( 295913 ) 2025/06/02 05:31:28 0 00 天下一品の「こってりラーメン」
ラーメンチェーン「天下一品」の大量閉店がSNS(交流サイト)などで話題となっている。鶏ガラベースのこってり味がやみつきになると根強いファンも多い天一だが、首都圏の店舗が6月末に大量閉店することが店頭の掲示物などで明らかとなった。ラーメン業界は競争の激化に加え、食材価格や人件費の高騰に苦しんでおり、関係者は「フランチャイズ(FC)店舗の離脱が増えているのではないか」と指摘する。
■ピークから2割近く減少
6月30日で閉店するのは渋谷店、田町店、目黒店、新宿西口店、吉祥寺店、池袋西口店、蒲田店、川崎店、大船店、大宮東口店と少なくとも10店舗。いずれも東京や神奈川など首都圏にある。
天一を手がける天一食品商事(滋賀県)の公式サイトによると、5月29日時点で209店舗を展開。同社の広報担当者は「この件に関する取材はすべてお断りしている」とし、近年の店舗数がどう推移しているかも「ネガティブな印象を与えかねない」として回答を控えた。
ただ、過去の公式情報をたどると2004年に全国で200店舗に到達。230~240店舗まで広げ、全国300店舗を目指して拡大路線を敷いていたことが分かる。今回の大量閉店によって6月末時点で200店舗ほどとなり、ピーク時からは少なくとも2割近くは減っていることになる。
■昨年の倒産、過去最高を更新
ラーメン業界を取り巻く経営環境について、ある大手ラーメンチェーンは「新規参入や出店が多く、トレンド(流行)の移り変わりも激しい」と厳しさを明かす。
実際に近年のラーメン店市場は、その人気と裏腹に生き残りが難しい環境となっている。東京商工リサーチによると、24年に倒産したラーメン店は前年比26・6%増の57件で、23年の45件を上回り過去最高を更新した。「行列のできる人気店がある一方で食材や光熱費、人件費が上がり経営に行き詰まる店の淘汰がハイペースで進んでいる」(担当者)という。
天一の大量閉店は必ずしもこの背景と重ならないが、食材や運営コストの高騰は共通する。同社は他の外食チェーン同様にコスト上昇を理由とする値上げを少なくとも22年6月と23年2月に実施。かつて600円台で提供されていた看板メニュー「こってりラーメン」(並)の価格は900円台と大幅に上昇しており、それに伴ってFC店舗が本部から仕入れる食材費も値上がりしているとみられる。
■「千円の壁」超えていないが…
首都圏は、こってり味で天一と競合する「二郎系」や「家系」に加え、つけ麺などさまざまなラーメン業態がしのぎを削る激戦区。「京都発祥の天一は知名度が比較的高く、ファン層が厚いのは関西に限られる」との見方もあり、〝千円の壁〟を超えていなくても値上げで客離れが生じ、FC店舗の経営を圧迫している可能性がある。
正式に公表していないが、同社は店舗の約9割をFCが占めるという。業界に詳しい関係者は「FC店舗の離脱が大量閉店につながっているのではないか」と指摘する。(田村慶子)
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