( 298508 ) 2025/06/12 04:59:37 0 00 6月10日に会見を開いた山尾志桜里氏
国民民主党は6月11日、両院議員総会で、参議院選で立候補を予定していた山尾志桜里氏の公認取り下げを決めた。山尾氏は前日の10日に記者会見し、過去の不倫報道などについて釈明していたが、「新しく言葉を紡(つむ)ぐことはご容赦いただきたい」などと説明を避けたため、納得しない報道陣から質問が相次いだ。山尾氏の出馬が報じられた後に国民民主党の支持率が急落した「山尾ショック」は会見でも収まりそうもなく、党内から山尾氏の公認取り消しを求める声が噴出した。
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両院議員総会後、山尾氏の公認取り消しについて、国民民主党の榛葉賀津也幹事長は、記者団にこう説明した。
「国民民主党を支えているすべての都道府県連、全国の地方自治体議員から、同様に、山尾さんの公認は見送ってほしいという声がありました。ただし、山尾さんにも弁明のチャンスを与えるべきだという声もあり、昨日、山尾さんには会見を行っていただきましたが、多くの皆さんから、疑問を払拭する会見ではなかったという声があり、本日の両院議員懇談会においても、来たる参議院選挙で、党が一丸となって戦う環境を整えるためには、山尾さんの公認は見送ってほしいという声があった」
同党の国会議員はこんな感想を漏らした。
「これで党として結束できると思う。ただこうなるなら、最初から山尾さんを誘うべきではなかった。あいまいな対応がお互いの悲劇だった」
■「8年前の自分の行動、対応は未熟だった」
山尾氏は、8年前の2017年、妻子ある男性との交際疑惑を週刊文春に報じられた。当時山尾氏は会見で、「男女の関係はない」と否定したが、記者からの質問を受けつけずに会見を打ち切り、批判を浴びていた。また、政治資金から高額のガソリン代を不正支給していた問題や、JRの議員パスを私的利用していた問題なども報じられた。
6月10日の会見で、山尾氏は冒頭、過去の不倫疑惑について自ら釈明した。
「8年前の、自分の行動、ご指摘を受けた際の対応は、きわめて未熟だったと反省している。8年前の自分にはおごりがあったと思います。8年前の自分の行動と対応の未熟さを、心からお詫び申し上げます」
当時、交際が報じられた男性との関係については、
「現在、私生活、仕事の面で特段の交流はございません」
と説明した。
ただし、8年前に否定した不倫を認めるのかと問われると、「8年前に言ったことは事実です」と言うものの、
「当時お話した以上のことを、新しく言葉を紡ぐことをどうかご容赦いただきたい。新たに何かお話しすれば、様々なご迷惑をおかけすることもあります」
と、説明を一切しなかった。
2021年には週刊文春が、山尾氏との交際疑惑が報じられた男性と離婚した元妻が自ら命を絶ったと報じている。これについて問われると、
「私は事情を存じ上げません。その中で、私が思いを伝えることはできません。控えさせてください」
と言うばかり。
「元妻の子供が遺児となっているが、お子さんのことを考えたことがあるか」
と聞かれても、
「控えさせてください」
と質問に向き合わなかった。
■ガソリン代や議員パスの疑惑は認めて説明
一方、高額のガソリン代を支払っていた件については、具体的に説明した。
「当時の秘書が、ガソリンスタンドでどなたかが置き去っていかれた領収書を持ってきて経費として支払い請求をし、支払いを受けていた。秘書が不正を認めて、全額の支払いを総支部に受けた。ひとえに私自身の責任だとお詫びを申し上げたい」
議員パスの私的利用問題についても、認めて謝罪した。
「当時、議員パスを使って私的な用事をすませていたことは事実です。たいへん申し訳なく思っています。さらに申し訳なく思っているのが当時の私の謝罪です。SNSを使って、情けないお詫びの仕方だったと大変後悔しています」
山尾氏は、自らの出馬に批判の投稿が炎上していることについては、
「正直、想像以上でした。正直、全部を見られないでいます」
と会見で明かした。
山尾氏はこの会見を「丁寧に真摯に対応したい」と言って始めただけに、会見中もSNSではライブ配信を見た人たちから、
「まったく真摯じゃない」 「何も答えてない」
などの批判が殺到していた。
■「会見をさせたのは大失敗」
山尾氏の会見を聞いていた国民民主党の国会議員A氏は、
「いや、会見で『山尾ショック』がさらに炎上だ。会見をさせたのは大失敗」
と暗い表情で話していた。
「会見では不倫報道があったことは謝罪しながらも、ごまかすような答えに終始していた。これではうちの支持率は回復しない。出馬会見前と後、ダブルの山尾ショックだ」
A氏だけでなく、党内では会見への批判が高まり、参院選への影響を避けるためにも公認取り消しを求める声が噴出した。
■同期議員は「相変わらずですね」
山尾氏は旧民主党が政権交代を果たした2009年の衆院選で旧民主党公認として初当選した。そのとき山尾氏とともに当選した元衆院議員のBさんは、
「もっと素直になれば、みんな積極的に応援するのですが、相変わらずですね」
と話す。
Bさんによると、同期当選組に市長に転身している人が多いため、6月3日に東京であった全国市長会に合わせて、当選同期会が開かれたという。
「当時のメンバーで集まろうという話になって、山尾さんも来られたので、『選挙、頑張って』と話しました。ただ、その後のポスト(投稿)がね……」
■「山尾さんのために集まったような感じだね」
山尾氏は自らのXに6月4日に次のようにポストしている。
〈60人以上集まった2009年当選同期会。私の再挑戦の件も、同期の仲間という一点で、本当にあたたかい励ましをもらいました〉
「昔の仲間が選挙に出るというなら『頑張って』と激励はしますよ。ただ私だけではなく、参加した何人ものメンバーがこれを見て、『なんか山尾さんのためにわざわざ集まったような感じだね』と言っていました。参院選の全国比例なんだから、どこからでも山尾さんを応援できるのに、損な性格は変わらない。昔から、自分大好きでまわりが見えない山尾さんらしいなと」(Bさん)
山尾氏の「まわりが見えない」行動はほかにもあった。
6月上旬、東京都議選に国民民主党から出馬する候補の陣営に、山尾氏から「ご挨拶にうかがいたい」という趣旨の話があったという。陣営関係者が言う。
「山尾氏が事務所にきたことがオープンになれば、票が減るのは目に見えている。うちだけでなく、他の候補のところにも同様の連絡がきたそうです。どうしたものかと困りました」
■「自分から身を引くべきでした」
山尾氏は6月8日には、参院選のために、
〈事務所をオープンしました〉
とポストしたが、事前の告知はなかったためメディア報道はなかった。先のBさんはこう話した。
「選挙事務所を設置するなら、党からメディアへ事前に告知するなり、党幹部が支援者にご挨拶にうかがうなど、なんらかの対応をふつうはしますよ。いきなりSNSで事務所を開いたと知った人が大半でした。実は国民民主党内では、超ド級の山尾ショックに『公認を取り消すべき』という声が少なからずあった。山尾氏もそんな空気を察知したのでしょう。都議選の候補者に働きかけたり、SNSで自ら発信したり、既成事実を作っていった。出馬取り消しなんてことにならないようにとの作戦だったのでしょう。でも、これだけ支持率が落ちたんだから自分から身を引くべきでした」
会見で山尾氏は、自らの出馬で国民民主党の支持率が落ちたことについて聞かれて、こう答えていた。
「自分に一因があるんだろうと思う。国民民主党の議員、党員、サポーターが、一生懸命ここまでやってきた。そういう中で、私の出馬の報道が水をかけてしまった面がある。本当に申し訳なく思っています。そのあと、自分にできることはなんだろうと考えた時、少しでも不安をやわらげることができたらと。今日の会見は、そんな思いもあります」
だが、説明しない会見で、批判はむしろ増幅した。山尾氏にとっては出馬のための会見だったが、公認取り消しの決め手となってしまった。
(編集部・今西憲之)
今西憲之
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