( 302794 )  2025/06/27 07:12:06  
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6月は初夏で心地よい風が吹く季節。

多くの人がボーナスを受け取り、家計や資産を見直す時期でもあります。

特にシニア世代では年金だけでは足りない支出や不安もあり、貯蓄の重要性が高まっています。

60歳代二人以上世帯の貯蓄状況を解説し、「貯蓄3000万円」を持つ世帯は全体の20%で、貯蓄ゼロの世帯も20.5%あります。

老後の費用を見据え、計画的な貯蓄や資産運用が重要です。

 

 

貯蓄だけで3000万円もつくるのはハードルが高く、投資を考えることも重要です。

例えば、安全性を重視した場合、65歳までに3000万円貯めるには毎月12万円以上貯蓄が必要です。

また、年金と貯蓄だけで老後を賄うか、あるいは働き続けることも必要とされています。

 

 

老後にかかる費用を見ると、介護も考慮する必要があります。

厚生年金の最新情報によると、年金額には個人の働き方や納付状況によって差があります。

年金の引上げ率が物価上昇率を下回る状況もあり、これからの暮らし方を考える上でのポイントとなります。

(要約)

( 302796 )  2025/06/27 07:12:06  
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lielos_photograph/shutterstock.com 

 

初夏の風が心地よく感じられる6月。ボーナスの時期を迎え、家計や資産について改めて見直す方も多いのではないでしょうか。 

 

特にシニア世代にとっては、年金だけでは不足する支出や、医療・介護など万が一の備えへの不安も重なり、貯蓄の重要性が高まっています。 

 

とはいえ、「他の人はどれくらい貯蓄しているのか」「平均はどのくらいなのか」というのは気になるところでしょう。本記事では、60歳代・二人以上世帯で「貯蓄3000万円」を保有している世帯の割合や、年金額の実態を解説していきます。 

 

※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。 

 

一般的に、老齢年金は65歳から受け取りが始まります。厚生労働省が公表した「令和5年度厚生年金・国民年金事業の概況」によると、65歳以降の年金額は、国民年金が月に5万円台、厚生年金が14万円台となっています。 

 

もちろん、老後の暮らしを考えるうえでは、年金だけでなく貯蓄がどれだけあるかも大切なポイントです。 

 

では、実際に二人以上の世帯ではどのくらいの貯蓄があるのでしょうか。次の章で、詳しく見ていきましょう。 

 

J-FREC 金融経済教育推進機構が公表する「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」より、60歳代・二人以上世帯の貯蓄(金融資産を保有していない世帯を含む)を確認します。 

 

※貯蓄額には、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。 

 

60歳代の貯蓄額を見てみると、平均は2033万円で中央値は650万円となっています。  

 

貯蓄が3000万円以上ある世帯は全体の20.0%と、5世帯に1世帯の割合でした。 

 

一方で、貯蓄ゼロ(金融資産を保有していない)という世帯も20.5%と、こちらも約2割にのぼります。このデータからも、老後の貯蓄額にはかなり大きな差があることがわかります。 

 

リタイア後は、医療費や住まいの修繕など、思いがけない出費が発生することもあります。そうした事態に備えるためにも、現役のうちから計画的に貯蓄をしたり、資産運用を検討したりすることが大切です。 

 

 

金融庁「つみたてシミュレーター」を活用して、貯蓄3000万円を達成するためにどの程度の投資や貯蓄が必要なのかを試算してみました。まずは、安全性重視で貯蓄のみで運用した場合です。利回りは0.1%とします。 

 

45歳から貯蓄だけで65歳までに3000万円貯めるとなると、月々12万円以上も貯蓄していかなければなりません。 

 

積立期間30年間、つまり35歳から積み立てを始める場合でも、月8万2000円ほど貯蓄していく必要があります。 

 

25歳から貯蓄を始めれば、月々6万1000円強で到達できますが、40年間毎月貯蓄し続けるのは容易なことではありません。このように、貯蓄だけで3000万円の資産を形成するのは、かなりハードルが高いことがわかります。 

 

そこで、投資信託や株などに投資したケースを考えてみましょう。今度は利回り4%で運用を続けたとします。 

 

45歳から資産形成を始める場合でも、月々8万2000円ほどの拠出で済みます。高所得な方なら、45歳からでも3000万円の資産形成を実現できる可能性は十分にあるでしょう。 

 

35歳から資産形成を始めて30年間運用する場合は、月々4万3000円程度の積立額で3000万円を達成可能です。複利効果により、金額で見たときの資産の増加ペースが年々加速するため、最終的には形成した資産3000万円の半分近くを運用益が占める形となります。 

 

最後に25歳から40年間資産運用を続けた場合は、月々2万5000円あまりの拠出で、3000万円の資産形成を達成できます。 

 

この場合、資産の約60%にあたるおよそ1800万円弱が運用益によって形成されます。40年間で総拠出額わずか1218万円で、3000万円の資産形成が達成されるシミュレーション結果となりました。 

 

ただし、今回のシミュレーションは「運用利回りが長期間ずっと安定している」という前提で成り立っています。実際の資産運用では、相場の変動や景気の影響を受けるため、必ずしもこの通りにお金が増えるとは限りません。 

 

資産運用には、元本割れなどのリスクもつきものです。だからこそ、自分のリスク許容度や目的に合った方法を選んで、無理のない範囲で取り組むことがポイントです。 

 

 

2025年3月11日に厚生労働省が公表した「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」から、65歳以上無職夫婦世帯のひと月の家計収支を見てみましょう。 

 

 毎月の実収入:25万2818円 

 

■うち社会保障給付(主に年金)22万5182円 

 

 毎月の支出:28万6877円 

 

■うち消費支出:25万6521円 

 

 ・食料:7万6352円 

 ・住居:1万6432円 

 ・光熱・水道:2万1919円 

 ・家具・家事用品:1万2265円 

 ・被服及び履物:5590円 

 ・保健医療:1万8383円 

 ・交通・通信:2万7768円 

 ・教育:0円 

 ・教養娯楽:2万5377円 

 ・その他の消費支出:5万2433円 

 ・諸雑費:2万2125円 

 ・交際費:2万3888円 

 ・仕送り金:1040円 

■うち非消費支出:3万356円 

 

 ・直接税:1万1162円 

 ・社会保険料:1万9171円 

 毎月の家計収支 

 

 ・3万4058円の赤字 

この世帯のひと月あたりの収入は25万2818円。そのうち約9割にあたる22万5182円は、公的年金などの社会保障給付によるものです。 

 

一方、月々の支出は合計で28万6877円。その内訳は、社会保険料や税金などの「非消費支出」が3万356円、「生活費」にあたる消費支出が25万6521円となっており、毎月3万4058円の赤字が発生していることになります。 

 

支出を見直しても赤字が解消できない場合は、あらかじめ資産形成を進めておいて、必要に応じて取り崩せるようにしておくか、あるいは老後も働き続ける選択を視野に入れる必要があるでしょう。 

 

実際のところ、近年65歳以上でも働き続ける人は増加傾向です。2023年時点では、65歳以上全体で25.2%が就業しています。さらに、65-59歳に絞ると、過半数にあたる52.0%が就業を継続しています。 

 

現実には十分な資産形成が進まず、労働収入を得て生活している老後世帯が多いのです。 

 

さて、仮に赤字を貯蓄の取り崩しで乗り切って、65歳で引退するためにはいくら必要なのか考えてみましょう。単純に毎月3万4058円の赤字が65歳から90歳の25年間続くとすると、合計1021万7400円必要です。 

 

さらに、年を取ると、介護が必要になる高齢者が多く見られます。公益財団法人 生命保険文化センターによると、介護にかかる費用は一時的な費用が平均約47万円、月々の介護費用が平均9万円で、平均の介護期間は55カ月という試算結果が出ています。 

 

これらを基にすると、介護に必要な費用は、平均で542万2000円です。さきほどの生活費の補てんと合計すると、必要な貯蓄額は平均で1563万9400円です。 

 

 

2025年1月24日に、厚生労働省より「令和7年度の年金額」が公表されました。2025年度の年金額は以下のとおりです。 

 

 ・国民年金(老齢基礎年金(満額)):6万9308円(1人分※1) 

 ・厚生年金:23万2784円(夫婦2人分※) 

※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万9108円(対前年度比+1300円)です。 

 

※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。 

 

厚生年金の年金額例は一定のモデルケースに基づいています。そのため、実際に受け取る金額は、これまでの働き方や保険料の納付状況などによって大きく異なる点に注意が必要です。 

 

今回は新たに、夫婦それぞれの働き方に応じた年金額の試算も公表されました。現役時代の収入やキャリアの違いが年金額に与える影響が、よりイメージしやすくなっています。 

 

●(1)厚生年金期間中心の男性のケース 

年金月額:17万3457円 

 

 ・平均厚生年金期間:39.8年 

 ・平均収入:50万9000円※賞与含む月額換算。以下同じ。 

 ・基礎年金:6万8671円 

 ・厚生年金:10万4786円 

●(2)国民年金(第1号被保険者)期間中心の男性のケース 

年金月額:6万2344円 

 

 ・平均厚生年金期間:7.6年 

 ・平均収入:36万4000円 

 ・基礎年金:4万8008円 

 ・厚生年金:1万4335円 

●(3)厚生年金期間中心の女性のケース 

年金月額:13万2117円 

 

 ・平均厚生年金期間:33.4年 

 ・平均収入:35万6000円 

 ・基礎年金:7万566円 

 ・厚生年金:6万1551円 

●(4)国民年金(第1号被保険者)期間中心の女性のケース 

年金月額:6万636円 

 

 ・平均厚生年金期間:6.5年 

 ・平均収入:25万1000円 

 ・基礎年金:5万2151円 

 ・厚生年金:8485 円 

●(5)国民年金(第3号被保険者)期間中心の女性のケース 

年金月額:7万6810円 

 

 ・平均厚生年金期間:6.7年 

 ・平均収入:26万3000円 

 ・基礎年金:6万7754円 

 ・厚生年金:9056円 

自分が将来どれくらい年金をもらえるのか気になる方は、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」を活用してみましょう。 

 

とはいえ、年金と貯蓄で老後の生活費をまかなえるかどうかは、それぞれの家計状況や暮らし方によって大きく異なります。 

 

なお、令和7年度(2025年度)の年金は1.9%引き上げられましたが、前年度(2024年)の物価上昇率は2.7%。つまり、年金が増えても、それ以上に物価が上がっているため、実質的には目減りしているというのが現状です。 

 

●年金の引上げ率は物価上昇率に及ばない 

ここで、年金の引上げ率の決め方について簡単に紹介します。 

 

まず、年金の引上げ率は、賃金変動率と物価変動率の「小さい方」を基準としています。この時点で年金の引上げ率が物価上昇率を上回ることはありません。 

 

また、令和7年度の改定時には、物価上昇率よりも過去3年度の賃金変動率の平均の方が小さかったため、基準は賃金変動率の+2.3%におかれました。 

 

さらに、年金制度を維持するために「マクロ経済スライドによる調整」が導入されています。これは、少子化に伴い年金の負担者にあたる被保険者数が減少し、一方で、長寿化に伴い高齢者の年金受給期間が延びることへ対処するために、年金の引上げ率を抑える仕組みです。 

 

これらの要因より物価上昇率+2.7%に対して、年金の引上げ率は+1.9%に留まる形となりました。 

 

 

 
 

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