( 302606 ) 2025/06/27 03:38:26 0 00 生活保護費引き下げを巡る訴訟の原告で、手押し車を押して歩く小寺アイ子さん=17日、大阪市
生活保護費の減額を巡る訴訟で、最高裁は27日、判決を言い渡す。「人とのつながりを失うなど『健康で文化的な最低限度の生活』はできていない」。同大阪訴訟の原告団共同代表、小寺(こてら)アイ子さん(80)=大阪市旭区=は訴える。
歌が好きで平成12年、カラオケ喫茶店を開店。常連客にも恵まれ、24年には初孫も生まれて充実した生活を送っていた。
しかし25年、国指定難病の「自己免疫性肝炎」になり、薬の副作用で股関節が壊死(えし)。歩くことが難しくなった。店を続けることはできず、借金もあったことから自己破産し、同年12月に生活保護の利用を始めた。
それからは、店の常連客だった知人らとのつながりや、4人の孫が生きがいに。1日100円を貯金することで孫へのプレゼント代に充てていたが、受給している生活保護費が減らされ、少しずつままならなくなった。
心配した周囲は食事代などを出してくれたが、申し訳なさが募り、次第に距離を置くようになった。香典を捻出できず、葬儀に参列できないこともあった。「すごくお世話になった人ばかりなのに恩を返せなかったことがつらい」と振り返る。
孫に本をねだられても買ってあげられず、「ばぁば、お金ないの?」と聞かれ、胸が締め付けられた。お年玉を渡すことも、クリスマスケーキを買ってあげることもできない。入学祝いも渡せていない。「おばあちゃんとして、してやりたい」。孫を思う気持ちはあっても、足は遠のくばかりだ。
現在は月に約8万円の年金に生活保護費を加えた約11万円で生活する。ただ、保護費減額だけでなく、昨今の物価高も加わった「二重苦」が生活を襲う。
薬の副作用で糖尿病になる恐れもあるが、健康に配慮した食事はかなわない。作り置きをして食費の節約を図るほか、4個で約130円の豆腐1個で夕飯を済ませることもある。
大阪地裁では減額処分を取り消す判断が出たが、大阪高裁では逆転敗訴。悲しみで涙がこぼれた。「最高裁に私たちの苦境を理解してほしい。次は喜びの涙を流したい」と訴えが届くことを望んでいる。(宮野佳幸)
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