( 294895 )  2025/05/29 06:36:36  
00

自民党有志の議員による勉強会では、インバウンド客向けの消費税免税制度の改革が議論され、免税制度の不正を解決するだけでなく、2000億円の税収増が見込めるとされている。

不正利用が横行しており、外国人が免税店で商品を購入し国内で転売する問題が指摘されている。

政府は2026年から「リファンド形式」で改善を図る予定だが、インバウンド客に対する免税の必要性についても検討されている。

外国人による免税額が2000億円とされ、免税撤廃による税収増が期待されている。

また、インバウンド客や日本人からは撤廃に対する賛否があり、インバウンド観光客が日本に買い物以外の魅力を見出し、日本を楽しむ姿勢も見られた。

(要約)

( 294897 )  2025/05/29 06:36:36  
00

2000億超の税収増を見込む 

 

5月22日、インバウンド客の消費税の免税制度について、麻生太郎衆院議員を中心とした自民党有志の議員による勉強会が発足し、撤廃も視野に入れ議論を進めていくことになった。横行する免税制度の不正を解決できるだけでなく、2000億円の税収増が見込めるという。確かに日本人がインフレに苦しむ中で消費税を納めているのに、インバウンド客向けの免税を続ける意義はあるのか? 新宿でショッピングを楽しむ当事者たちに取材した。  

 

インバウンド客の消費税の免税制度については、以前から不正に制度を利用し、転売で利益を得る問題が指摘されている。外国人が免税店で商品を大量に購入し、国内で転売、利ザヤを稼いでいるのだ。 

 

当然、転売の場合は消費税の納付対象だが、政府によると、1億円以上の高額購入をした外国人の9割は捕捉できておらず、捕捉できたとしてもほぼ全員が消費税を滞納したまま国外へ出国しているという。 

 

免税購入者は、出国時に税関へ旅券を提示しなければならないのだが、多額の不正を行なおうとする者は、旅券の提示を回避するなどにより、多くの者が税関検査を逃れているのが実態だ。 

 

これに対して、政府は2026年11月より、事後に消費税分を還付する「リファンド形式」に改めることで改善を図る予定だ。 

 

しかし、そもそもインバウンド客に対して免税をする必要があるのかも含めて検討すべきでは?というのが今回の動きである。麻生氏によると、外国人の免税額は捕捉されているだけで2000億円あり、廃止すればこの分の税収増が見込めるという。 

 

不正の根本的な対応策となるだけでなく、税収増にもなる一石二鳥の施策ということだろう。 

 

現在、今年4月の訪日外国人の数は390万人となり、過去最多を記録した。まだまだ円安は続いており、「安いニッポン」状態は継続中だ。その国内消費額は8兆円にも及び、消費意欲は旺盛である。 

 

インフレで日本人が苦しむ中で消費税を納めていることを考えると、消費に前向きな外国人に消費税を払ってもらうのも選択肢のひとつだろう。 

 

ネットでも、「なぜそもそも今まで免税だったのだろうか」「今すぐぜひ」「免税だけでなくむしろインバウンド税を設けるべき」といった声が相次いだ。 

 

一方でせっかく盛り上がっているインバウンドの機運をしぼませてしまうのではという指摘もあった。 

 

実際に外国人観光客や日本人買い物客はこの免税撤廃についてどう感じているのか。買い物客でにぎわう新宿で話をきいてみた。 

 

 

友人と日本を訪れた30代のオランダ人男性はこう嘆く。 

 

「何だって!? それはすごくバッドニュースだよ! なぜなら僕はショッピングが大好きだから。(紙袋を見せて)ほら、日本ではブランド物のジャケットを買ったよ。撤廃されたらすごく困るなあ。僕たちは日本を楽しむために来ているのに」(30代・オランダ人・男性) 

 

中国人の若い男性もこのニュースを残念がる。 

 

「免税がなくなったら困る! 今日、僕は免税店で母へのお土産でリラックマのぬいぐるみを買いました。ほんの小さな買い物ですが」(20代・中国人・男性) 

 

韓国人の女性も、眉をひそめてこう答えた。 

 

「それは本当の話ですか? もし、免税が廃止されたらかなり残念です。ショッピング目的の観光客は日本に来なくなると思います」(30代・韓国人・女性・求職中) 

 

いっぽうで、友人の女性はこう答えた。 

 

「私は日本の食文化が好きで来たから関係ないです。日本で買い物をする予定はないので影響はないです。(記者に)あっ、この辺で生ビールとおでんが楽しめる店を教えてください!」(30代・韓国人・女性・サービス業) 

 

免税撤廃は困るという意見だけでなく、意外にも日本には買い物以外の魅力があるので気にしないという意見も多かった。 

 

ハワイ在住のアメリカ人の70代男性はこう語る。 

 

「日本には観光地を巡りに来たんだ。3週間滞在して、仙台や九州、鎌倉、富士山など様々な場所を旅している。ほら、シンカンセンで。日本に滞在中、買い物をすることはもちろんあるけど、免税が廃止されても買う物の量を減らす考えはないよ。もし、日本に税金を払う余裕がないなら僕はハワイから出ない方がいいと思うんだ」(70代・アメリカ人・男性・仕事はリタイア済) 

 

いっぽうで、迎え入れる側の日本人はどう感じているのか。 

 

百貨店の前で友人と待ち合わせをしていた70代女性はこう話す。 

 

「外国のかたにはいっぱい来てもらいたいですけど、支払う額が同じほうがいいかなと思うので撤廃案には賛成です。やっぱり平等にしてほしいと思います」(70代・東京都在住・女性) 

 

都内ホテルで料理人として働く男性も撤廃案に賛成だという。 

 

「働いているホテルでも、外国人観光客が増えてきているなぁという実感はあります。免税を廃止した方が国のためにはなると思うので、そこは外国人観光客のかたに負担してもらいたいです。日本は魅力的な国だから免税を廃止しても観光客数は減らないと思います」(20代・東京都在住・男性・料理人) 

 

いっぽうで、悪影響を心配する声もあった。 

 

「私たちは困らないけど、外国人は日本にあんまり来なくなっちゃうんじゃないかなぁと思う」(30代・東京都在住・女性・専業主婦) 

 

ハーブティやアロマを売るお店で働いている女性も観光客減少を心配する。 

 

「今、インバウンドの影響でせっかく外国人観光客の方がたくさんいらっしゃっています。それで観光客数が減ったら悲しいですね。これが原因で買い控えみたいになってしまったら残念だなって思います。日本のものを知っていただけるせっかくの機会が減ってしまうので」(20代・東京都在住・女性・ショップ店員) 

 

今回の取材では、それぞれの立場や考えで、賛成と反対が入り混じる結果となった。 

 

免税制度を不正利用する輩はもちろん言語道断だ。その根本的な対応策として免税制度の撤廃もひとつの手だろう。 

 

さらに一石二鳥となる税収増を狙うなら、日本の商品の魅力を発信するなど、インバウンド客の購買意欲を減らさない方策も同時に政府に考えてもらいたいものだ。 

 

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 

 

集英社オンライン編集部ニュース班 

 

 

 
 

IMAGE