( 299371 )  2025/06/15 05:48:20  
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広まった備蓄米について、野原広子氏は「家族で買いだめするのはやめた方がいい」とコメントし、昔のコメ騒動や自身の経験を織り交ぜながら考えを語った。

(要約)

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6月に入り広く流通した備蓄米(時事通信フォト) 

 

 小泉進次郎農水大臣によって備蓄米が大量に放出され、多くの店舗で行列ができる様子が報じられた。そうしたなかで女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子氏は「“家族総出で買えるだけ買う”なんて絶対にやめた方がいい」と考える。オバ記者が、令和のコメ騒動に対する素直な思いを綴った。 

 

「気のせい? いや、違う。感触がまるで違うよ」 

 

 と、声にこそ出さないけれど、先日、コンビニで手のひらにのせたおにぎりに全神経を集めていたの。おにぎりの値段が1個200円超えなのは、まぁ仕方がないとする。ガソリン代から電気代、食品全部が値上げされてそのたびに驚くのは疲れるし、“アラ古希女”がクヨクヨしたって、いいこと一つもないもの。なので、神経をズドーンと太くすることにした。が、このおにぎりの軽さはどうよ。しかも、見た目を小さくしないためにギリギリまでゆるく握っていないか? 

 

 そんなわけでコンビニのおにぎりは買わずに棚に戻したけれど、その足でスーパーに行ったら、最も高いブランド米の〈はえぬき〉が5kg4780円。「殺す気か!」とカッと頭に血が上ったわよ。と、そのとき、 

 

「コメの話になると日本人って感情的になるよね」 

 

 と言われたことを思い出したんだわ。 

 

 そう言ったのは、平成のコメ騒動(1993年秋)の直後に知り合った中国人留学生・マオくんだ。彼の住まいは古い木造アパートだったけれど、日本語と英語が達者で、その口ぶりから本国ではかなりいいとこの子息とみた。どういう経緯だったか忘れたけど、彼が高菜の漬けもので味付けした魚の鍋を作ってごちそうしてくれたことがある。それはまさに中国四千年の味だったけど、一緒に出てきたご飯が中国米でちょっと微妙だったんだよね。少しだけ箸をつけてコメを残した私を見て、マオくんが「感情的」と言ったのよ。彼が「たしかに日本のおコメはおいしいけど、毎日食べたいとは思わない」と言うから、さらに言い合いになった。 

 

 調べてみたら、1993年は中国から108万t、タイから77万t、アメリカ合衆国から55万t、オーストラリアから19万tのコメを輸入してしのいでいる。でも、私が海外米を食べたのはマオくんのアパートでだけ。というのも、茨城の実家から義父が定期的にコメを車で運んできてくれて、困っていなかったのよ。実家では、農家から年間まとめて買って、玄米で保管してもらっていて、「今年は1俵60kgで2万4000円。半俵で1万2000円だけど、精米すると1割くらい糠が出て減るから半俵で27kgだな」という母親の独り言が耳の奥に残っている。 

 

 

 今回知ったんだけど、わが家みたいに農家から直接買ったり、自分の家で作ったコメを家族や親戚にばらまくのを「縁故米」というんだってね。私も上京して45年、スーパーでコメを買ったことがない。江藤拓前農水相の「コメは買ったことがない」「売るほどある」という発言が炎上し、辞任に至ったときは、正直「なんで?」と思ったよね。 

 

 次の瞬間、〈5kg4780円のはえぬき〉を思い浮かべて、「まぁ、農水大臣が言っていいことじゃないね」と笑ったけど、その後に登場したのが、ジャーン、小泉進次郎コメ大臣! 総裁選で負けてからこっち、アルバイト先の議員会館ですれ違うとなんとなく元気がないように見えたけど、政治家って光を浴びると人が変わる。備蓄米を「5kg2000円台で売る」とぶち上げただけじゃない。「5kg1800円程度」と畳みかける姿はまさにスター政治家よ。5月30日から申し込みが始まった備蓄米は、その前に放出した古古米よりさらに古い古古古米だから安くなるのは当然という人もいるけれど、このスピード感はさすがよね。 

 

 が、しかしよ。私は言いたいの。「“小泉放出米を家族総出で、買えるだけ買う”なんて絶対にやめた方がいいよ」と。 

 

 チャーハン、カレー、雑炊なんかは白いピカピカのコメじゃなくてもいいから、〈5kg2000円台のコメ〉の用途はあるっちゃある。でもさ、いちばん悲惨なのはいつもより1000円高くなったコメをつかまされることじゃないからね。 

 

 国が備蓄米として適切な環境で古古米、古古古米を保管したところで、家に持ち帰って常温保存をしたら元も子もない。遠くから古くなった糠のにおいがしてきたら最後だよ。さらに、夏の暑さにコメ食い虫が湧いたら完全にアウト! 

 

 そんなことにならないように、家の保管米はせいぜい5kg一袋だけにして、丁寧に食べる。これに尽きるよと。 

 

 あと3か月たったら新米が穫れて、いまの新米がほどほどの値段の古米になって出回るからねーと、若い日にさんざん虫を湧かせて、ゴミの日に大袋ごと出した私は言いたいのでした。 

 

【プロフィール】 

「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。 

 

※女性セブン2025年6月26日号 

 

 

 
 

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