( 299376 )  2025/06/15 05:53:34  
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2030年代には太陽光パネルの大量廃棄が予想されるが、リサイクルの準備が足踏みしている。

政府はパネルの再利用を義務付ける法案の提出を見送り、パネルの廃棄量の増加により安易な処分が進む可能性があると懸念されている。

自民党は環境整備を進めるために臨時国会への法案提出を目指しており、誰がリサイクル費用を負担すべきかをめぐって議論が続いている。

(要約)

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2030年代に大量廃棄時代を迎える太陽光パネルのリサイクルの準備が足踏みしている。政府は今国会でパネルの再利用を義務付ける法案の提出を見送った。費用負担を巡り、根本的な部分で公平性が問題となったためだ。パネルの廃棄量が年々増加する中、法整備が遅れれば有害物質を含むパネルの安易な埋め立て処分が進みかねず、関係者は早期の制度確立を目指している。 

 

「臨時国会への法案提出を目指すとともに、環境整備を進める」 

 

自民党の環境・温暖化対策調査会などは太陽光パネルのリサイクルを促進する制度について、法案提出の目標時期を「今秋」と示す形の決議をまとめ、今月5日に石破茂首相に提出した。 

 

今国会での提出が見送られた法案はパネルの解体費用を所有者、リサイクル費用をメーカーに負担させる仕組みで、既設のパネルについては、法施行後に新たにパネルを製造するメーカーなどに負担させる内容だった。 

 

これに対し、内閣法制局は他のリサイクル関連法との違いを指摘。例えば、自動車のリサイクル費用については所有者が負担しており、整合性が取れないとした。 

 

法案はメーカーに「作りっぱなし」をさせず、リサイクルにまで責任を負う「拡大生産者責任」の考え方に基づいたものだったが、出足からつまずいた形だ。現在はリサイクル費用を誰が負担すべきかを巡って、より丁寧な説明の組み立てが進められている。 

 

東京電力福島第1原発事故後の2012年、再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度(FIT)」が始まり、太陽光パネルは全国に急拡大した。総発電量に占める割合は11年度の0・4%から、23年度は9・8%に増加。だが当初からリサイクルまで考えられておらず、老朽化して廃棄されるパネルは廃棄物処理法に則って、埋め立てなどで処理されている。 

 

太陽光パネルのガラスには、発電効率を高めるためにヒ素やアンチモンといった人体に有害な物質が含まれる場合がある。地下水脈近くに埋め立てられれば、周辺住民に健康被害が出かねない。環境省の試算では、パネルは30年代後半から目立って増え、40年代には最大で年間50万トンに迫る。21年度に処分された産業廃棄物の全量の5%に相当する見通しだ。 

 

普及拡大偏重で、廃棄問題を軽視してきたツケが顕在化しつつあり、環境負荷低減の観点からも適切にリサイクルできる体制整備が急がれる。(織田淳嗣) 

 

 

 
 

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