( 299913 ) 2025/06/17 06:00:48 0 00 2025年6月13日、ステランティスのジョン・エルカン会長が、欧州市場に日本の軽自動車規格の導入を呼びかけました。すでに欧州ではマイクロEVの人気が高まりつつあり、日本の軽がグローバルで再評価される兆しです。日本独自のクルマ文化が世界に羽ばたく時が来たのか?その可能性を探ります。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部
「欧州にも日本の軽自動車のようなクルマが必要だ」。そんな衝撃的な提言をしたのは、ステランティスのジョン・エルカン会長。ステランティスは、フィアット、プジョー、シトロエン、オペルなど14ブランドを傘下に持つ欧州最大級の自動車グループです。
2025年6月13日、エルカン会長はロイター通信とのインタビューで、「欧州では安全基準や法規制が厳しすぎて、価格を抑えたエントリーモデルが作れない」と語り、「日本の軽自動車のような小型・低価格のモビリティを法的に認めるべきだ」と主張しました。
背景には、電動化による新車価格の高騰と、若者を中心とした"クルマ離れ"があります。彼は「クルマを持つ自由」をすべての人に届けたいとし、日本の軽規格がその一助になると訴えています。
実際、欧州ではすでに軽自動車に近いクラスのBEVが登場しています。
・シトロエン・アミ:全長2.41m、最高速45km/hで16歳から運転可能。都市型モビリティとして大人気 ・フィアット・トッポリーノ:アミの兄弟車で、愛らしいデザインが話題 ・オペル・ロックスe:アミをベースにしたドイツ向けモデル
これらはいずれもBEVで、価格は1万ユーロ(約170万円)前後とリーズナブル。日本の軽自動車と比べても遜色ないスペックです。たとえば、シトロエン・アミは全長2410×全幅1390×全高1520mmという超コンパクトサイズで、16歳からの運転も可能。さらに、兄弟車であるフィアット・トッポリーノは全長2530×全幅1400×全高1530mmと、若干大きくデザイン志向のモデルとなっています。
さらに、韓国のヒョンデ(HYUNDAI)は日本市場向けにインスターを導入し話題になりました。このインスターは韓国の軽自動車規格に準じたキャスパーの全長、全高、ホイールベースを延長したもので、全長3830×全幅1610×全高1615mm、ホイールベース2580mmと、インスターは厳密には日本の軽自動車規格ではない。
キャスパーは韓国の軽自動車規格の一般カテゴリーのクルマで、全長3.6m以下、幅1.6m以下、高さ2m以下、エンジンは1000cc(または80kW)未満まで搭載できます。キャスパーのスペックは全長3595×全幅1595×全高1575mm、排気量998ccとなっています。
インスターは42kWhと49kWhの容量を持つバッテリーが搭載され、一充電あたりの走行距離は、49kWhは370km(欧州のWLTP)。価格は284万9000〜357万5000円でCEV補助金は56万2000円となっています。いずれにしても日本の軽自動車サイズの輸入車が日本導入されたことは大きな脅威です。
ステランティス会長が呼びかけた「日本式軽自動車の欧州導入」には、多くの期待が集まる一方で、現実にはいくつかの越えるべきハードルが存在します。その最大の壁が「安全基準」です。
欧州では、前面・側面・後方衝突試験はもちろんのこと、歩行者保護性能や電子安全装備の義務化(自動ブレーキ、レーンキープ等)といった高度な条件が課されています。そのため、日本の軽自動車がそのまま欧州市場に投入されるのは現実的ではありません。
たとえば軽自動車は、全長3.4m/全幅1.48mという規格内に収める必要があるため、クラッシャブルゾーン(衝突時のエネルギー吸収エリア)が小さく、欧州基準の衝突安全性に対しては構造的な工夫が求められます。
また、2人乗りの欧州マイクロEVと違って、日本の軽は4人乗りを前提としており、キャビンの強度や乗員保護性能もさらなる強化が必要になるケースが多いのです。
さらに、2022年以降のEUでは、新車販売に対して先進運転支援システム(ADAS)の標準装備が義務化されており、自動ブレーキ(AEB)やレーンキーピングアシスト(LKA)、ドライバー異常検知といった装備の搭載が必須です。これは現在の軽でも上位グレードに装備されているケースがありますが、欧州仕様に合わせた制御調整や認証取得が必要となります。
それでも、軽自動車の小型・軽量・コストパフォーマンスの高さは、欧州の都市部におけるモビリティ課題(渋滞、駐車スペース、エネルギーコスト)と非常に相性が良く、適切な法規対応がなされれば十分に通用する可能性があると言えるでしょう。
事実、過去にはスズキ・アルト(欧州仕様)やダイハツ・クオーレといった"準軽サイズ"モデルが欧州でも一定の人気を博しました。ちなみに日本でもスマートが日本の軽自動車規格に合わせたスマートKを販売したことがあります。
今後、日産サクラや三菱eKクロスEVなど、最新の軽EVをベースに欧州向けモデルが再設計される動きが加速すれば、「日本発のコンパクトEV」が世界標準の一翼を担う日も遠くないかもしれません。
アメリカにおいて、日本の軽自動車を合法的に公道で走らせることができる州は存在しますが、その対応は州ごとに異なります。ここでは、2025年時点の情報に基づき、「合法な州」「制限のある州」を挙げていきましょう。
軽自動車が合法(または比較的寛容)な主な州は以下の通りです。これらの州では、25年ルールに基づいた右ハンドル軽自動車の登録・公道走行が比較的スムーズに行われています。
・フロリダ州:日本車の輸入車が盛んで軽トラックなどの登録例が多い ・レキサス州:農業・郊外地での活用が多く、軽自動車に寛容 ・カリフォルニア州:CARB規制が厳しいが25年超の車両ならクラシックカー扱いで登録可能 ・ワシントン州:自動車文化が成熟しているビートなどの登録例あり ・ネバダ州:登録が厳しくなく軽自動車ファンが多い ・アリゾナ州:乾燥地で車体が長持ちするため中古車市場も活発
条件付きまたは制限付きで合法な州では、軽自動車の登録は可能でも制限あり/厳格な書類審査などが設けられています。
・ミシガン州:使用地域が限定される場合がある(私有地・農地など) ・イリノイ州:一部地域でも右ハンドル車に対する保険条件が厳しい ・ノースカロライナ州:行動走行には詳細な認証書類が必要 ・モンタナ州:企業名義登録が多く、個人名義は審査がある
タバレス会長の発言は、日本の軽文化が"ガラパゴス"ではなく、"先進"であるということを改めて示したとも言えます。実際、軽自動車の技術は非常に高度です。衝突安全性、燃費、快適性など、日本のエンジニアリングの粋が詰まっており、それを低価格で実現している点は他国にはない価値です。
その一方で、日本における軽自動車優遇税制はなくしてほしくはありません。特に地方では大事な庶民のアシとなっているからです。例えば自動車税は年間1万800円に対し、1Lのコンパクトカーは年間2万5000円。自動車重量税も軽自動車の6600円に対し、1万6400円とかなり違います。
もし、スズキやダイハツが欧州に進出。もしくはステランティスが日本メーカーと連携し、"欧州版軽"を生み出すことができれば、それは単なる低価格車ではなく、生活の質を高める新たなモビリティとして評価されるはずです。軽自動車が世界基準になる日は、もうそこまで来ているのかもしれません。
ぜひ日本でも、スバル360やマツダR360クーペをBEVとして現代に復活させてはいかがでしょうか?
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