( 299283 ) 2025/06/15 04:04:51 0 00 あるシングルマザーの家庭では、小6の娘と中2の息子が性行為して妊娠してしまった ©Paylessimages/イメージマート
〈《「性犯罪者の家族」の現実》“自慢の息子”が女子高生の着替えを盗撮→逮捕…「高校生の悪ふざけ」から始まった家族崩壊の衝撃リアル〉 から続く
「加害者家族」――罪を犯してしまった当人の親やパートナー、子どもなど血縁関係にある人たちは、欧米では「隠れた被害者」と呼ばれる。加害者家族たちは「家族だから」という理由で、社会的あるいは心理的に追い詰められることも多く、中には自死を選んでしまう人もいる。
中でも1000人超にのぼる性犯罪の加害者家族にソーシャルワーカーとして向き合ってきた斉藤章佳氏は、加害者家族の困難を理解することが、支援につながるとしている。今回は、斉藤氏が見聞きしてきたうち、きょうだい間の性行為で小学生が妊娠してしまったケースを同氏の新著『 夫が痴漢で逮捕されました 』(朝日新聞出版)より一部抜粋し、お届けする。(全3回の3回目/ 最初から読む / 前回を読む )
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「お母さん。今月、生理が来ないんだけど……」
夫と離婚し、ひとり親として子育てをしているD子はある日、小学6年生の娘からそう打ち明けられた。慌てて産婦人科に連れて行くと、なんと娘は妊娠8週目だった。聞くと、自分が仕事で家を空けている間、中学2年生の兄としばしば性行為を繰り返していたというのだ。
D子は葛藤しながらも、児童相談所に通報することを決めた。その結果、息子は一時保護ののち、鑑別所に送致され、家庭裁判所による審判で少年院での処遇が決定された。娘はD子との生活を続けることになったものの、母としてふたりの子どもの将来に深い苦悩を抱えている。
家庭内での性暴力で特徴的なのは、「加害者と被害者が同じ家族の中に存在する」という現実です。このケースのように兄が妹に性加害を行った場合、その親であるD子さんは加害者家族であると同時に、被害者家族にもなります。「きょうだいで性行為なんてありえない!」と驚いた方もいるでしょう。たしかにそれも無理のない話かもしれません。
というのも、家庭内での性暴力は、なかなかその実態が明らかになりません。こども家庭庁のデータでは、2023年度の児童虐待の相談件数のうち、性的虐待は2473件でしたが、そこにはきょうだいや祖父、おじなどからの性暴力は含まれません*1。児童虐待防止法で、「児童虐待」が子どもを監護する保護者によるものと定義されているからです。
*1:こども家庭庁「令和5年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数」
性的虐待の実態を調査した神奈川県中央児童相談所のデータによれば、きょうだい間の性暴力は全体の17%でした。加害者でもっとも多いのは実父(36%)そして養父・継父・内夫(23%)で、実兄(12%)、祖父(6%)と続きます*2。
*2:神奈川県中央児童相談所「神奈川県児童相談所における性的虐待調査報告書(第5回)」2023年5月
このケースの場合、息子による加害行為は暴力的なものではなかったとされ、娘にも性的な好奇心があったことが後日、明らかになりました。娘は現在も兄との同居を強く望んでいると話していることから、D子さんは子どもたちの心情を理解し、今後どのように家庭内で性教育を行っていくのか、児童相談所と相談しながら前に進んでいくといいます。
斉藤 章佳/Webオリジナル(外部転載)
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