( 307839 ) 2025/07/16 04:16:51 1 00 今回の参院選では、メディアの報道姿勢に変化が見られる。
(要約) |
( 307841 ) 2025/07/16 04:16:51 0 00 演説する神谷宗幣氏 ©時事通信社
今回の参院選は報道にも注目だ。というのも昨年秋、兵庫県知事選が終わった途端にメディアは饒舌になったからである。以下のように。
『兵庫県知事選 真偽不明の情報が拡散した』(読売新聞 2024年11月19日)
『選挙と立花氏 言動を看過できない』(朝日新聞 2024年11月23日)
それならもっと早く言ってよ! するとメディアは「反省」や「検証」をし始めた。だったら今年の参院選は違うはず。日本経済新聞は公示前に「選挙期間中か否かを問わず、届けるべき情報をお伝えします」と誓いを立てていた(6月30日)。朝日も毎日も宣言していた。お、やはり変わるのか?
今のところ政治家や候補者の問題発言や、ファクトチェックを各メディアが報じている。たとえば次だ。
『参政党・神谷宗幣代表の発言の真偽は? 「外国人からは相続税が取れない」と民放番組で…国税庁に確認したら』(東京新聞 2025年7月9日)
参政党の神谷代表がテレビ番組で、「外国人からは相続税が取れない」と発言した。しかし国税庁によると、日本国内の土地や建物などの財産は課税対象となり、所有者(被相続人)や相続する人がどこの国籍であろうと、どこに住んでいようと、税を支払う必要があるという。つまり、神谷氏の番組での発言は「誤り」だった。
この記事に対して神谷代表は「東京新聞も必死ですね」とXで引用ポストしていた。そりゃぁメディアも必死だろう。政治家が平気でデマを流すようになったらそれこそ「国益」を損ねるからだ。ファクトチェックに「必死ですね」と返す政治家こそ必死である。デマがばれたのが「効いている」のだろう。メディアはどんどん事実を確認して報道すればよい。
神谷代表といえば昨年2月の文春の「元公設秘書が自殺 “パワハラ的言動”に悩み」という記事が印象深い。
『 「参政党」神谷宗幣代表(46)の元公設秘書が自殺 “パワハラ的言動”に悩み、知人に〈どんな暴言吐いても許されるとか思ってるのかしら〉とメッセージを…神谷氏は「週刊文春」の取材に「責任は感じている」 』(週刊文春 2024年2月8日)
かなり驚いたが、現在では参院選で「日本人ファースト」を掲げて支持率を上げているという。ただ、その発言の数々は“歩くファクトチェック”と言っていい。
公示後の第一声では「安い労働力だといって野放図に入れていたら、日本人の賃金が上がらない。いい仕事に就けない外国人が集団で万引とかをやって、大きな犯罪が生まれる」と発言(東京新聞 2025年7月4日)。しかし警察庁などによると、日本人を含めた摘発人数に占める外国人の割合は10年ほど前から2%前後で推移し、大きな変化はない。
外国人が安い賃金で働くから日本人の賃金が上がらないというのも「賃金が上昇しないのは、長期化したデフレや非正規労働者の増加など、数十年間の複合的な問題が絡んでいる」(信濃毎日新聞 2025年7月13日)。
そもそもこれまで「移民」という言葉を避けつつ、しかし「労働力」は欲しいという論理で技能実習生制度など“裏口のドア”を開けてきた。こうしたやり方はきちんと外国人の人権と向き合ったかどうか?
人間の負の感情を利用したバッシングは常にある。先日、国が2013〜15年に生活保護費を引き下げたのは「違法」という最高裁の判決があった。当時、引き下げ前はリーマン・ショック後の世界的大不況の影響があり、生活保護の利用者が急増した。
《一般世帯の暮らしも上向かないなか、生活保護制度や利用者を狙った「生活保護バッシング」が過熱した。》(朝日新聞 2025年6月28日)
そうした状況下で迎えた12年の衆院選で、野党だった自民党は公約に「給付水準10%引き下げ」を掲げて大勝。政権に返り咲いた。
弁護士の三輪記子さんは日刊ゲンダイのコラム(2025年7月1日付)で次のように解説していた。生活保護の受給は憲法25条(生存権の保障)に由来するもので、全て個人の尊厳(憲法13条)は「生きてこそ」。そのうえで当時の自民党は「生存権」を削るような「公約」を掲げたのだと。今回の判決がそれにダメ出しをしたのだと。
三輪さんは、誰かの権利、自由を削るようなことを「是」とする「公約」に熱狂しても「それは自分にめぐってくるかもしれないのです」と危惧している。
そう、これは過去の話ではない。誰かを標的にして叩く、生活不安につけ込んだような排外主義はさらに増している。「誰かの権利、自由を削るようなこと」に興奮してはいけないのだ。その刃はいつか自分に向かってくるかもしれない。排外主義が自分とは無関係だと言えるだろうか?
いつしか参院選の大きな争点は「外国人」政策となった。みっともないのは与党・自民党も引っ張られていることだ。参院選では自民党は「『違法外国人ゼロ』に向けた取り組みを加速化」と掲げている。ただ、施策の前提となる「ルール」を守らない外国人に関する客観的データが十分とは言えないと早々に報道されている(朝日新聞 2025年7月9日)。
ちなみに「違法外国人ゼロ」を「違法日本人ゼロ」に言い換えてみるといかに大雑把で適当なフレーズかよくわかる。選挙戦が始まると石破茂首相は、外国人政策の司令塔設置も表明した。
実は「日本人ファースト」についてこんな言葉があった。
《自民幹部は「排外主義につながるのならば、日本の国力低下を招きかねない」と参政の主張を警戒する。》(読売新聞 2025年7月1日)
「日本人ファースト」は国力低下を招く。与党として最低限の矜持はあるのかと思ったのだが、今ではすっかり引っ張られている。
そんな状況下、新聞各紙は社説で外国人政策や排外主義について取り上げた。掲載順に紹介しよう。
・東京新聞『’25 参院選 外国人政策 排外主義台頭を危ぶむ』(7月9日)
・読売新聞『外国人政策 社会のルール周知し共生図れ』(7月10日)
・日本経済新聞『外国人と共生する社会へ骨太の論戦を』(7月11日)
・毎日新聞『参院選2025 外国人政策 排外主義の助長懸念する』(7月12日)
・朝日新聞『参院選 「優先」と分断の先に 排外主義の台頭を許すな』(7月13日)
私は現在、選挙現場で会う候補者に「排外主義的な言説についてどう思うか」と質問している。先日、山尾志桜里候補(東京・無所属)の演説を見ていたら応援に漫画家の小林よしのり氏が来ていた。なので小林氏にも質問してみた。すると、
「言葉ってね、『公』の言葉と『私』の言葉がある。公の言葉にして言いすぎるとね、煽っちゃうんですよ。どういう言葉で言うかとか、それは言わないでおこうとか、そういう判断が必要なんですよ『保守」には」
参政党についてどう思うか尋ねたら、
「ああ、あれは極右だよ」
“あの”よしりんが呆れていた。
先週末には東京都の小池百合子都知事が「競い合って排他主義、非常に危険だ」と会見で述べた。関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式典に追悼文を送らない知事が何を言う? と思ったが、“あの”小池知事でさえ危険と感じる今のヤバさを痛感したのである。
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文春オンラインで好評連載のプチ鹿島さんの政治コラムが一冊の本になりました。タイトルは『 お笑い公文書2025 裏ガネ地獄変 プチ鹿島政治コラム集2』 。
プチ鹿島
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