( 299901 )  2025/06/17 05:49:35  
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国民民主党が山尾志桜里元議員を参院選公認したが、翌日に公認取り消しを発表。

この混乱に、国民民主党が苦しんでいる様子がうかがえる。

一連の騒動を通じて、党の方針や玉木代表の姿勢が問われている。

国民民主党の支持率も大幅に下落し、玉木代表の戦略に疑問が生じている。

山尾氏の批判も強まっており、国民民主党の混乱が進む中、玉木代表に対する不信感が高まっている様子が伺える。

(要約)

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(c) Adobe Stock 

 

 波紋を呼んだ国民民主党による山尾志桜里・元衆議院議員の参議院選の公認。山尾氏本人から説明がないことに世間から批判を集めていたが、そんな中で開かれた山尾氏の出馬会見、多くの一般国民のみならず国民民主党支持者からも納得にいくようなものにはならなかった。そして会見の翌日、国民民主党は山尾氏の公認見送りを発表した。一体この茶番劇はなんだったのだろうか。ルポ作家の日野百草氏が取材したーー。 

 

「こちらから、えー、その能力を買ってお誘いしたにも関わらずですね、えー、公認に至らなかったことについては、あの、率直にお詫びを申し上げたい」 

 

 6月12日、国民民主党、玉木雄一郎代表は元・衆議院議員で元・同党広報局長の山尾志桜里氏を公認見送りとした。 

 

 国民民主党は山尾氏と共に5月14日、7月の参院選に向けて須藤元気氏、足立康史氏、薬師寺道代氏を追加公認としたが同日に平岩征樹衆院議員(国民・比例近畿)が偽名不倫騒動で離党、そのちぐはぐな「再出発」に多くが不安視した通りの結果となってしまった。 

 

 ところで「公認見送り」としているが筆者の手元にある国民民主党の号外(5月23日付)を読む限り、 

 

〈国民民主党は、第27回参議院議員選挙 

 

全国比例代表の候補予定者として 

 

国民民主党参議院比例区第9総支部長 

 

山尾しおりさんを 

 

公認決定しました〉 

 

とあるので「公認取り消し」ではないかと思うのだが、このあたりの言い回しからも同党がそうとうに苦心している様子がわかる。本稿ではこの「公認決定」に倣い「公認見送り」および「公認予定」という言葉は使わないこととする。 

 

 ちなみにこの号外には、 

 

〈結党メンバーの山尾しおりさん。 

 

どうしても必要な人材です。〉 

 

という言葉とともに玉木代表の笑顔が添えられているのだが、いまとなっては玉木代表そのものが透けて見えてしまう。 

 

 これまで本人が認め、謝罪を繰り返した元グラビアアイドルとの不倫にしろ「(備蓄米は)動物のエサ」発言にしろ、山尾氏と同様に公認取り消しとなった高橋茉莉氏(国民民主党、衆院東京15区補選候補予定者)の自死に関して「一般人の自殺をことさら報じる意義があるのか」とXでポストした言葉も含め、やはり玉木代表という存在が透けて見えてしまう。 

 

 玉木代表、たびたび一般ユーザーから「そういうとこだぞ」とセットでポストされるところを見るにつけ、まさに「そういうとこ」なのだと思う。 

 

 

 今回もそうだ。山尾氏、そもそも選んだのは玉木代表。それも多くの反対を押し切っての公認だった。 

 

そうして6月10日に臨んだ山尾氏の出馬会見、にもかかわらず翌日の公認取り消し。まさに「なにがしたかったのか」としか言いようのない醜態を晒している。 

 

 この山尾氏の会見に問題があることも、本人のこれまでの行動に現役議員(当時)としてどころか、人として問題があったことは当然だが、そんな問題のある人に出馬要請をしたのは玉木代表である。「代表の私にも責任がある」とご本人も認めるところの事実である。 

 

 仮に4月の段階の国民民主党なら山尾氏は比例代表(全国)で間違いなく当選しただろう。批判があっても国民民主党の比例代表名簿に載ってしまえば議員に戻れる、議員に戻せる、玉木代表と山尾氏の目論見が一致したからこその「強行公認」だったはずが、玉木代表は出馬会見までさせて、その翌日に山尾氏を切った。 

 

〈結果として公認に至りませんでした〉 

 

 6月12日のXの謝罪ポスト、これもなんだかなで「結果として」というのが言葉の選びようが本当に難しいのだが「そういうとこだぞ」としか言いようがない。結果としてもなにも、玉木代表がご自身でも書いている通り「私は当事者」だろうと。「ガバナンスコードの導入検討を指示」「大変反省」より前に「責任」はどう取るのかと。今回も「厳しく受け止めたい」と責任については語らずじまいだ。 

 

 この件に関して筆者の恩師、かつて地元の大物保守系議員を支えてきた80代の元大学教授がこう語ってくれた。 

 

「後ろから撃つ行為は一番やってはいけないことだ。日本人は一番嫌う。アメリカの軍隊には「後ろから撃たれる兵は二流」という言葉があるが、日本人からすれば味方なのに撃つ奴が悪い、だ。もっともだと思う。玉木代表は山尾さんを担ぎ出して後ろから撃ったも同然。晒し者にしてポイ、最悪だ」 

 

 彼は「後ろから撃つ」と例えた。かつての〈結党メンバー〉を公認として呼び戻し、出馬会見という前線に出して旗色悪しと見るや翌日に公認取り消し。SNSを中心にある多くの「なにがしたかったのか」は正直な感想だろう。 

 

「明智光秀、小早川秀秋、いくら学者や作家が再評価しようとしても日本の社会では『後ろから撃った卑怯者』という評価は変わらないし、理屈はどうあれ事実だ事実。何百年と『そういう人』の例に挙げられる」 

 

 

 だが石破茂首相もインタビューで「(石破は)後ろから撃つ人」と言われると語っている。確かに嫌われ者ともされるが、なんだかんだ内閣総理大臣に上り詰めた、この違いはなにか。 

 

「党内批判は構わない。ときに後ろから撃つものだし、それは健全な民主主義だ。会社だってそうだ。嫌われるかもしれないが会社のためになる批判だってあるし、そういう反骨者がいてこそ組織は活性化する。見てる人は見てる、そういうことだ」 

 

 確かに、石破さんの「後ろから撃つ」とされる言葉は批判であった。しかし今回は違う、数ヶ月も前から自分たちで選び、お願いし、出馬会見を開かせて翌日に切った。ではそれまでの数ヶ月はなんだったのかという話になる。 

 

「自分たちの責任で選んだ人に会見させて反応を見て即クビ切りでは、いくら山尾さんに問題があるにせよ、クビ切り側が快く思われるわけがない。だってそういう人なのに選んだのは玉木さんなんだから」 

 

 5月から6月にかけて、国民民主党の支持率は軒並み大幅な下落となっている。玉木代表は5月、山尾氏や須藤氏について「擁立の意義や理由をきちんと説明していくことが必要」と語っていたがいまとなっては、である。 

 

 それにしても、結局のところ無党派層の「風頼み」の国民民主党にとって一連の醜態は致命的ではないか、国民民主党を支持する60代の連合関係者に話を聞いた。 

 

「国民民主党を支持するのと玉木代表を支持するのとは違う。私は玉木代表では無理とずっと思っているが、党内は玉木代表の知名度にすがるしかないのが現状だ」 

 

 確かに国民民主党、玉木代表以外誰がいるのかと問われて議員の名前を挙げられる人は多くいまい。 

 

 実際、高齢者サークルから教え子たちまで聞いてみたが「玉木さん」以外の名前は無かった。次が山尾志桜里氏(13日の離党前のヒアリング)で、知名度を優先してきた玉木代表にすれば悪名も名とまでは言わないが「なんでもいいから有名な人」という集票にこだわるしかなかった事情もあるのか。知名度という点では須藤氏もこれにあたるだろう、須藤氏公認についても多くの批判が続いている。 

 

「SNSが大事なのはわかるが玉木代表はこだわり過ぎだ。風見鶏なのに変な我は通すし世間の空気が悪いとみると切り捨てる。そもそも〈私は当事者でもあります〉じゃなくて「私は当事者です」でしょうに。いつもこういう言葉で逃げ道を用意する、旧民主党時代から彼は変わってませんよ」 

 

 

 同じく党内からも「SNSに翻弄された結果」とされ、連合からも「SNSばかり見て」との批判が報じられている。国民の意見を聞くことは大切だが国民すべてがSNSにいるわけでも、ましてSNSで政治活動や政治的行動をしているわけでもない。 

 

 玉木代表は「現役世代」(とくにサラリーマンなどの被雇用者)をターゲットにした選挙戦略で人気を得たとされるが、その主題であった「手取りを増やす」の顛末は多くの知るところである。玉木代表の言う通り「負けた」果てに今回の騒動が続いている。発言もずさんなものばかりになった。支持、不支持を問わず残念に思う現役世代は多いだろう。 

 

 振り返れば玉木代表、震災やコロナ禍ですっかり忘れている人もいるだろうが最初の選挙は2005年の衆院選で民主党(岡田克也代表・当時)から出て落選している。2009年の選挙で引き続き民主党(鳩山由紀夫代表・当時)から出て初当選。「消えた年金」問題などによる自民党大敗と民主党政権樹立、崩壊。玉木代表はその後、維新の会と合流した民進党、そして希望の党(小池百合子代表・当時)と合流して共同代表から同党代表となった。 

 

 これに合流しなかった多くが立憲民主党になり、希望の党が発展的に国民民主党と名を変えていまに至るわけだが玉木代表、なかなかに苦労人であることは確かである。自民党を選べばその能力と人気(とくに地盤の香川2区では絶大)をもってすればここまでの艱難辛苦はあるまい、それを乗り越えての国民民主党ブーム、玉木人気だったはずが、これまた本人曰く「浮かれた」あげくの結果となった。 

 

 それにしても玉木代表と国民民主党はこれで離党した山尾氏と「手切れ」となったわけだが、山尾氏は「(国民民主党の)統治能力に深刻な疑問」「党の都合で排除されてしまう政党」と強い口調で批判している。 

 

 また山尾氏によれば、玉木代表と榛葉賀津也幹事長が会見同席の要請に対して「辞退会見であれば同席する」であったことも明かされた。まさに後ろから撃たれた形の山尾氏だが「国政に再挑戦」「その決意に揺らぎはありません」と政治的に死ぬつもりはないことを宣言している。 

 

 山尾氏、自身でも認めるほどにいろいろ問題のある御仁だが能力は玉木代表の〈どうしても必要〉という言葉通りに高い。東大法学部卒の元検察官で弁護士、国民民主党の憲法調査会長も務めた。 

 

  

 

 

 
 

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