( 297121 )  2025/06/07 04:36:45  
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小泉進次郎氏が農水相として復帰し、備蓄米に関する価格設定について「5キロ2000円」と主張しているが、専門家からは疑問の声が上がっている。

随意契約方式による備蓄米の供給が銘柄米の価格に影響を与えず、全体の供給量を増やさない問題が指摘されている。

さらに、価格の安定に対する政府の介入や随意契約方式に対する批判もある。

小泉氏は環境相時代に「育休」を取得するなど、イクメンとしても知られているが、農水相としての実績が問われる中、彼が大勝負に勝てるか注目されている。

(要約)

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小泉進次郎農水相 

 

【前後編の後編/前編からの続き】 

 

 昨年の総選挙惨敗で選挙対策委員長を辞して以来、鳴りを潜めていた小泉進次郎氏(44)が“コメ担当相”として表舞台に復帰した。連日、メディアで備蓄米は「5キロ2000円」だと連呼。父親譲りのワンフレーズでアピールするが、専門家らは疑いの目を向けるのだ。 

 

 *** 

 

 前編【「進次郎に変なことはさせない」 農林族のドン・森山幹事長が周囲に語る理由 小泉農水相が喧伝する「5キロ2000円」の落とし穴とは】では、農林族のドンである森山幹事長が進次郎氏を警戒する理由について報じた。 

 

 農水省は5月26日、随意契約による備蓄米の売渡価格を公式ホームページで公表。平均〈10700円/60Kg〉としたほか、〈一般的なマージンで既存在庫とブレンドしない前提で試算すると、小売価格が2000円程度/5Kg(税込2160円程度)となる水準〉と説明した。備蓄米は大手流通業者を通じて販売が開始された。 

 

 だが、専門家は「随意契約方式」が全体の米価引き下げに資するか、疑問を呈する。 

 

 コメ問題に詳しい、宇都宮大学農学部助教の小川真如氏が言う。 

 

「消費者にとってなじみのある、特定の品種や産地が指定されて商品化された、いわゆる銘柄米は、品種や産地が多様な備蓄米が放出されたからといって、必ずしも供給量が増えるわけではありません。すでに、備蓄米を使ったブレンド米の価格と銘柄米の価格で差が生まれています。平均価格で見ると、銘柄米の価格は、備蓄米による平均価格の押し下げ効果を打ち消すほど上昇しています」 

 

 備蓄米が放出されても、関係のない銘柄米の小売価格は下がらないというのだ。 

 

「銘柄米の値段は変わらない一方、国は備蓄米をこれまでの落札価格より大幅に安く販売するので、ブレンド米だけは一時期、極端に安くなるでしょう。しかしそれだけの、一過性のイベントに終わる可能性があります」(同) 

 

 

 元農水官僚でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏もこう言う。 

 

「銘柄米も含めた全体の値段を下げたいのならば、備蓄米の値段だけを2000円にしたところで意味がありません。価格は需要と供給のバランスで決まるので、結局は全体の供給量を増やさないとダメです。仮に備蓄米を放出して供給量を一時的に30万トン増やしても、JA側が今まで卸売業者に売っていた分を30万トン絞れば、全体の供給量は増えないんです」 

 

 なぜ、備蓄米の供給を増やすと、JA側が供給量を絞る可能性があるのか?  

 

「今年秋に収穫されるコメの確保に向けて、JAはすでに農家に対して前払いする概算金を去年と比べて3割から4割ほど引き上げて、一般的なコシヒカリで60キロ2万3000円という数字を示してしまっています。全体の供給量が増えると、2万3000円という概算金の価格が維持できなくなるのは明らかですから、高米価を維持したいJAは供給量を絞る可能性が高いのです」(同) 

 

 世界の農業・食料問題に詳しい、農業ジャーナリストの浅川芳裕氏は「随意契約方式」自体に問題があると指摘する。 

 

「随意契約では政府が価格を含む条件を自由に設定できます。政府による市場価格への介入であり、市場メカニズムをゆがめかねません。備蓄米は『主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律』で規定されていますが、『価格の安定』は政府がコメの価格を自由に指定することを意味しないはずです」 

 

 農水省は業者の選定に関して〈毎日先着順で受付・契約・販売〉とするが、前出の山下氏も「随意契約方式」に警鐘を鳴らす。 

 

「競争入札の場合には最も高い金額を提示した業者が落札し、その利益は国庫に入るため全国民に還元できるのですが、今回の随意契約の場合は安く売るので国庫の利益とはなりません。たまたま備蓄米を購入できた国民は利益を得るものの、そうではない国民はまったくメリットがないのです」 

 

 先の浅川氏の舌鋒は鋭い。 

 

「小泉農水相は“価格破壊を起こさないと世の中の空気は変わらない”と発言していますが、民間価格への介入を当然視する、まさに脱法的な態度です。農家の増産を実現し、米不足のない環境を作るのが政治家本来の役割のはずです」 

 

 

 自民党関係者は目下、小泉農水相にはまともな相談相手が身内以外にほぼ見当たらないと語る。 

 

「最近、進次郎に近しかった人が相次いで亡くなったんです。特に、親子2代にわたって小泉事務所に仕えた元秘書が今年3月に亡くなった時には、葬儀でその元秘書の名前を涙ながらに叫ぶほど取り乱して、見ていられませんでした」 

 

 その元秘書と共に小泉家を支えた叔父、小泉正也氏(79)に聞くと、 

 

「前の大臣が辞めることになった時、“進次郎にくるんじゃないかな”とちらっと思ったんだけど、予感が当たっちゃったね」 

 

 と、再び甥にスポットライトが当たって、喜びを隠し切れない様子。 

 

 しかし、小泉農水相といえば環境相時代に第1子が産まれた際には「育休」を取得したほどのイクメン。現在は、長男(5)と長女(1)を育児中だ。妻の滝川クリステル(47)が平日、育児をほぼワンオペで行う代わりに週末は積極的に育児に時間を費やしているという。大臣就任はイクメン生活に危機を招かないか。 

 

「(滝クリは)地元にも来なくていい、ということにしているしさ」 

 

 とは正也氏。さらに、 

 

「(長男は)ちょっとエキゾチックな顔立ち。お母さん似だね。美男子だよ」 

 

 火中の栗を拾った息子に小泉元首相は何と?  

 

「“大変だな”と」 

 

 父親は、ワンフレーズで乗り切れるような甘い状況ではない、と見通しているようだ。コメの価格が下がらなければ期待感は逆風に変わる。小泉農水相は、果たして石破政権の浮沈が懸かったこの大勝負に勝てるのか。 

 

 前編【「進次郎に変なことはさせない」 農林族のドン・森山幹事長が周囲に語る理由 小泉農水相が喧伝する「5キロ2000円」の落とし穴とは】では、農林族のドンである森山幹事長が進次郎氏を警戒する理由について報じている。 

 

「週刊新潮」2025年6月5日号 掲載 

 

新潮社 

 

 

 
 

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