( 301358 )  2025/06/22 06:05:37  
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2025年10月以降、政府は生活保護の生活扶助に500円の上乗せ支給を決定。

これにより、特例加算1000円に加えて合計1500円が支給されることとなる。

これは物価上昇と消費支出増加を考慮した措置で、2年間の時限措置となり、基準額が減額する場合は据え置かれる。

生活保護受給世帯の約58%が加算の影響を受ける見込み。

文中の統計によると、生活保護申請件数の増加傾向が続いており、受給世帯の約55%は高齢者世帯である。

対象となる要件や受給条件なども説明されている。

(要約)

( 301360 )  2025/06/22 06:05:37  
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tkyszk/shutterstock.com 

 

2024年12月25日、政府は2025年度以降の生活保護のうち「生活扶助」について、500円の加算を行うことを決定しました。 

 

2023年度と2024年度の2年間、すでに生活扶助には特別加算として1000円が支給されていますが、2025年10月以降2年間、さらに500円が加算され1500円の支給となります。 

 

この記事では、今回、生活扶助の加算が決定した背景や給付の詳細について確認していきます。 

 

※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。 

 

2024年12月25日、政府は2025年10月以降の生活保護の「生活扶助(※)」について、すでに支給されている特例加算1000円に追加して、一律500円の上乗せ支給をすることを決定しました。 

 

物価上昇と消費支出の増加という現状を踏まえての措置とされ、2年間の時限措置となります。 

 

また、1500円をプラスしても基準額が昨年度の見直し前の水準を下回る場合は、見直し前の水準のまま据え置くことになります。 

 

なお、厚生労働省によると、1500円の加算により基準額が引き上げられるのは、生活保護受給世帯の約58%(94万世帯)とのことです。 

 

※生活扶助:食費や光熱水費、被服費など、日常生活を営むうえで必要なものに対する扶助のこと 

 

●生活保護費は5年に1度見直しが行われている 

生活保護のうち生活扶助の金額は、生活保護を受給していない所得が低い世帯とのバランスをとるために、総務省が公表する「全国家計構造調査」をもとに5年に1度見直しが行われています。 

 

前回見直しが行われたのは2023年10月から支給されている分で、2022年の全国家計構造調査の結果に基づいて計算されています。 

 

前回の見直しでは、新型コロナウイルスの感染拡大や、食料品や日用品などの物価高騰の影響などを考慮し、2023〜2024年度の2年間は引き下げを行わないとする臨時措置が取られました。 

 

その際に、特例加算1000円のプラス支給が決まり、1000円を加算しても基準額が減額する場合は、それまでの基準額が据え置かれることになりました。 

 

なお、次回の生活扶助の見直しは、2027年度に前倒しで行われることが予定されており、最新の調査結果や社会情勢を適切に反映させたものにするとされています。 

 

 

厚生労働省の「被保険者調査」 によると、生活保護の申請件数は年々上昇傾向にあります。 

 

過去5年間の生活保護申請件数の推移は、以下のとおりです。 

 

2019年度の申請件数は22万3000件ほどだったものが、2020年度・2021年度には23万件弱に増加しており、さらに2022年度には24万5000件ほどに、2023年度には約25万件にまで増加しています。 

 

2020年度以降の新型コロナウイルスの感染拡大による収入の減少や、近年の物価上昇の影響などもあり、生活保護を申請する世帯が増えていると考えられます。 

 

●生活保護受給世帯の54.8%は高齢者世帯 

厚生労働省の公表した「生活保護の被保護者調査(令和7年2月分概数)」によると、生活保護を受給している全世帯のうち、54.8%を高齢者世帯が占めています。詳しい世帯ごとの割合は以下のとおりです。 

 

 ・高齢者世帯:54.8% 

 ・障害者・傷病者世帯:25.4% 

 ・母子世帯:3.8% 

 ・その他世帯:16.0% 

2番目に多いのが障害者・傷病者世帯で25.4%、次いで母子世帯が3.8%、その他世帯が16.0%という結果です。 

 

なお、高齢者世帯をさらに細かく見ると、単身世帯が51.1%、二人以上世帯が3.8%となっており、単身世帯が大部分を占めていることがわかります。 

 

では、生活保護を受けられるのはどのような人なのか、対象となるための要件を次章で確認していきましょう。 

 

生活保護を受けるには、まず保有している資産を生活費に充てること、働く能力があれば働いて収入を得ることなどが前提となっており、それでも世帯収入が最低生活費に満たない場合に、保護の対象になります。 

 

なお、生活保護が受給できるかどうかは世帯単位で判断されます。 

 

●【資産の活用】 

活用できる資産がある場合は、売却や解約などをして生活費に充てなければなりません。 

 

資産とは、預貯金や土地・家屋のほか、生命保険、有価証券、自動車、貴金属といった換金可能なものが該当します。 

 

ただし、最低限の生活を維持するためや、自立助長に役立つ場合などは、保有が認められることもあります。 

 

●【能力の活用】 

働ける状態にある場合は、能力に応じて働いて収入を得ることが求められます。 

 

働く能力があり、仕事もあるにもかかわらず働かない場合は、生活保護を受けられません。 

 

●【扶養義務者】 

父母や子ども、兄弟などの扶養義務者から援助を受けられる場合は、援助が優先されます。 

 

ただし、扶養義務者からは、可能な範囲で援助を受けるというものであり、扶養義務者がいることが理由で、生活保護が受給されないということではありません 。 

 

●【他の制度の活用】 

年金や手当など他の社会保障制度で受けられるものがある場合は、それらが優先的に活用されます。 

 

 

政府は、2025年10月以降の生活保護における生活扶助について、500円の増額を行うことを決定しました。 

 

現在すでに特別加算として1000円が支給されており、あわせて1500円が加算されることになります。 

 

生活保護世帯への追加給付については、それぞれの立場からさまざまな意見が出ています。 

 

本当に経済的に困っている世帯への給付が適正に行われるように、現状についての調査を綿密に行い、公平な給付が行われるよう期待したいものです。 

 

 ・厚生労働省「福岡大臣会見概要(財務大臣折衝後)」 

 ・厚生労働省「被保険者調査」 

 ・厚生労働省「生活保護の被保護者調査(令和7年2月分概数)の結果を公表します」 

 ・厚生労働省「社会・援護局関係主管課長会議資料 令和7年3月」 

 

木内 菜穂子 

 

 

 
 

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