( 303075 ) 2025/06/28 07:02:11 0 00 (c) Adobe Stock
2024年末に経営統合の協議入りで合意したホンダと日産だが、2025年春には経営統合の協議は破談となった。その後に発表された2025年3月期決算は、ホンダと日産で明暗が分かれる形となった。袂を分かったホンダと日産の決算状況を比較する。みんかぶプレミアム特集「3月決算注目企業」第5回。
2024年末に経営統合に向けた協議入りを発表したホンダと日産ですが、2025年春には協議が打ち切られ両社は単独での生き残りを模索することになりました。
経営統合が破談した両社の、2025年3月期及び2026年3月期予想はどのような状況なのでしょうか。以下に取り上げます。(株価指標は5月27日終値)
ホンダ(7267)IFRS
・2025年3月期
売上収益21兆6,887億円(前期比6.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益8,358億円(同24.5%減)
・2026年3月期予想
売上収益20兆3,000億円(前期比6.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益2,500億円(同70.1%減)
・配当利回り4.9%(2026年3月期配当性向111.4%)、予想PER24.8倍、PBR0.5倍
ホンダの2025年3月期は増収・2ケタ減益となりました。最終利益は1兆円を割れたものの、8,000億円台は維持しています。
しかし、2026年3月期予想は減収・大幅減益の予想です。トランプ関税問題の行方が見えない中で、最終利益は70%の減益としています。ただし売上は6%減の予想に留めています。注目すべきは、配当性向を111.4%として、最終利益以上の配当額としている点です。トランプ関税問題の影響が軽微なら予想以上の利益を出せる、との自信の表れか、EVや自動運転などの研究開発投資がかさむ中でも、株価対策として資金を投じる姿勢を明らかにしています。またPBRは0.5倍であり、トランプ関税リスクはあるものの割安水準です。
日産自動車(7201)IFRS
・2025年3月期
売上収益12兆6,332億円(前期比0.4%減)、親会社の所有者に帰属する当期純利益▲6,708億円(前年同期は4,266億円の利益)
・2026年3月期予想
売上収益12兆5,000億円(前期比0.1%減)
・配当利回り0%(2025年3月期と2026年3月期は無配予想)、予想PER-、PBR0.2倍
日産の2025年3月期は売上が横ばいで、最終利益は大幅な赤字となりました。なお、経常利益までは黒字ですが、前期比で7~8割減の水準です。
2026年3月期予想について売上の開示はなされているものの、米国の関税政策による環境の不確実性により算定困難、として利益数字は出していません。
また、2025年3月期決算の発表と同時に、同社は2028年3月期までに世界で7工場の削減と世界従業員の約15%に相当する2万人の人員削減を発表しています。
なお、日産はかつて高配当銘柄として知られていましたが、2025年3月期は無配となり、2026年3月期も無配の予想です。
2025年3月期の売上は、ホンダ21兆円・日産12兆円であり、日産はホンダの約6割の売上です。またホンダは増収、日産は売上横ばいで、最終利益はホンダが黒字・日産は大赤字です。日産の赤字は構造改革費などを含んでおり、実体より数字が大きい部分もあります。ただし、日産は税金支払前の経常利益が2,000億円に対し、ホンダは税金支払後の最終利益でも8,000億円を上げており、両社の差はトランプ関税の影響が生じる前から大きいと言えます。
特に2026年3月期予想はホンダと日産は対照的な数字であり、ホンダは稼ぐ金額以上の配当を出す余裕を見せる一方で、日産はリストラそして利益予想の非開示という非常事態モードに入りました。2026年3月期は、トランプ関税により自動車業界は大きな影響が見込まれます。その中で、ホンダはトランプ関税の嵐を乗り越えるだけの体力がある反面、日産はリストラにより生き残りを模索せざるを得ない状況に追い込まれています。
トランプ関税の影響はホンダと日産ともに大きいものの、日産は経営状態の大幅悪化そしてリストラにまで至りました。両社は完全に明暗分かれる形となっています。経営統合の交渉から一転破談となった両社ですが、経営が苦しくなりつつある日産はリストラを経て復活することができるのでしょうか?明暗分かれる両社の今後の業績及び株価の行方が注目されます。
石井僚一
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