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木徳神糧が、コメの流通を意図的に制限したり価格を操作したりしていないというリリースを発表した。

木徳神糧はコメ卸業界に対する批判に対応しており、業績が好調なのは一時的な現象であると説明している。

また、営利企業である同社は利益の確保が重要であり、ステークホルダーに対して説明責任があるとしている。

(要約)

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6月11日にコメ卸大手・木徳神糧が出したリリースでは「ステークホルダーの皆さまへ」と題し、米の流通を阻害した事実は一切ないと記されていた(編集部撮影) 

 

 「弊社が市場価格を釣り上げたり、買い占めや出し惜しみによって流通を阻害したりといった事実は⼀切ない」――。 

 

 6月11日、コメ卸大手・木徳神糧はホームページ上に「ステークホルダーの皆さまへ」と題したプレスリリースを掲載した。 

 

■流通を意図的に制限していない 

 

 鎌田慶彦社長名で発表されたリリースでは、コメの流通問題の背景には、記録的猛暑や豪⾬による収穫量の減少や、⽣産コストの上昇、インバウンドを含む消費の増加、需給のひっ迫感を受けた買い急ぎといった複数の要因があると指摘されている。 

 

 そして、木徳神糧としては、取引価格の不当な操作はしておらず、仕⼊・販売・在庫の実績は毎⽉農林⽔産省に報告していることから、「流通を意図的に制限するなどの不適切な対応は⼀切ない」と繰り返し強調されている。 

 

 木徳神糧が異例の声明を出した背景には、足元で過熱するコメ卸業者への批判がある。 

 

 6月5日に行われた、衆議院の農林水産委員会。小泉進次郎農水相は「コメの流通はブラックボックスだという指摘が多々寄せられている。とある卸の大手の営業利益は、なんと対前年比500%ぐらいだ」と指摘した。 

 

 こうした発言を受け、世間では卸業者に対して「カルテルをして価格をつり上げている」「中抜きして稼いでいる」「わざと在庫を調整しているのではないか」などの批判が広がる事態となった。 

 

 木徳神糧は、コメ卸業界に対する意見の中には事実と異なる⾒解や誤解に基づく指摘もあるとして、今回の声明発表へとつながったというわけだ。 

 

■好調な業績は“限定的な事象” 

 

 小泉農水相が木徳神糧を念頭にして発言をしたかは不明だが、実際に同社の業績は伸びている。 

 

 中核の米穀事業セグメントは、2024年12月期通期で売上高965億円(前期比5%増)、営業利益26億円(同10%増)と好調だった。直近の2025年12月期第1四半期(1〜3月期)に至っては、売上高311億円(前年同期比27%増)、営業利益19億円(同4.8倍)と大幅な増収増益で着地した。 

 

 ただし、木徳神糧はこれを限定的な事象と捉えている。コメの卸売事業はこれまで薄利多売のビジネスで、同社によれば「長年にわたる“コメ余り”の環境下で構造的な低収益体質だった」。そんな中、コメの供給不足が起きて市況が急変し、一時的に利益が急拡大したものと分析している。 

 

 コメが安価に手に入らない状況で、卸業者の業績が伸長しているとなれば、国民感情が刺激されるのは必然かもしれない。一方で、営利企業かつ上場企業でもある木徳神糧にとって、利益の確保は重要だ。卸業者としての役割を丁寧に説明し続けることで、ステークホルダーの理解を得ていく必要がある。 

 

本記事の詳報版は、東洋経済オンライン有料版記事「【異例の声明】コメ卸大手・木徳神糧「コメの市場価格をつり上げた事実は一切ない」、足元の業績は好調でも「限定的な事象」と主張する背景とは?」でご覧いただけます。 

 

田口 遥 :東洋経済 記者 

 

 

 
 

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