( 306398 ) 2025/07/10 06:42:59 1 00 国民民主党の玉木雄一郎代表は、参議院選挙に向けて「手取り増」を掲げて減税政策を推進しています。
現在の日本経済は停滞しており、過去数年のインフレが税収を改善する一因となっていますが、家計の所得回復は遅れています。 |
( 306400 ) 2025/07/10 06:42:59 0 00 減税で「手取り増」を掲げ、7月20日投開票の参議院選挙に挑む国民民主党の玉木雄一郎代表(7月2日、日本記者クラブの党首討論会) ZUMA Press Wire via Reuters Connect
6月25日コラム「国難に直面する『重税国家』日本にいま必要なもの」では、石破茂首相が率いる自民党が都議会選挙で議席を失った主たる要因は、減税政策を否定し続けていることにある、との見方を示した。
7月20日に行われる参議院選挙が公示されたが、メディア各社の序盤情勢の報道は以下の通りである。
・日経新聞「自公は改選66議席から減らすものの合計で50超の可能性(=非改選を含め過半数超)」 ・朝日新聞「自公は非改選を含めた定数の過半数の獲得が微妙な情勢」 ・共同通信「与野党が非改選を含む過半数の議席獲得を巡り競り合っている」
細かい差はあるが、自公の議席が参議院で過半数割れとなるかはほぼ五分五分である。
与野党ともに、「物価高対策」として家計の所得支援政策を掲げている。米価を中心に生活必需品の価格上昇に賃金上昇が追い付かない状況が続く中で、家計の購買力を高めることで総需要の拡大を後押しする対応が必要だろう。
そして、与党と野党の間の家計所得の支援の違いは、一回限りの現金給付なのか減税を行うか、にある。
実際には、減税が実現すれば、現役世代を中心に可処分所得が増えることが認識できるだけでなく、将来の増税懸念が和らぐ。このため、減税が財布の紐を緩める効果は大きい。ただ、減税政策は、税金に依存する権益者に配慮する政治家には取りづらい手段である。だから石破政権は、減税政策を採用しなかったのが実情だと筆者はみている。
なお、日本の財政状況が厳しいので「減税は無責任」というのが、石破首相らの主張であるが詭弁に過ぎないだろう。先述のコラムでも紹介したが、日本の「構造的な財政赤字」は2024年時点で-2.5%(GDP比)まで改善している。
元来財政規律に厳しいドイツと同様に、日本の財政は既に健全化している。長年デフレが続いた日本では、徴税基盤が極めて強固であることを背景に、過去数年のインフレタックスが極端に強まり過ぎて財政収支が急速に改善してしまったのである。
これは、インフレ率に応じて基礎控除の金額を調整する当然の対応が未だに行われていない、事実上の増税が続いている当然の帰結でもある。
このため、数年にわたる税金の取り過ぎによって、政府部門の財政収支が先行して改善している。一方で、家計所得の回復が遅れて、2024年から個人消費にブレーキがかかっている。だから、税金の取り過ぎを恒久的に是正する対応が、日本経済を持続的に成長させる適切な対応になる。
実際に、2024年10月の衆議院選挙で躍進した国民民主党が、基礎控除引き上げによる所得税の大幅な引き下げ、そしてガソリン暫定税率の引き下げを目指した。ただ、自公に日本維新の会が協力したことで、これらの減税は実現しなかった。
石破政権は、その衆議院選挙で明らかになった世論を無視する対応を繰り返していることになる。今年6月の都議選に続いて、7月の参議院選挙で強い逆風に見舞われるのは避けられない、というだけに過ぎない。
現在、日本経済の停滞は一段と鮮明になっている。内閣府は、7月7日に発表した5月景気動向指数の一致指数の基調判断を「悪化」に引き下げた。内閣による客観的な景気判断だが、コロナ禍の2020年7月以来、4年10カ月ぶりに日本経済が変調を迎えていることを意味する。
さらに、7月8日にはトランプ米大統領が、日本からの輸入品には一律で25%の関税を8月から賦課する通知を日本政府に送った。交渉が進んでいるとみられるEUなどと異なり、石破政権による対米関税交渉が進まずに、4月2日に発表された相互関税が結局8月から賦課されるとみられる。
これらを踏まえると、経済政策の機能不全によって、日本経済は2025年後半からマイナス成長に転じるリスクが高まっている。金融財政政策ともに景気刺激方向に転じる必要が高まる中で、家計への減税が一段と必要な情勢になりつつある。
こうした減税政策への強まる追い風は、今回の選挙結果に大きな影響を及ぼすだろう。
村上尚己 アセットマネジメントOne シニアエコノミスト
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)
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