( 311054 )  2025/07/27 05:49:44  
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参議院選挙での自民党の歴史的敗北を受け、次期総裁選が党の存続を左右する重要な場面となっている。

小泉進次郎氏は世代交代を期待され、高市早苗氏は強固な保守層の支持を受けているが、どちらも日本が直面する深刻な経済問題に対して明確な解決策を持っているとは言い難い。

次のリーダーには、痛みを伴う改革を実行し、財政と経済を再建する能力が求められる。

茂木敏充氏の「増税しない」という公約が取り上げられており、自民党の再生には敗北の責任を明確にし、新たなリーダーのもとで改革を進める必要がある。

次期総裁選では人気と保守の矜持が争われるが、本当に求められるのは実務能力である。

最終的に、次期リーダーがどれだけ国の難局を乗り越える覚悟を持っているかが問われる。

(要約)

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(c) Adobe Stock 

 

 参議院選挙での歴史的敗北により、石破茂政権は終焉を迎えた。衆参両院で過半数を割る少数与党となった自民党にとって、次期総裁選びは党の存亡をかけた戦いとなる。高い発信力と知名度で世代交代を期待される小泉進次郎氏と、強固な保守層の支持を背景に党の原点回帰を訴える高市早苗氏が、次期総裁選の有力候補として浮上している。しかし、この国を覆う経済悪化と財政危機は深刻であり、人気や理念だけでは乗り越えられない。日本が直面するこの国難を前に、真に求められるリーダー像とは何か。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が、自民党が抜本的な改革を断行する覚悟の有無を問うーー。 

 

 参議院選挙における自民党の歴史的敗北は、石破茂政権に終止符を打つことを決定づけた。衆参両院で過半数を割り込む少数与党という異常事態の中、次のリーダー選びは単なる党内政局では済まされない。政策がぶれ続け、「責任ある政治」という中身のないうわ言を繰り返すようでは、現在の自民党が政権維持だけが目的となっている証拠だ。となれば野党転落は、その存在意義すら奪うものである。憲法改正も言わず、存在する目的を失ったのなら、即刻解散して、政策ごとに政党をつくるのが筋だろう。 

 

 政治の世界では、過去の選挙の構図が未来を規定することが多い。2024年の総裁選は、1回目の投票で石破氏、高市氏、小泉氏の三者が上位を占める三つ巴の戦いであった。この結果をもって、次期総裁選も高市氏と小泉氏の一騎打ちになると予測するのは自然な流れである。 

 

 小泉氏は高い発信力と知名度を背景に、世代交代を期待する声に支えられている。農林水産大臣として着手したコメ価格高騰対策では一定の成果を上げた。党内若手や中堅議員からは、失墜した自民党のイメージを刷新し、次の選挙を戦うための顔として小泉氏を待望する声が絶えない。国民からの信頼回復という至上命題を考えれば、小泉氏が最有力候補の一角であることは間違いない。 

 

 対する高市早苗氏は、保守層からの支持を基盤とする。先の参院選で自民党が議席を減らした一因は、保守的な価値観を持つ有権者が、より鮮明な主張を掲げる参政党などに流れたことにあると分析されている。 

 

 この流出した支持層を取り戻せるのは高市氏しかいない、という期待が党内には根強く存在する。 

 

 

 SNS上では、安全保障政策や歴史認識問題において明確な国家観を発信する高市氏を支持する声が渦巻いており、その熱量は他の候補者を圧倒する。一部の保守論壇誌やオンラインメディアは高市氏を強力に後押ししており、強固な支持基盤を形成している。 

 

 昨年の衆議院選挙や今年の参議院選挙を通じて高市氏を支える議員の数は減少したものの、総裁選出馬に必要な国会議員20人の推薦人を集めることは、私は十分に可能と見る。その政治姿勢は、今の自民党に欠けている力強さと信念を感じさせるものだ。 

 

 このような状況から、次期総裁選は小泉氏の持つ広範な支持と、高市氏の持つ強固な支持の激突となる可能性が高い。一方は国民全体の空気を読み、もう一方は党の原点に立ち返ることを訴える。この対決は、自民党が今後どのような道を歩むべきかを有権者に示す、象徴的な戦いとなるだろう。 

 

 政府の交代、すなわち政権交代がどのような条件で発生するのかについて、アレッサンドロ・ペレガタ氏とマリオ・クアランタ氏による調査論文『政府交代を通じた説明責任:50カ国における経済パフォーマンスと政治制度の条件的役割、1990-2015年』は重要な示唆を与えている。50カ国、304選挙のデータを分析したこの研究は、政権交代の最も強力な要因がマクロ経済の動向であることを実証した。 

 

「本稿は、政府交代に影響を与える要因を調査する。我々は、経済が交代に与える直接的な影響と、政治制度的な状況が果たす条件付きの役割に関する研究仮説を検証する。分析の結果、第一に、マクロ経済のパフォーマンスが良好な時期には交代が起こりにくく、マクロ経済状況が交代に与える影響は、政治制度的な文脈によって部分的にしか条件付けられないことが示された。経済パフォーマンスと政府交代の間には有意な負の関係が存在する。良好なマクロ経済パフォーマンスと交代との間には負の関係が確認され、一方で制度の媒介効果は実質的に有意ではない。現職の多数派の形態は、経済パフォーマンスと政府交代の関係に、比較的弱いながらも条件付きの効果を示すが、不均等性や政府・野党の政党数には影響しない」 

 

 

 つまり、この研究が示すように、有権者は小難しい政治制度の差よりも、自らの生活に直結する景気の良し悪しを基準に、現職の政府を罰するか、信任するかを判断する。 

 

 現在の日本経済は、日銀短観が示す通り、決して楽観できる状況ではない。直近の日銀短観は、海外経済の減速や米国の関税政策、国内では深刻化する人手不足や物価高騰が、企業の先行き見通しに暗い影を落とした。経済が悪化すれば、国民の不満は政権与党である自民党に向かう。いかなるリーダーが立とうとも、経済という巨大な波の前では無力となり、政権交代のリスクは現実のものとなる。 

 

 この厳しい現実を踏まえた時、小泉氏や高市氏が日本の未来を託すに足るリーダーなのか、という問いが浮かび上がる。二人の政治家は、国民の期待を集める一方で、この国が直面する構造的な課題、とりわけ財政問題に対して明確な処方箋を示しているとは言い難い。人気や理念だけでは、国家財政の破綻という危機は乗り越えられない。日本が抱える債務残高は対GDP比で250%を超え、先進国で最悪の水準にある。社会保障費は膨張を続け、防衛費も増額された。この現実を直視せずして、国家の安定はあり得ない。 

 

 ここで注目すべき人物が、茂木敏充前幹事長である。茂木氏は、先の総裁選において「増税はしない」と明確に公約した。この国の財政状況を考えれば、増税を回避するためには、聖域なき歳出改革を断行する以外に道はない。自民党には、公共事業や各種補助金といった歳出を通じて支持基盤を固めてきた長い歴史があり、歳出削減には党内から強いアレルギー反応が示されるのが常である。既得権益の岩盤を打ち破るには、並大抵ではない政治力と覚悟が求められる。茂木氏は党三役や主要閣僚を歴任し、党内力学を知り尽くした実力者である。その茂木氏が掲げた「増税なき財政運営」という公約は、歳出の無駄を徹底的に排除するという固い決意の表れに他ならない。 

 

 新聞に名前のあがる他の候補者たちの中には、財政規律を重視するあまり、安易に増税に言及する人物も少なくない。小泉進次郎氏もその一人だ。 

 

 国民が物価高に苦しむ中で、さらなる負担を強いるような政治では支持を得られない。それならば石破首相が続投すれば良いという意見もあるかもしれない。しかし、選挙で国民の信任を失ったリーダーがその座に留まることは、民主主義の原則に反する。 

 

 

 自民党が再生するためには、敗北の責任を明確にし、新たなリーダーの下で再出発するしかない。 

 

 結論として、次期総裁選は小泉進次郎氏と高市早苗氏の華やかな戦いとして世間の耳目を集めるだろう。国民的人気か、保守の矜持か。どちらが勝利するにせよ、その先には経済の悪化と少数与党という茨の道が待っている。この国難を乗り切り、日本の未来を切り拓くためには、人気や理念だけではない。痛みを伴う改革を断行し、財政を再建し、経済を成長軌道に乗せるという、極めて困難な課題を遂行できる実務能力が求められる。 

 

 日本を救うには「支援団体を規制で守り、補助金を配る。そして消費税を上げる」という従来の自民党がつくりあげた強固なビジネスモデルを崩壊させる必要がある。 

 

 問われているのは、人気やイデオロギーだけでは解決できない日本の課題への覚悟だ。次期総裁が誰になろうとも、国民が真に求めるのは、この難局を乗り越え、未来を切り拓く実務能力と、痛みを伴う改革を断行するリーダーシップに他ならない。進次郎か、高市か、あなたならどっちがいいと思うのか。コメント欄やSNSで是非、教えてほしい。 

 

小倉健一 

 

 

 
 

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