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小泉進次郎農水大臣が農政改革に意欲を示していますが、実際には「農水族」と呼ばれる特定の分野に強い影響を持つ国会議員や組織の抵抗が厳しいとされています。

この農水族は、JAや農水省などと密接な関係があり、過去には政策上の対立や農業団体票の影響力が選挙結果に大きな影響を与えたことがある。

小泉大臣が提案したコメ価格の改革や農政改革によるコメ価格の下落は、農水族やJAにとっても大きな悪影響を及ぼす可能性があり、今後の参院選や政治の展開に注目が集まっている。

(要約)

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小泉新農水大臣に“立ちはだかる壁”とは 

 

 「備蓄米を5kg2000円で」「コメ対策チームをつくる」といった発言で、農政改革に意欲を示す小泉農水大臣。小泉大臣に“立ちはだかる壁”を、政治ジャーナリスト・後藤謙次氏が解説します。 

 

 「コメは買ったことがない」などと発言し、批判が集まっていた江藤拓農水大臣が21日、辞任しました。その後任に選ばれたのが、改革派の小泉進次郎氏です。小泉大臣は2015年、自民党農林部会長に就任。農協改革などに取り組みましたが、JAや農水省、農水族などの反発でとん挫しました。 

 

後藤氏:当時、小泉氏は組織改革に手をつけようとしましたが、段取りに失敗して、とん挫しました。今回の”5kg2000円”発言は、当時の状況に近づく可能性があると思います。発言そのものは非常にいいわけですが、結果が出なかったとき、逆に大きな失点となってはね返ってくる。ギャンブル的な要素があると思います。 

 

カギを握る「農水族」とは 

 

 そもそも「農水族」と呼ばれているのは、どのような議員なのでしょうか。 

 

 まず「族議員」とは、特定の分野に精通し、政策決定に強い影響を及ぼす国会議員のことをいいます。その中の1つである「農水族」は、農水省出身者や地方選出議員が多く、族議員の中でも歴史が長いことで知られています。なかでも、”農水族のドン”と呼ばれているのが、自民党の森山幹事長です。 

 

 後藤氏は「農業団体票の多さから、強力な力をもっている」としています。 

 

農水族・農水省・JAの関係 

 

 農水族・農水省・JAの関係をみていきます。後藤氏は「鉄のトライアングル」と表現します。 

 

 農水族は「JAの組織票がほしい」、農水省は「予算をつけてほしい」、JAは「目指す農政を実現したい」。このような「トライアングル」の構造になっているということで、後藤氏は「関係が極めて強固」としています。 

 

後藤氏:この関係が、TPPをきっかけに崩れたことがありました。2016年の参院選、農業団体票が離れ、東北の1人区6つのうち5つで自民党候補が敗れました。農業団体が剥がれると、自民党の選挙基盤はガタガタに崩れるという苦い経験となりました。それ以来、農業団体に対してメスを入れることは、ずっと避けてきたわけです。 

 

 

選挙に強い影響をもつJA 

 

 JAの組合員数は約1020万人。単純計算すると全国の有権者の約1割です。この数字を見るだけでも、選挙への影響力がわかります。 

 

後藤氏:今回は小泉大臣がその影響を目をつぶっても、消費者団体に目を向けるという選択をしたんだと思います。しかし、これが裏目に出る可能性もあるというのが、今の状況だと思います。 

 

「トライアングル」から生まれた減反政策 

 

 この「トライアングル」から生まれたのが、減反政策です。減反政策とは、国がコメの過剰生産を抑制し、価格の下落を防ぐための政策です。コメから転作した農家に対し、政府から補助金が出ていました。この減反政策は2018年に廃止されました。 

 

 しかし、農水省は“適正生産量”を決定し、生産者に通知している。また、飼育用米や麦などへの転作補助金は拡充されているため、”事実上の減反政策”が続いていると指摘されています。 

 

後藤氏:石破総理は「コメの生産不足が背景にある」という立場ですが、森山幹事長は「コメは十分に足りている」という考えです。「コメの価格を下げる」という点では一致していますが、参院選のあと農業政策全体をどうするか、この2人がぶつかる可能性があります。そこに小泉大臣も加わり、山あり谷ありの状況が続くと見込んでいます。 

 

コメ価格の下落は、「トライアングル」にとっても大きなダメージに 

 

 コメ価格の下落は、結果的に「JAの弱体」「族議員の集票力の低下」「農林省予算の減少」につながります。つまり、「トライアングル」にとっても、大きなダメージとなります。 

 

 ちなみにJAの利益で最大なのが、信用(銀行)事業で2425億円(2022年度)です。この信用以外の事業では287億円の赤字です。この信用事業によって利益を出しているため、全体では大きなプラスになっているということです。 

 

後藤氏:この信用事業に過度に依存するJAの体質も、小泉大臣の念頭にあるんじゃないかなと思います。父・純一郎氏は郵政民営化、郵便貯金が持つ金融機構に切り込んだわけです。進次郎氏も、JAの農林中金が持つ大きな資金量、これに対する切り込みも考えてるんじゃないかと考えてます。 

 

 

参院選のカギを握るのは、やはりコメの価格です。 

 

 こうした「トライアングル」の流れを大きく変えようとする小泉大臣に対し、”農水族のドン”森山幹事長はどう考えているのでしょうか。 

 

 後藤氏は「森山幹事長にとって小泉大臣は一番煙たい存在。その人を容認したということは参院選を必ず勝ち抜くという、森山幹事長の覚悟の表れ」と指摘します。 

 

後藤氏:今回、小泉大臣の就任に関して、森山幹事長は”大人の対応”をしたわけです。今後、小泉大臣・森山幹事長の調整が重要になってくるんじゃないかと思います。 

 

 その参院選のカギを握るのは、やはりコメの価格です。後藤氏は、「コメ価格が下がらなければ、消費者からの反発が大きく、自民党は惨敗するだろう」と述べます。 

 

後藤氏:一方で、コメの価格が下がったらといって、それが自民党に追い風になるかわかりません。「下がって当然」というのが、有権者の間の認識となっています。 

 

政治ジャーナリスト・後藤謙次氏 

 

 参院選に向けて、コメ価格を下げることで一致団結するということですが、選挙が終わった後はどうなるんでしょうか。 

 

 後藤氏は「参院選で石破政権が持ちこたえても、連立の組み替えや内閣改造の可能性がある。小泉大臣の続投が保証されているわけではない」としています。 

 

 今後、備蓄米が店頭に届くことによって、コメ価格がどう変動するのか。それが参院選にも繋がってくるということで、動向に注目していきたいところです。 

 

(『newsおかえり』2025年5月26日放送分より) 

 

 

 
 

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