( 301043 )  2025/06/21 06:02:04  
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厚生労働省の統計によると、2024年に生まれた子供の数は前年比5.7%減少し、合計特殊出生率も1.15と過去最低になった。

政府の予測より15年早く出生数が減少した影響で、2039年には68万人台になるはずがすでに68万人を下回ってしまった。

将来推計では、2060年には日本の人口が8600万人を下回るとされており、日本だけでなく中国や韓国も人口減少に直面している。

人口減少は社会インフラの崩壊や深刻な人手不足、財政悪化など様々な問題を引き起こす可能性があり、将来の社会保障制度や経済にも大きな影響を与えると懸念されている。

(要約)

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(写真:Ryuji/PIXTA) 

 

 日本の少子化に歯止めがかからない。最近発表された厚生労働省の人口動態統計によると、2024年に生まれた子供の数は68万6061人、前年に比べて5.7%減少した。1人の女性が生涯に産む子供の数である合計特殊出生率も1.15となり、過去最低となった。 

 

 こうした少子化=人口減少の傾向は、2023年に政府が出した推計値によると、年間の出生数が68万人台になるのは2039年のはずだった。15年も早く68万人台になってしまった。いかに、政府の予想が当てにならないものだったかがわかるはずだ。一刻も早い、実情に沿った統計予想づくりの体制を構築すべきだろう。 

 

■2060年には8600万人を割り込む推計 

 

 少子化が問題なのは、国家の存続さえも危うくする人口減少が止まらなくなってしまうことだ。果たしてこの数字も信頼できるのかどうか疑問だが、内閣府がまとめた将来推計人口によると、2048年には1億人を割り込み、2060年には8700万人を割り込むとされている(国立社会保障・人工問題研究所「日本の将来推計人口」2012年1月)。( )内は65歳以上の高齢化率。 

 

● 2030年…… 1億1661万人(31.6%) 

 

● 2040年…… 1億727万人(36.1%) 

● 2050年…… 9707万人(38.8%) 

● 2060年…… 8673万人(39.9%) 

 高齢化率が、人口8000万人を割り込むような減少が進んでも4割に満たないのはちょっと不自然な気もするが、いずれにしても日本の厚生労働省が発表する人口統計として使うデータは、楽観視しすぎる傾向があるのは間違いないだろう。実際に、詳細は後述するが海外の調査機関からは、2100年までに日本の人口は5000万人を切るという予測も出ている。 

 

 ところで、周知のように人口減少は日本だけの問題ではない。韓国や中国、台湾では、日本以上に深刻な人口減少が起きている。フランスやフィンランドなど、一部の欧州諸国では、人口減少を食い止めつつある国もあるが、おおむね深刻な少子化=人口減少に悩まされているのが現実だ。 

 

 たとえば、中国は2024年の結婚届け出件数が610万組となり、対前年比で2割も急減。2025年の出生数も前年比で2割前後の大幅マイナスになるのではないかと報道されている。もっとも、その後出た2024年の出生数の統計では954万人となり、8年ぶりに増加したと報道されている。 

 

 

 一方、これまで移民によって人口減少を食い止め、世界屈指の経済成長を達成してきたアメリカでさえも、移民政策を拒否するトランプ政権の誕生によって、今後は大きく人口が減少するのではないかと予測されている。 

 

 2024年の人口は前年に比べて330万人増加して、20年ぶりの上昇率を回復。その背景には、移民容認派の民主党政権下での移民人口増加があり、フロリダやテキサス、カリフォルニア州で伸びた。ただ、移民を除いた自然増では150万人を記録した2007年以降減少傾向にある。アメリカもまた、人口増加という恩恵を受けられなくなる可能性が高い。 

 

■合計特殊出生率が1.0を下回っている国は?  

 

 一方、人口急増が今も続いているアフリカ諸国なども存在する。合計特殊出生率でみると、ソマリアの6.13、チャドの6.12などいずれも6.0台の出生率がいまも続いている。21世紀のいま、なぜ先進国は人口減少に悩み、発展途上国は過度な人口増加に怯えるのか……。人間の価値観などによって、人口は大きく変化していくものだが、現在の世界の少子化を見てみると、合計特殊出生率が1.0以下となっている国は次のようになる(世界銀行、グローバルノート、2023年)。 

 

●マカオ…… 0.59 

●韓国…… 0.72 

●香港…… 0.75 

●台湾…… 0.87 

●プエルトリコ…… 0.92 

●シンガポール…… 0.97 

●ウクライナ…… 0.98 

●中国…… 1.0 

 ウクライナのように、ロシアの侵攻と戦っている国よりも下回っている国が多い。世界の平均値が「2.20」であることを考えると、これらの国がいかに出生率が低いかわかるはずだ。 

 

 出生数が、東アジアを中心に大きく減少している状態は、「超少子化」と呼ばれて注目されているが、確かに比較的少子化が進んでいたと言われていた欧州と比較すると、近年際立って出生数が急減していることがわかる。韓国の0.75(2024年)は前年に比べてわずかに上昇したものの、「OECD(経済協力開発機構)」の加盟国では、唯一1.0を下回る超少子化の状態が続いている。 

 

 

 韓国や中国では、将来的な政治体制への不安もあるものの、むしろ教育費の高騰がその背景にあると報道されている。韓国の新しい大統領に就任した李在明(イ・ジェミョン)政権でも、重大公約のひとつとして、児童手当の対象年齢の段階的な引き上げを盛り込んでいる。中国も、1980年前後から続けた一人っ子政策の影響で、出産適齢期の女性が大きく減少。全人代で、育児手当支給や幼稚園等の費用を段階的に無償にする政策を打ち出している(日本経済新聞、2025年6月11日朝刊「日中韓、子育て不安、大きく」)。 

 

 もともと日中韓は、父親の権威がいまだに強い国として知られており、世界経済フォーラムが公表している「ジェンダーギャップ指数」は、3国ともに100位以下を低迷するなど、男女格差の色彩が強く残っている地域と言っていい。日本も、いまだに選択的夫婦別姓を決められない自民党が政権を維持している。 

 

■少子化は社会に何をもたらすのか?  

 

 日本でも少子化対策として様々な政策が実施されようとしているが、その道は長く険しいようだ。高校無償化や婚姻数増加のために、政府や地方自治体も真剣に取り組んではいるが、日本は単なる少子化だけではなく高齢化が急速に進み、将来の社会保障制度や地域の社会機能の維持さえも崩壊してしまうような状況と言っていい。 

 

 そこで考えたいのが、このまま少子化や人口減少が進んでいった場合に、一体何が起こるのか。どんな分野に影響があるのか。実際にその範囲は非常に大きいと考えていい。たとえば、「ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)」の未来予測によると、2060年までに世界全体で考えたときに、人口が増減しない均衡した状態になると予想。合計特殊出生率の水準が人口増加を意味する2.1を超えられない状態になると推計している。 

 

 その結果、日本の人口は2100年までに5300万人となり、イタリアは6100万人から2800万人に減少すると予想。日本の出生数も近年急激な減少を見せており、出生数が86万人にまで減少し、「86万ショック」と言われた2019年から、わずか4年で70万人を割り込むレベルに出生数が減少。いまや毎年100万人に届く人口が減少する「静かなる有事」に直面しているのが現実だ。 

 

■急激な人口減少によって何が起こるのか 

 

 

 では、実際に急激な人口減少によって何が起こるのだろうか。すでにその兆候はいくつか現れていて、最近報道されている人口減少の影響をまとめると、次のような事態が起こると考えていい。 

 

 ①社会インフラの崩壊 

人口減少はすでに地方都市では深刻になっており、上下水道や公共施設、橋、道路、学校といった社会インフラへの影響は大きい。地方都市は人口減少によって税収が減り、加えて水道料金などの徴収減が重なり、老朽化や大災害などに対応できない事態となっている。加えて、温暖化等の影響で、様々な事態が想定されているものの、その準備ができそうもない。 

 

 ②深刻な人手不足による景気後退 

人口の急激な減少がもたらす影響で、最も深刻なのが人手不足だ。現在注目されているコメの価格高騰もやがてくるコメ農家の担い手不足が深刻化することを示唆している。いまや、日本は至るところで人手不足に悩まされており、それに加えて法改正などによって、遠距離輸送の運転手不足が深刻化したり、医療現場や介護施設の人員が不足したり、行政が足を引っ張るケースも目立つ。 

 

 今後、急速に進化するAI(人工知能)やロボットなどの普及によって、ある程度の人手不足を解消できるかもしれないが、どうしてもタイムラグが生じる。人手不足が先に起こるか、それともAIやロボットによる進化が先になるのか……。深刻な人手不足は景気後退に直面する。さらに、経済成長に必要な労働力不足が深刻になれば、高齢者比率が高まって国全体としての「貯蓄率低下」、そして経済成長に必要不可欠な「資本投下不足」も懸念される。 

 

 ③財政悪化、社会保障制度の崩壊?  

2018年5月現在の数字だが、「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(社会保障給付費)」によると、年金や医療、介護、子供・子育てなど「社会保障給付費」をトータルすると、2040年には「190兆円」に達するとシミュレーションされている(括弧内は2025年度、ベースラインケース、資料:内閣府、厚生労働省、財務省)。 

 

●年金…… 73.2兆円(59.9兆円) 

●医療…… 68.5兆円、(47.4兆円) 

 

 

 
 

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