( 309404 ) 2025/07/21 06:21:08 1 00 7月20日の参議院選挙で自民党は大敗し、注目を集めたのが急成長を遂げた参政党である。 |
( 309406 ) 2025/07/21 06:21:08 0 00 (c) Adobe Stock
7月20日投開票の参議院議員選挙で自民党は大敗した。既成政党が厳しい戦いを強いられる中、注目度を高めたのが、今回大躍進した参政党だ。マスコミ各社の調査では結党5年の「新興勢力」とは思えない勢いがあると当初から見られ、不気味とも言える伸長ぶりを見せた。最近まで政党支持率が高いとは言えなかった参政党は、なぜ急伸したのか。多くの国民が気にする経済・税制政策では消費税の段階的な廃止の推進や、社会保険料の見直しなどを掲げていた。一方でSNSでは東京都港区議会議員の新藤加菜氏が「参政党支持者で高学歴の方って、いらっしゃるのでしょうか?少なくとも私の見ている範囲では見かけたことがありません」などという失礼な意見もあった。精緻な選挙分析で知られる経済アナリストの佐藤健太氏が参政党の「正体」を探る。
「今、朝日の記者からも撤回しないのか?と詰められましたが、女性には適齢期があるから歳を重ねていけば出産ができなくなるのは生物として当然のこと。だから適齢期に出産できる社会環境を政治の力でつくろうと言ったことを叩く意味がわかりません。『日本人ファースト』や憲法に対する批判も批判のための批判であり、建設的な問題提起にはなっていない。こうやって印象操作をして政治家を貶めてきたんですね。さてそのやり方がいつまで通用するか」。参院選が告示された7月3日、参政党の神谷宗幣代表は「X」(旧ツイッター)にこのように記した。
神谷代表はこの日、都内での演説で「高齢の女性は子どもが産めない」などと述べ、すぐに毎日新聞やその他のメディアが発言を疑問視する形で報じた。実際、この発言に対しては各地で抗議デモが行われている。神谷代表が投稿したように、この種の発言がメディアで滝のように報じられれば、通常ならば同党の勢いは急激に失われる。発言者が閣僚や党幹部ならば大炎上し、辞任が不可避となることも珍しくない。
加えて、参政党や神谷代表の憲法観に対する批判や参院選で掲げる「日本人ファースト」なども分断や排除を招くといった声も向けられている。だが、7月3日の日本テレビ「news zero」に出演した神谷代表は「もちろん、外国人の人権はある。我々はそれを無視して良いとか追い出そうとかという主義ではない。ただ、他党があまりにも外国人の人権とかに配慮しすぎて、取り締まりが甘くなっていたり、財布の紐が緩んでいるのではないかというところに国民が不満を持っているのではないかと思った。だから、不満の受け皿として参政党が働きますよと訴えるために批判を恐れずに『日本人ファースト』」と存在意義を語る。
興味深いのは、参政党の支持率が「ある時期」を境に上昇した点だ。7月12日に日経新聞電子版が配信した分析記事を見れば、参政党の支持率は昨年10月から徐々に上向いてきたことがわかる。それは国民民主党も同様の傾向があり、両党は昨年10月1日に発足した石破茂内閣に対する批判票や若年層、そして行き場のない無党派層の「受け皿」になってきた。それが「改革中道」路線の国民民主、保守層を中心に吸収する参政党に分かれてきたと言える。
ただ、所属議員や公認問題を巡るゴタゴタが生じた国民民主党が今年4月以降に支持率を下降させてきたのに対し、それを「吸収」するかのように参政党は上昇してきた。5月には日経新聞の調査で支持率が前月比4ポイント増の7%に伸長している。40代に限れば15%と国民民主党を抜いて自民党に次ぐ「第2党」になった。そして、6月の都議選では3人が当選している。
共同通信社が7月5、6日実施した世論調査を見ると、比例代表の投票先はトップが自民党の18.2%であるものの、参政党は6月末の前回調査から2.3ポイント上昇し、8.1%と2位になった。国民民主党は6.8%、立憲民主党は6.6%で、少数政党に過ぎない参政党の勢いに各党は警戒した。
では、参政党は一体いかなる政党なのか。そして、神谷代表とはどのような人物なのか。その「正体」を探っていきたい。
神谷代表は1977年に福井県の生まれ。県立高校を卒業後は関西大学文学部、そして関西大学法科大学院に進んだ。公式サイトのプロフィールを見ると、「20代は高校で『英語と世界史』を教え、実家の食品スーパーの倒産を経験することで、教育の課題と地方経済の疲弊を実感する」と記されている。そして、「政治からのアプローチで『日本の若者の意識を変える』ことを目指し、2007年に29歳で吹田市議会議員に初当選」とある。
市議としては2期6年、吹田市議会副議長も経た後、2012年の衆院選では自民党公認候補として立候補したが、落選した。ネット上には当時の自民党総裁である安倍晋三元首相や石破茂幹事長(現首相)との画像があふれる。2015年には無所属で大阪府議会議員選挙にも立候補しているが、これも落選という結果だった。そこから2020年の参政党結党(神谷氏は事務局長就任)につながる。
神谷氏は参政党を元日本共産党国会議員秘書やYouTuberらと立ち上げたというのだから興味深い。設立に関与した1人である早稲田大学招聘研究員にして国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏は7月12日配信された「みんかぶマガジン」の寄稿記事で、参政党の組織運営を踏まえた上で政策の特徴について以下のように説明している。
「神谷氏自身も党員の空気から逃れることは難しい。というか、むしろ組織拡大を目指す神谷氏は集まった党員の空気を代弁する必要がある。そのため、十分に現実的な精査がされることなく、政策がアウトプットされているのが実態ではないかと推測される」
「その政党構造の宿命として、新たに組織拡大のマーケティング対象として集めた党員層にウケる政策を言い続ける必要がある。参政党が陰謀論、オーガニック、反ワクなどのコアな支持者を取り込んでいく際に、その新規党員層の声を反映した主張を繰り返してきた。しかし、時が経って、党員の主流が変われば過去の発言は不問かor無かったことになる。なぜなら、同党にとって説明責任を負う相手は、世間ではなく党員、なのでそれで問題になることはほぼない」
「結党当初は『一円の増税も許さない』というスローガンがあったが、2022年の参議院議員選挙前にその政策的な歯止めが外れた。その時点で同党の政策は財政支出のタガが外れて、財政制約を考えることなく、党員が望むどのような政策でも同時に並べられるようになった。その結果として、およそ非現実な財政支出、国有化、その他の政策が並べられることに抵抗が無くなったと思う。しかし、これは党員の願望を並べたものに過ぎないので、本に実装可能な政策論争の対象として扱うことは困難だろう」
渡瀬氏は「党運営と党体制、資金集めは褒めて、政策面は褒めないというスタンス」であるという。党設立後、神谷氏と政策の折り合いがつかず、渡瀬氏を含む創設メンバーは相次いで離党している。結党時は世の中の仕組みやあり方を伝えながら、国民の政治参加を促したいとスタートしたものの、ネット上には参政党に関して「神谷氏の独裁」「政治ビジネス」といった批判もつきまとう。
参政党は6月、日本維新の会を離党した梅村みずほ氏が加入したことで所属議員が5人となり、日本記者クラブやテレビ番組の党首討論に神谷代表が出演する資格が得られた。梅村氏は6月30日の記者会見で入党に関し「(参政党は)『カルト』『マルチ』『陰謀政党』などと言われており、その点が気にならなかったわけではない」「神谷さんが独裁などと言われている」とも語っている。
だが、神谷氏は「独裁」批判について、先に触れた日本テレビ番組で「私もいつまでも独参、独裁といわれるのも気持ちが良いものではない」と説明。8万人弱に上るという党員は「30~50代が中心」(神谷氏)といい、SNSで参政党を知った人も多い。神谷代表は番組で党員との関係性に触れつつ、「参政党の党員はネットでなれて、ネットで辞められるので私の発言や運営が気に食わなかったら、みんなが辞めていく。辞められると運営費がなくなるので党の経営がままならなくなる」「かなり民主的にガラス張りにしている」という。
これまでの参政党については「3年前の選挙が終わった後に全国に289の選挙区があるから、そこに支部をつくり、役員を決めてねと。そうなると問題を起こす人というのは組織の中で外れていく。中で宗教の勧誘したり、あまりにも思想が右に寄りすぎたり左に寄りすぎたりするとか。ネットの中の情報だけで根拠のない陰謀論とかを声高に叫ぶ人とか、そういう人たちもいた」と明かしている。
筆者は、政党を立ち上げた中心人物が「独裁」批判にさらされるのはある意味で当然のように思える。実際、組織を立ち上げる時は最も速く、最も行動した人物が中核となり、時に「手弁当」「無私」で運営していかざるを得ないからだ。それは政党であれ、企業であれ同じであろう。投票したい政党がないから、自分たちでゼロから創ろうという党員参加型の「手作り政党」ならば、なおさらと言える。
神谷氏が結党に向けて転機となったのは、2010年6月に設立された政治団体「龍馬プロジェクト」だろう。結成当初は地方議員が中心で、神谷氏は全国会の会長に就任した(現在は国会議員参与)。
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