( 304650 ) 2025/07/04 05:40:49 0 00 カレーハウスCoCo壱番屋
「カレーハウスCoCo壱番屋」を運営する壱番屋の業績が絶好調です。5期連続増収、3期連続増益で、今期は6期ぶりに過去最高益を更新する見込み。背景には値上げがあり、1人当たりの単価は今や1200円。高級店となったココイチは、更なる業績拡大に向けて新たな道を進んでいます。
ココイチは2022年6月にベースカレーの価格を5.9%(+33円)引き上げました。同年12月に7.4%(+44円)、2024年8月には10.5%(+43~76円)もの値上げに踏み切っています。特に昨年の1割引き上げの影響は大きく、9月から今年5月まで客数はすべて前年を割り込みました。
しかし、客単価は1割増加しています。結果として、2024年9月から2025年5月までで、オープンから一定の期間が経過した既存店の売上高は平均で6.4%増となりました。値上げが奏功したのです。
壱番屋は2期連続で2ケタの増収となり、今期も1割増を計画しています。外食チェーンの中でも特に好調だと言えるでしょう。
ポイントは強気な値上げを行ったにも関わらず、売上が前年割れを起こすほど客が離れなかったこと。飲食店は段階的な価格改定を行い、様子を見ながら進めるのが普通です。特にココイチは約1200店舗の9割をフランチャイズ加盟店が占めています。
直営店の場合、客離れを起こしても閉店という荒療治で収益をコントロールすることができますが、フランチャイズの場合はそう簡単にいきません。値上げには慎重さが必要なのです。しかし壱番屋は断行し、見事な結果を出しました。
それにしても、客離れが起きなかったのはなぜでしょうか?
要因の一つにカレーという業態の特性があるでしょう。
カレーというと、子供が大好きな食べ物というイメージがあります。そのため、カレーをよく食べるのは若者のように感じますが、実際は逆。年齢層の高い人のほうが食べる頻度は高いのです。
マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングの調査(「カレーに関する調査(2025年)」)によると、20代から60代までの年齢層全体で、月1回カレーを食べる比率は69.6%。20代だけを切り取ると66.9%となります。30代は65.3%で、調査対象となった年齢層の中で最も低くなります。40代から増え始め、50代は平均を超えて71.9%まで高まります。
タニタはランチに関する興味深い調査を行っており(「令和ビジネスパーソンのランチ事情に関する調査 2025」)、年齢層別に「ランチのとり方を決める際に最も重視すること」を尋ねています。それによると、30代で最も多かったのが「価格」で39.0%でした。この数字は30代が突出しており、50代は28.5%まで下がります。そして、50代が最も重視するのが「味」で22.5%なのです。20%を超えているのは、全年齢層の中で50代のみ。
カレーとランチに関する意識調査をミックスすると、カレーを食べる頻度が最も低い30代はランチで価格を重視します。一方、平均よりもカレーを食べている50代が重視するのは味です。価格はあまり気にしません。
つまり、ココイチが年齢層の高い人の味覚を抑えていることができていれば、ある程度の値上げには耐えられる可能性があるのです。
このデータからは、カレー店は価格を下げることよりも、味を磨くことに力を注いだ方が流行りやすいことを示唆しています。
業績が好調とはいえ、ココイチの客数は90%台前半で推移するようになりました。飲食チェーンは基本的に、出店を重ねることで業績拡大を目指します。客数が伸び悩む中で出店を重ねれば、命取りになりかねません。
そこで、壱番屋は成長に向けた手を打ちました。その一つがラーメン店の買収。2024年12月にKOZOUの全株を取得すると発表しました。この会社は「極濃豚骨 らーめん小僧」などの店舗を運営しています。2023年3月にも竹井という京都のつけ麺店を買収していました。
壱番屋はフランチャイズ主体の会社です。直営店で伸ばすというよりは、ラーメン店のブランドの磨き込みを行い、フランチャイズ展開を狙っているのでしょう。
主力のカレー店は海外に軸足を移しつつあります。すでにアメリカでフランチャイズの1号店をオープン。今年12月にシリコンバレーにフランチャイズ2号店の出店を控えています。アメリカのフランチャイズ展に年3回以上出展し、加盟を希望する人を精力的に集めているのです。
アメリカ以外での展開も強化しており、今年5月にグアムに初出店しています。これで海外店舗は216。グアムの店舗は客単価2900円を想定しているといいます。日本の感覚からすると信じられませんが、海外店は強気の設定をできるという魅力があります。
店舗展開が順調に進めば、業績の拡大に一役買うことになるでしょう。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】 フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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