは日本人にとっての5ナンバーくらいのイメージなのかもしれない、とよく言われる。 

 

 しかし、ここに面白いデータがある。OECD(経済協力開発機構)の2009年の調査によれば日本人男性の平均身長は171.6cmなのに対し、アメリカ人男性は175.7cmとその差は4.1cm。意外に小さいとは思いませんか。そしてドイツ人は179.6cmとでかい。 

 

 ちなみに一番大きいのはオランダ人で181.7cmもあるからサッカーワールドカップで対戦したらどうしよう!? 

 

 話が脱線したが、言いたいことはアメリカ人がミッドサイズカーを選ぶのは身体が大きいからではなく、道路や使う条件のせいだということ。 

 

 全米にハイウェイが整備され、カーブが少なく、直線が多い半面、整備されていない道路もあって、快適性を確保しつつ、1日数百kmの移動を考えればコンパクトクラスでは心許なく、ミッドサイズカーが選ばれるというわけだ。 

 

 壊れにくく経済的と品質においても日本車がリードしているのだから人気となるわけだ。 

 

 

 アメリカでの人気でセダンが大型化していることはわかっていただけたと思うが、なぜ日本人はビッグセダンを嫌うのか? 

 

 いくつか答が考えられるが、「クラウンよりも大きなクルマを認めたがらない」ということが潜在的にあると思う。 

 

 クラウンが初めて3ナンバーになるのは1991年誕生の9代目からで、8代目は4ドアハードトップに3ナンバー車の設定があっただけで、主力は全長4690mmで全幅1695mmの5ナンバーモデルだった。 

 

 しかも全長4800mm、全幅1750mmと本格3ナンバーボディになった9代目クラウンは売れなかった。8代目に比べると丸みを帯びシャープさに欠けたデザインが不評だったためと分析されたが、3ナンバー化への抵抗も少なからずあったと思う。 

 

 ライバルのセドリック/グロリアに販売台数で負け、1993年にビッグマイナーチェンジしている。 

 

 9代目クラウンと同タイミングで生まれたのが初代ウィンダム。北米ではレクサスES300として販売される高級車だったが、全長4780mmに対して全幅1780mmとクラウンよりも大きく、排気量もV6、3Lと直6、2.5Lが主力のクラウンよりも大きかった。 

 

 室内は広く、高級感もあり、初代こそ珍しさもあって売れたが、2代目、3代目は鳴かず飛ばず。結局、2006年に消滅、カムリに統合されてしまう。 

 

 3代いずれもがクラウンよりも大きいために、クラウンと比較されてしまったことで、逆に否定されてしまったような気がする。 

 

 同様にカムリも5ナンバーの時はちょっと高級なセダンとして売れていたのに、1996年グラシアセダンがカムリと併売というかたちで追加されて以来、勢いをなくしてしまったように思う。 

 

 カムリはウインダムとは違い218万8000円といった価格も手頃だったのに売れなかったのは、クラウンよりも大きいのに高級感が足りないといった、日本人的なものさしで判別されたためだという気がする。 

 

 マークXがクラウンよりも大きくならず、売れゆきを維持しているのとは対照的だ。 

 

 そして現在でも、ユーザーの心を縛り、クラウンよりも大きなクルマは、レクサスなど一部を除けば、たとえ安くても日本では扱いづらい大味なクルマという先入観を植えつけているような気がする。現行クラウンのサイズはアスリートで全長×全幅×全高が4895×1800×1450mmだ。 

 

 シカゴショーで発表になったレガシィも2月末からようやく発売になるスカイラインも、クラウンよりも大きい。その意味では売れゆきがちょっと心配だ。 

 

 

 クラウンよりも大きいか小さいかは国産モデルだけではなく、輸入車にもあてはまる気がする。日本人が大好きなスポーツセダンと言えばBMWの3シリーズと新型メルセデスベンツCクラスということになろう。 

 

 クラウンハイブリッドのアスリートは410万円。BMWの320iは8速ATで459万円。新型Cクラスも400万〜450万円のゾーンに投入されるはずだから、価格的にもライバルとなるはず。 

 

 さてサイズを比べてみると、BMWの3シリーズは全長×全幅×全高が4625×1800×1440mm、新型Cクラスは同じく4686×1810×1442mmとクラウンと全幅は変わらないが、全長は100mm以上短い。いわばそれが国際的なプロポーションのいいプレミアムセダンの基準である。 

 

 BMWの3シリーズや新型メルセデスベンツCクラスのように全幅は1800mm前後とワイドで、全長は4700mm以下と5ナンバー枠に収まるプレミアムセダンは日本車ではレクサスISくらいしか見あたらない。 

 

 プレミアムセダンとは言えないが、全長が短く、全幅がワイドなセダンというならば、スバルの新型WRX STIやマツダのアクセラセダンがなんとか該当するだけだ。 

 

 北米マーケットが主力のミッドサイズセダンが嫌で、プロポーションのいいスポーティなセダンが欲しいといってもほとんどないということ。 

 

 願わくば、HS250hとSAIの関係の逆で、レクサスISのトヨタバージョンを100万円ほど安く販売してくれることを願うばかりだ。 

 

 でもそれってクラウンのことじゃんって言われると、ぐうの音もでないんだけどね。ああやっぱりガラパゴスでいいから日本のスポーツセダンが欲しい。 

 

 1995年トヨタのケンタッキー工場で生産され、アメリカにおけるトヨタブランドのフラッグシップ、アバロンが逆輸入。全長×全幅×全高は4845×1785×1435mmとセルシオに迫る大きさもさることながら、FFのため室内空間の広さに皆が驚いた。V6、3L、200ps搭載で価格は288万円からだった。 

 

 2000年にはアバロンの後継となるプロナードが逆輸入。全長×全幅×全高は4895×1820×1460mmとさらに大きくなり、室内長×室内幅×室内高は2155×1545×1215mmとミニバンのような広い室内が売りだった。V6、3L、215ps搭載で価格は315万円からだったが、人気はパッとせず、2003年11月、わずか3年半で販売中止となった。 

 

 テリー伊藤さんが一時期乗っていて、後席の快適性を激賞していたことを思い出す。 

 

 思えばこのアバロン、プロナードの逆輸入は日本人のビッグセダンの嗜好を調査するサンプルだったのだと思う。 

 

 (写真、内容はすべて『ベストカー』本誌掲載時のものですが、必要に応じて注釈等を加えている場合があります) 

 

 

 
 

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