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森山裕幹事長は、小泉進次郎農相について、農協改革や米価の抑え込みに意欲を見せるものの、現場の全てを知っているわけではないと厳しい見解を示している。

森山氏はJAグループから多額の献金を得ており、小泉氏とは農協改革で対立した過去もある。

小泉氏の米価抑え込み政策に対し、森山氏は再生産ができる価格で売買されることの重要性を強調し、小泉氏を牽制している。

(要約)

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 米価の抑え込みや農協改革に意欲を見せる小泉進次郎農相(44)について、森山裕幹事長(80)が「 週刊文春 」の取材に対し、「現場の全てを知っているわけではない」などと語った。農水族として知られる森山氏の厳しい見解は波紋を呼びそうだ。 

 

「コメ担当大臣」となった小泉進次郎氏 ©時事通信社 

 

 小泉氏は、失言問題で事実上更迭された江藤拓氏に代わり、5月21日に農相に就任した。「昨年9月に総裁選で3位に敗れた後、石破総裁の下では党選対委員長に就任。ところが10月の衆院選で自民党は惨敗し、僅か1カ月で同ポストを辞任した。以降は無役となり、地元活動などに力を注いでいました」(政治部記者) 

 

 他方、森山氏は農相経験者で、JAグループからも多額の献金を得てきた。JA全中の山野徹会長とは同じ鹿児島県が地盤で極めて近しい関係だ。小泉氏が2016年に党農林部会長として農協改革に挑んだ際には真っ向から対立した過去もある。 

 

「江藤氏の後任として、宮下一郎元農相らが候補に挙がっていましたが、最終的に、高い発信力を持つ小泉氏を農相に推したのは、森山氏だった。農協改革についても『存分にやっていい』と伝えたといいます」(同前) 

 

 喫緊の課題は、5キロ5000円に迫る勢いで高止まりしている米価の抑え込み。小泉氏は就任早々、政府備蓄米30万トンを随意契約で放出する方針を発表し、「5キロ2000円に下げる」と宣言した。 

 

「これに対し、森山氏は5月24日、宮崎県での党県連大会で『コメを引き続き作っていこうと思ってもらうため、再生産ができる価格で売買されることが大事だ。安ければいいというものではない』と述べ、小泉氏を牽制しました」(前出・政治部記者) 

 

 果たして、森山氏は小泉氏の動きをどう見ているのか。本人に電話で話を聞いた。 

 

――講演で「再生産できる価格で」と述べていた。 

 

「再生産できる価格が、区画によってこれだけ違うんですよということを意識しないと。一番安いところに合わせれば中山間地(傾斜地や棚田が多く、生産コストが高い地域)が困りますし、中山間地に合わせれば(それ以外の大規模農家などが)あまりにも儲けすぎますから。そこをどう調整するか。再生産の生産費がこんなに違う作物は無いと思います。 

 

 1ヘクタール未満の農業経営体が35万8000経営体(2023年当時)、10ヘクタール以上が2万3000経営体(同)あります。この2万3000経営体に合わせればコストは下がるんです。しかし、35万8000経営体のことも考えないといけません。望んでそうなってるわけじゃないもんですから。先祖代々引き継いできた農地がたまたま中山間地にあるということなんですね」 

 

――小規模な兼業農家の方が数も多いし、コストも高い。 

 

「高いんですね。そこをどう調整していくか。それと、コメの一番の問題は、毎年人口は減りますから、10万トンずつ消費が減るわけですよ。だから、『目一杯作って下さい』とやると、値段が本当にどうしようもないぐらい下がっちゃう。だから、新しい食料・農業・農村基本法で、まず5年間、重点的に予算を入れ、しっかりやっていこうと。やっぱり土地改良を思いきって進めようと。すると、面積の広い田んぼで作れるようになりますから。総理がよく『作るだけ作ればいい』とおっしゃるんですが、それはその通りなんですけど、土地改良をしっかりして広いところでできるようにしてやらないと」 

 

 

――小泉さんが打ち出している「5キロ2000円」はあくまで備蓄米の話だが。 

 

「それは農家の方が心配してると思いますけど、今までは(令和)6年産とか5年産とかのもので、農協が3380円くらいで売っていました。それよりもちょっと安くなる、と。ただですね、コメが新しいほどいいというのも、ちょっと違うと思います。銀座の有名なお寿司屋さんなんか、2年くらい寝かしてから使うと言われてますから。だから、湿度と温度の管理をしておけば、やっぱり2年ぐらい熟成させた方が美味しいと言われてもいますので」 

 

――最近、JA全中の山野徹会長とは話を? 

 

「山野さんとは……、彼らは彼らで分かってると思いますけど(笑)」 

 

――これまでだと、JAから消費者に渡るまでに卸売業者などが介在し、コメ価格が高くなっていった。 

 

「そうですね。全農も、全農の子会社から流れていきますからね。しかし、あまり儲けてはいないですけどね、卸にいったやつはもうわかりませんよね。全農から卸に行く分もありますから」 

 

――備蓄米の放出は全農が約9割を落札していた。 

 

「はいはい、一番高く買ってくれてるっちゅうことです」 

 

――新たな随意契約は最善の手段? 

 

「直接早く出せればそれが一番いいと思います」 

 

――JAのからは反発はない? 

 

「JAとしては面白くないかもしれませんよね。我々の時は入札で売ってて、今度は安く売る時は我々は参加できないのかっていうのは、どう思ってるか分かりませんが」 

 

――今回、新大臣に小泉さんの名前を挙げたのは森山さん? 

 

「いやいや、これはもう人事権は総理でございますから。ただ、総理がこの人か、この人か、それは思われるじゃないですか」 

 

――宮下さんの名前も挙がっていたそうだが。 

 

「そうなんですけども。宮下さんは今、自民党の総合農政調査会長ですから。それは適任ないい人だと思いますけど。『小泉さんでどうだろうか』という気持ちが総理は間違いなくあられましたので、総理が打診をして断られるとおかしなことになりますから。大体、打診というのは幹事長の仕事ですから。私が前語りをしたと、そういうことなんです」 

 

 

――森山さんも小泉さんが適任だと見ている? 

 

「アナウンス力はありますし、しっかりした的確な行動力もありますから」 

 

――「農協改革にも手をつける」という小泉さんに、森山さんも「存分にやってもらって構わない」と。 

 

「いや、それは構わないと思いますし、正しい改革はしなきゃいけませんが、小泉さんが現場の全てを知ってるわけではありませんので、色んな意見を聞いて、正しい改革は進めなきゃいかんと思います。間違った改革をしたら、食の安全保障に影響しますからね。そこはやはり我々もよく見とかないかんと思います」 

 

◇◇◇ 

 

 5月28日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」ならびに29日(木)発売の「週刊文春」では、約40分にわたる取材で森山氏が明かした更なる小泉氏への評価のほか、小泉家を長年支援する米卸業者の存在、小泉氏がオーナー会員となっていたブランド米、JAが農水省に圧力をかけていたことが窺える内部文書、専門家が予測する今後の意外なコメ価格などについて報じている。 

 

「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年6月5日号 

 

 

 
 

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