( 299946 )  2025/06/17 06:36:46  
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石破首相が夏の参院選で公約として表明した2兆3,248.6億円の給付金について、エコノミストの木内登英氏は、経済効果は限定的であり低所得者支援の観点からも問題があると指摘している。

住民税非課税世帯や子どもに加算されることで、GDPへの影響は薄く、政策の効率性に疑問があると述べている。

(要約)

( 299948 )  2025/06/17 06:36:46  
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NRI研究員の時事解説 

 

石破首相は13日に、夏の参院選で自民党が掲げる公約に、国民一律2万円の給付金と子ども・住民税非課税世帯へは2万円の加算を盛り込む考えを表明した。 

 

総務省の人口統計によると、5月時点の人口総数は1億2,334万人である。全国民に一律2万円が給付される場合、その総額は2兆4,668.0億円と計算できる。 

 

他方、国民生活基礎調査(令和3年国民生活基礎調査)によると、2021年の全世帯数に占める住民税非課税世帯の割合は23.7%だった。さらに2023年の全世帯数は5,445.2万であったことから、住民税非課税世帯数は1,290.5万と推定される。また、同調査によると、世帯の平均構成人数は2.23人である。それに基づくと、住民税非課税世帯の総人口は2,877.8万人となる。これらの人に2万円が給付されると、その合計は5,755.6億円となる。 

 

図表 一律2万円と子ども・住民税非課税世帯の大人2万円上乗せ給付の経済効果 

 

総務省統計局『人口推計』によると、2023年の0歳から18歳までの子どもの数は1,851.3万人となる。ここから、住民税非課税世帯の子どもの数(全世帯数に占める住民税非課税世帯の割合は23.7%から算出)の推計値438.8万人を引くと1,412.5万人となる。彼らが一人当たり2万円の給付を受けるとすれば、その総額は2,825.0億円となる。 

 

この3つを合計すると、3兆3,248.6億円となる。石破首相は、給付金の総額は3兆円台半ばになると説明している。 

 

この給付金が実質および名目GDPを押し上げる効果は1年間で+0.14%、名目GDPの押し上げ額は8,594億円と試算される。3兆3,248.6億円の予算を投入してもGDPの押し上げ効果はその4分の1程度であり、経済効率の悪い政策のように見える。 

 

しかし、現在必要な政策は、景気浮揚効果を発揮する経済対策ではなく、物価高によって生活が圧迫されている低所得層を支援する物価高対策だ。この点から、景気浮揚効果は大きくないことが、自民党が公約とするこの給付金制度の問題なのではなく、住民税非課税世帯など低所得層に絞った給付となっておらず、物価高のもとでも生活に余裕のある人にも給付金を渡す点が問題なのだ。その結果、この政策はバラマキ色が強い政策となってしまっている。 

 

 

木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) 

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この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi)に掲載されたものです。 

 

木内 登英 

 

 

 
 

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