( 300481 )  2025/06/19 06:02:02  
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首都圏内の人気ラーメンチェーン「天下一品」が大量閉店することがSNSで話題になり、愛好者たちはショックを受けた。

1971年創業で全国に209店舗展開しているが、首都圏では34店舗から10店舗が閉店する。

閉店理由は企業側からの情報がなく、ファンらは困惑している。

天下一品は鶏がらベースのこってりスープが特徴で、閉店する店舗には多くのファンが集まっている。

あるラーメン評論家によると、同じフランチャイズが運営する店舗が閉店傾向にあり、業態や戦略の変更によって再び展開する可能性もあるという。

大量閉店はあるものの、都内にはまだ16店舗が残り、新規出店も予定されている。

ファンは今一度、天下一品のありがたさを感じるべきだと述べられている。

(要約)

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あっさり、屋台の味、それに塩ラーメンと味噌ラーメンもあるが、結局こってりを頼んでしまう。(撮影・古寺雄大、以下同じ) 

 

首都圏内の天下一品が大量閉店する――。5月、SNSで衝撃的な情報が拡散された。その後、実際に店舗に貼られた閉店告知のポスターを投稿する人も現れ、愛好家たちはショックに打ちひしがれた。 

 

* * * 

 

 天下一品とは、鶏がらベースのドロドロとしたこってりスープで人気のラーメンチェーン。1971年に京都で創業し、2025年6月16日時点で全国に209店舗を展開している。そのうち東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏では34店舗が営業する。 

 

 しかし、6月30日には渋谷店、新宿西口店、池袋西口店、田町店、目黒店、吉祥寺店、蒲田店、川崎店、大船店、大宮東口店の10店舗が閉店する。首都圏に展開する店舗の3割近くが閉店するということだ。 

 

■そこも閉店するんですよね? 

 

 ラーメン評論家の山本剛志さんはこう語る。 

 

「東京を含め、川崎や大宮といった人が多く集まる街の好立地の店舗が中心であることから、注目を集めています。その一方で、実は昨年6月30日にも6店舗が閉店しています。当時は歌舞伎町店や池袋東口店といった店舗が対象でした。ただ、新宿西口店や池袋西口店など、同じエリアに別の店舗が残っていたため、比較的大きな話題にはならなかった印象です。ところが今回、残っていた新宿西口店なども閉店対象に含まれていることから、大きな話題を呼んだのです」 

 

 15年来の天下一品ファンの東京都在住の30代男性は、肩を落としながらこう話す。 

 

「私はラーメンよりもうどん・そば派なのですが、天下一品だけは別格です。『アメトーーク』(テレビ朝日系)の『天下一品芸人』を見たのをきっかけに、たまらず通うようになりました。あの唯一無二の、どろりとした濃厚なスープがしっかり麺に絡むので、ほかの麺類のようにすすって食べることはできません。だから、麺をハムハムと歯で噛み切りながら食べるのですが、ポタージュのようなスープと、それに合う麺の組み合わせは本当に最高です。これまでは歌舞伎町店に通っていたのですが、昨年急に閉店してしまい、その後は新宿西口店に通っていました。でも、そこも閉店するんですよね? これから一体どこで天下一品を食べればいいのか、本当に困っています」 

 

 

 この突然の大量閉店の理由を聞くため、天一食品商事(滋賀県)に問い合わせたものの、同社の広報担当者は「この件に関する取材はすべてお断りしています」と回答を差し控えた。 

 

 筆者の最寄り店舗である吉祥寺店も、今回の閉店対象に含まれていた。普段は10月1日の「天一の日」(翌日以降使える1杯無料券がもらえる)にしか訪れない……というより、頻繁に食べられる胃ではなくなっているのだが、「あと1カ月で閉店」と聞き、慌てて足を運んだ。 

 

 平日の夕方にもかかわらず店内は盛況。コの字形のカウンターには、サラリーマン、高校生、カップルなど。10代の頃は「2杯はいける」と思っていたが、30歳を過ぎた今ではすっかり胃もたれを気にするようになった。この日はラーメンとチャーハンの「チャーハン定食」を注文。スープをすべて飲み干すには、米の力が必要なのだ。さらに味変用にキムチを単品で追加。吉祥寺店には唐揚げと餃子がないため、肉感を求めて豚キムチも注文した。 

 

 「こってりか、あっさりか?」は天下一品の定番の問い。筆者も以前、2日連続で来店した際に初めて「あっさり」を頼んだことがあるが、やはり「男はこってり一択」。この日も迷わず「こってり」を選んだ。 

 

■「塩ラーメン」や「味噌ラーメン」も 

 

 いざ、ラーメンが到着。レンゲでスープをすくえば、ドロドロと濃厚そのもの。麺に集中するのもいいが、筆者の楽しみ方は、レンゲでチャーハンをすくい、スープにひと浸しして食べるスタイル。味変のキムチとの相性も抜群で、あっという間に完食。気づけば、どんぶりに「明日もお待ちしてます。」の文字が現れていた。 

 

 ふと周囲の注文に耳を傾けてみると、女子高生が「塩ラーメン」を注文していた。なんだそれは……? 実は天下一品のメニューには「こってり」「あっさり」「屋台の味」のほか、「塩ラーメン」や「味噌ラーメン」も存在するのだ。 

 

 メニューの豊富さもあり、店は賑わっている。それだけに「なぜ閉店してしまうのか?」という疑問は、ますます深まるばかりだ。前出の山本さんが言う。 

 

「昨年閉店した6店舗は、確認できる範囲ではすべて同一のフランチャイジーが運営していました。今回の10店舗も、つけ麺専門店を直営する、同じ企業が運営しているとみられます」 

 

 その企業に取材を申し込んだが、広報担当者は「本件のメディアの取材は全てお断りしています」と回答を差し控えた。 

 

■「もうこれで終わりだ!」 

 

 SNSでは天下一品の大量閉店の理由として、「値段が高くなった」「味が落ちた」「キャッシュレスに対応していない店が多い」といった意見も出ている。しかし、「チェーン店」という枠組みで見ると、一気に閉店するケースはそこまで珍しくないと山本さんは言う。 

 

「これまでもチェーン店が大量閉店するたびに、『もうこれで終わりだ!』などと言われがちですが、実際にはそうでもありません。例えば、ラーメンチェーンの『幸楽苑』や、長崎ちゃんぽんの『リンガーハット』も、一時期に急激な店舗縮小を行っています。リンガーハットは、特にコロナ禍の影響でフードコートなどから一部撤退しましたが、その後はドライブスルーを併設した“ピックアップ店”を拡大する戦略に転じました。また、幸楽苑は2019年に台風19号によって工場が被災してしまいました。豪雨による被災をきっかけに、西日本からの撤退を発表。そこからは東日本に特化した展開にシフトしています。このように、業態や戦略を変えながら今も、営業しています」 

 

 そもそも、大量閉店とはいうが、都内に16店舗も残るというのは、決して少ない数字ではない。それに、昨年12月には神田店がオープンしており、今月下旬には五反田店のオープンも予定されている。のべつまくなしに、大量閉店しているわけではない。ラーメン店のフランチャイズ経営が一区切りつき始めたという見方もできる。 

 

「それだけではなく、池袋西口店がなくなっても江古田店はあり、新宿西口店がなくなっても、中央線の快速に乗れば中野店があり、渋谷店がなくなっても、五反田店、駒沢店、池尻店があります。特に江古田店と池尻店は30年以上の歴史を重ねています。今回の大量閉店で立地の良い店舗が閉店することになりましたが、錦糸町店や水道橋店など、既存の店舗に足を延ばすのもいいかもしれません」 

 

 「いつまでもあると思うな、親と天下一品」ではないが、我々は今一度、最寄りに天下一品があるありがたみを噛み締めないといけない。 

 

(AERA編集部・古寺雄大) 

 

古寺雄大 

 

 

 
 

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