( 297711 )  2025/06/09 05:26:30  
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2025年1-5月に弁当店の倒産が22件と過去最多ペースである。

需要の縮小や原料高騰により経営が厳しく、採算悪化が進んでいる。

大手と地元店舗との収益格差が広がり、コスト高により価格転嫁も限界に達している。

コメ価格の高騰が特に中小店の経営に影響しており、多くが減益や赤字に転落している。

こうした状況下で弁当店の経営戦略や採算性の確保が模索されている。

(要約)

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「弁当店」の倒産は過去最多ペースで推移している(写真=イメージ) 

 

 2025年1-5月に発生した、駅弁や仕出し弁当を中心とした「弁当店」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は22件となった。2024年の同期間(21件)を上回るペースで推移しており、このペースが続けば2025年は前年をさらに上回り、通年で過去最多を更新する可能性がある。 

 

 弁当店では、会議や法要、冠婚葬祭といった大口の受注や、高単価な弁当のニーズが縮小したことに加え、テレワークなどで事業所向けのランチ弁当需要も減少し、法人向けをメインとする仕出し弁当や日替わり弁当などの商圏は縮小傾向が続いている。2021年以降は原油高や円安、ウクライナ情勢の影響を受け、鶏肉や食用油、小麦粉など食材価格の高騰に直面。長時間労働や早朝対応が必要なことから調理師などの採用に苦戦するなど人手不足も深刻化し、厳しい経営を余儀なくされた。近時は食材のなかでも特に「コメ」の高騰が弁当店の経営を大きく圧迫しており、事業を諦めるケースが目立ち始めている。 

 

 こうしたコスト高を受けて、弁当店でも価格転嫁を進めてきたものの、スケールメリットを生かした大手と、地元密着型の「街の弁当店」との間で収益力の格差が広がりつつある。弁当事業を手がける企業の損益状況をみると、2024年度は45.0%が前年度から「増益」となった。一方で、「減益」(21.7%)は2年ぶりに上昇、「赤字」(30.2%)は2年連続で低下したものの、赤字・減益を合わせた「業績悪化」の割合は51.9%と半数を占めるなど二極化が進んだ。 

 

 特に、原価構成に占める食材費の割合が非常に高い中小の弁当店で、コメ価格の高騰が採算悪化に直結し、減益や赤字となったケースが目立った。また、500円以下での値付けも少なくないスーパーやコンビニなど「ワンコイン弁当」との競争を背景に、値上げが進まず収益力が低下した弁当店もみられた。 

 

「弁当店」の倒産件数 推移 

 

 足元では、安価な備蓄米が放出されたものの、「品質維持のためには新米を使いたい」との声もあり、コメをめぐる弁当店の思惑は複雑な様子もみられる。ご飯を同じ分量で盛り付けるほか、廃棄ロスを減らすことでコストを削減し品質を維持する動きや、食品スーパーに出品するなど新たな販売機会を模索する取り組みも進んでいる。 

 

 ただ、多くの弁当店では食材や包装資材の価格上昇分を売価に十分転嫁できる状況にはなく、採算面での課題は残ったままとなっている。物価高で価格にシビアな消費者も増えるなかで、どのように弁当の「採算性」を確保するのか、各弁当店の経営戦略が試されている。 

 

 

 
 

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