( 308469 )  2025/07/18 06:07:18  
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参院選が近づく中、参政党の人気が高まり、「日本人ファースト」という主張が賛否を呼んでいます。

批判者は、これを排外主義的と見ていますが、支援者は不安を抱える社会状況の反発として受け止めています。

参政党の導入する政策は教育や環境保全に焦点を当てており、外国の影響を恐れる人々の不満に応えています。

このような社会的背景には、賃金の低迷や社会的地位の不安定感があり、国民の多くが日本の衰退を感じています。

人々は、外部からの脅威を認識することで不安を和らげる手段を求めており、参政党はそのニーズに応えつつ、支持層を広げているという指摘があります。

(要約)

( 308471 )  2025/07/18 06:07:18  
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「日本人ファースト」に人気が集まる一方で、排外主義的であるとして批判の的にもなっている(写真:Pasya/アフロ) 

 

7月20日に迫っている参院選。今回、勢いを増しているのが参政党です。インテリ層を中心に「カルト」「極右」「反知性主義」などと批判を集めていますが、評論家の真鍋厚氏は「熱狂の背景を見ることが大切だ」と指摘します。緊急シリーズの第3回です。 

初回:「参政党の支持者は頭が悪い」と言う人もいるが…支持されるのには理由がある! 参政党人気「理解できない」人が見誤る熱狂の“本質” 

第2回:「参政党なんか支持する人は頭が悪い」と批判する人もいるが…非常に短絡的な考えだ!  「参政党人気」の深層にある深刻な孤独の“正体” 

 

 参政党の支持率が高まる一方で、「日本人ファースト」が排外主義的な主張であるとして批判の的になっている。 

 

 排外主義ではないかとの批判は、参政党だけではなく、国民民主党や日本保守党などにも向けられている。要は、外国人政策が大衆受けすることから、急に「排外しぐさ」を“釣り”にし始めたということらしい。 

 

 参政党に関しては、新憲法構想案にある帰化人についての取り扱いや、支持者らによるヘイトスピーチなどに対する強烈な反発が広がっている。 

 

 このような日本人以外を低位において、日本人の自尊心の回復を図る「日本人ファースト」に人気が集まるのは、不確実な時代へと足を踏み入れ、全体的にパイが縮小してゆく中で、必然的に起こり得る反動といえる。 

 

■日本人が抱える漠然とした不安 

 

 この点において、参政党が反グローバリズム的な政策を掲げていることは非常に重要である。 

 

 代表の神谷宗幣氏は、街頭演説で「大きな国際金融資本、グローバル全体主義」「国際ビッグファーマ」といった言葉で敵対勢力を名指ししている。 

 

 陰謀論者がよく使う「ディープステート(闇の政府)」とほとんど同じ意味だが、ここには、自分たちの生活空間が何者かの力によって浸食され、アイデンティティが失われかねないという自己保全に対する漠然とした不安へのアピールがある。 

 

この漠然とした不安の背景には、実質賃金の低迷や不安定な社会的地位、あるいは参政党に関する最初の記事で論じたように、「自国は衰退している」と感じている日本人が7割に上っており、悲観的な見方が強まっていることが挙げられる(参政党人気「理解できない」人が見誤る熱狂の本質)。 

 

 

 参政党の3つの重点政策「教育・人づくり」「食と健康・環境保全」「国のまもり」が、行き過ぎたグローバリズムや国民の窮状を顧みない国の方針に反発し、強い社会不安にさらされている「ソフトな保守層」に訴求したことは想像に難くない。 

 

 食は農薬や化学薬品などの害、教育は押し付けられた自虐史観などの害、外国資本による企業買収や土地買収などの害にフォーカスされており、その根幹にある心理は「外なる世界」に脅威の根源があり、「内なる世界」が侵略されているという危機感、焦燥感だ。 

 

 「よそ者は危険の化身であり、したがって、わたしたちの生活につきまとう不安を代理的に表現しているのである」と述べたのは、社会学者のジグムント・バウマンだ(『コミュニティ 安全と自由の戦場』奥井智之訳、筑摩書房)。 

 

 続けて「よそ者の存在は、奇妙に屈折したかたちで、わたしたちの慰めとなり、さらには安心をさえ与えてくれるようになる」とまで言う。 

 

 なぜなら、不安の原因を具体的に指示できるようになるからだ。つまり、「危険がどこにあるかが分かっているので、もはや不運におとなしく甘んじる必要はない。自分で打てる手が現れるのである」(同上)。 

 

■「内なる世界」の破壊者 

 

 「よそ者」は、観光地でトラブルを起こす外国人や不法滞在の外国人として認識されることもあれば、外国から入って来た急進的な思想として認識されることもある。あるいは外国製の薬やワクチンとして認識されることもある。いわば「内なる世界」の破壊者なのである。 

 

 「内なる世界」は、とても脆いものでできており、清浄さを保つことが難しい。世の中の急激な変化に不気味さを感じ、自尊感情を高めるための緊急の措置を必要としている保守的な傾向を持つ人々は、往々にしてルーツに対する崇敬によって歴史の連続性を取り戻そうとする。 

 

 神谷氏は、自身の著書で「目に見えないもの」を大切にするのが政治だと自説を展開している。「スピリチュアルを怪しく思う人が多いですが、僕は日本人が昔から大切にしてきた先人の想いや歴史と文化といった形のないものを現代の僕たちがつないで、より具現化していくことが本当の政治だと思っています」と断言している(吉野敏明・神谷宗幣『国民の眠りを覚ます「参政党」』青林堂)。 

 

 このような基本姿勢は、党の綱領にある「先人の叡智」「日本の精神と伝統」という文言にも表れている。支持者が、そこに思い思いのイメージを投影していることはほぼ間違いないだろう。 

 

 

 そして、そこにおいて、日本または日本人という想像的なカテゴリーの境界と、個々の精神の防護壁が皮膚感覚において一致するのである。 

 

■「ソフトな保守層」の生活感覚との合致 

 

 これは実のところ、「このままでは日本はおかしくなるのではないか」と懸念せずにはおれない「ソフトな保守層」の生活感覚ともおおむね合致している。 

 

 外国人労働者の増加といった分かりやすいものだけではなく、食糧や医療といった細胞レベルで忍び込んでくるもの、戦後教育の歪みなど思考レベルで作用するものなど、ありとあらゆる領域で「よそ者」の気配に警戒感を募らせ、身近な脅威として感じているからである。 

 

 自分たちの慣習に従わない、異なる文化圏に属する人々(または物質や価値観)が慣れ親しんだいつもの風景を塗り替えつつある――ここには、神聖なものを守ろうとする心性が潜んでいる。神聖なものとは何か。何ものにも汚されない自己の心身である。これは文字通り自然崇拝的な志向と親和性がある。 

 

 党のスタンスとして、反ワクチン的な傾向を隠さないのは、海の物とも山の物ともつかぬ最先端の薬剤を身体内に入れたくないという異物への拒否反応に、国家の安全保障を脅かす外国勢力に対する拒否反応と同じアラートの“正しい”作動をみているためだろう。 

 

 しかも、コミュニティや人間関係が脆弱になる流動化が著しい世界では、身体は最後の砦となり、過度に聖域化され、健康への関心は総じて高まりやすい。 

 

 かつて社会学者のウルリヒ・ベックが提唱した「危険社会には、『不平等』社会の価値体系に代わって、『不安』社会の価値体系が現れる」というテーゼは、容易に「不安からの連帯」が立ち上がることを示している(『危険社会 新しい近代への道』東廉・伊藤美登里訳、法政大学出版局)。 

 

 ベックは、その背後にある「自分が直接曝されている危険がどのようなものか評価する主権をも喪失している事実」を重くみた。もはや様々なリスクに無防備であることが避けられないからだが、これは結果的に主権の喪失を主観の優越で埋め合わせる傾向を促進することになった。 

 

 何が有害か、何が安全かは「想像的」に決定されるのだ。食べ物の影響を過大評価する「フードファディズム」はその一種といえる。というより「ファディズム(過剰な傾倒)」的な振舞いは全方位に張り巡らされるようになったのである。 

 

 

■「失われた30年」の焦土から芽吹いたポピュリズム 

 

参政党は、これらの「不安からの連帯」に対する潜在的なニーズを鋭敏に感じ取り、支持層の拡大に成功したのだろう。前回触れた「プロシューマー的な解決」は、まさにこの「不安からの連帯」をポジティブなものに変える魔法なのだ(「参政党人気」の深層にある深刻な孤独の“正体”)。 

 

 参政党(神谷氏)が発信したメッセージに対して、嘘やデマを流すなと猛反発が巻き起こっているが、地方における地道な組織づくりが基盤にあることを忘れてはいけない。支持者の根本にある感情は本物であり真正のものである。だからこそ厄介なのである。 

 

 筆者は2022年の参院選後、ある雑誌から参政党に関する記事の執筆を依頼され、その原稿の末尾に「まるでコロナ禍が終われば熱狂も冷めるといった一過性の現象と判断するのは早計だろう。なぜなら、社会そのものが崩壊の一途を辿っている現状に変わりはないからである」と釘を刺した。 

 

 ベックは、「不安からの連帯」についてあまり良い展望を示してはいない。だが、少なくともそのメカニズムを知ることは内省の契機にはなり得る。 

 

 「失われた30年」の焦土から芽吹いたポピュリズムとわたしたちがどう向き合っていくのかが問われているといえる。 

 

【もっと読む】「参政党なんか支持する人は頭が悪い」と批判する人もいるが…非常に短絡的な考えだ!  「参政党人気」の深層にある深刻な孤独の“正体” では、参政党が参院選の台風の目になりつつある背景について、陰謀論やコミュニティに詳しい批評家の真鍋厚氏が詳細に解説している。 

 

真鍋 厚 :評論家、著述家 

 

 

 
 

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