( 302350 ) 2025/06/26 04:05:45 0 00 傷みが目立つ那珂川町馬頭広重美術館(6日、栃木県那珂川町馬頭で)
美術館は建築家の注目を集め、海外からの見学者も多く訪れた(2008年撮影)
国立競技場を設計した建築家・隈研吾氏が手掛けた那珂川町馬頭広重美術館(栃木県那珂川町)のデザインを象徴する木製屋根に劣化が見つかり、アルミ製に改修するため今月、休館に入った。木材をふんだんに利用した隈氏の建築物で、木をアルミに切り替えるのは異例。町は風合いを損なわないよう木目調に加工する予定だが、ファンからは「雰囲気が変わるのではないか」と心配する声も出ている。(石塚格)
江戸時代の浮世絵師・歌川広重の肉筆画を収蔵する同館は2000年に開館した。鉄筋コンクリート一部鉄骨造りの平屋(延べ床面積約2000平方メートル)で、建物全体を不燃処理した地元の杉を使ったルーバー(羽板)で覆っている。自然豊かな周囲の景観に溶け込む落ち着いた姿から、隈氏の代表作の一つに数えられている。
ところが近年、風雨にさらされる屋根を中心にルーバーの腐食が進み、一部が崩れるなどした。町は24年2月、改修を決めたが、高額の費用がかかることが報じられると、町には批判の声が多く寄せられた。
改修計画を隈氏側と協議したところ、当初は木製のものに付け替える案が浮上した。しかし、工事費は2億円超と見込まれた。防腐用塗料の塗り直しがおおよそ10年おきに必要で、その費用に1億円近くかかることも判明した。
町は最終的に、工事費は2000万円ほど割高だが、耐久性に優れたアルミの建材で代用することを決めた。建物の風合いが損なわれないように木目調の特殊な加工を施す。外壁には引き続き杉のルーバーを使用する。工事は7月に始まり、来年2月までに完了する予定だ。
今回の改修について同町の福島泰夫町長は「老朽化による安全性の確保ということで改修を決めた。(隈氏の事務所から)アルミを使う方法もあると提案を受け、将来的なコストと(腐らないという)安全性から工費は少し高くなるが採用することにした。外観は限りなく木に近づけると聞いている」と説明する。
だが、長年のファンは困惑を隠しきれない。ボランティアで運営に関わってきた同美術館友の会の藤田真一会長(71)は「外観が全部木というのが特徴の美術館。結果を見ないと何とも言えないが、年月を経て木とアルミの部分に差が出てこないか心配している」と話した。
隈氏は読売新聞の取材に「(ルーバーの)定期的な取り換えが必要ということは最初に伝え、(建設当時の)町長も了解していた」とし、「屋根はアルミだが壁は地元産材を使う。(一見してもわからないようにする)技術も進歩している。雰囲気を壊さないことが大切だ」と話す。
木材を生かした隈氏の建築物を巡っては、観光スポットにもなっていた高知県梼原町の「雲の上のホテル」(1994年開業)が老朽化による建て替えのため取り壊された。群馬県富岡市の市庁舎(2018年完成)でも外装の木材に劣化が見つかり修繕している。
|
![]() |