( 311059 ) 2025/07/27 05:56:44 1 00 トランプ大統領が高額な工事費を批判しつつFRB本部ビルの改修工事を視察する中、株価は上昇を見せている。 |
( 311061 ) 2025/07/27 05:56:44 0 00 「工費が高すぎる」などと言いながらFRB本部ビルの改修工事を視察、「圧力」をかけるトランプ大統領。もちろんパウエル議長(右)は「あっかんべー」をしているわけではない(写真:AP/アフロ)
これ以上ないほどの、株を売るべきときがやってきた。
なぜなら、株価が上がっているのは、「トランプの妖術」にはまっているからであり、同時に、日本政治の崩壊から社会の崩壊が進行しているのを漫然と眺めているからである。そして、人々は、最後にはそれに気づく。すなわち「噂で買い、事実で売る」なら、世界経済と日本社会の崩壊という事実に人々が気づいたとき、大暴落となるからである。株も社会も終わりなのである。
■一時的に消えた「恐怖と混乱のシナリオ」
日本時間の7月23日早朝までにアメリカのドナルド・トランプ大統領と、赤澤亮正経済再生担当大臣の交渉がまとまり、日本への相互関税は15%、自動車関連も15%へと、トランプ大統領との関税戦争の決着がついたように見えた。
これに日本の株式市場は狂喜乱舞し、同日の日経平均株価は前日比1396円も上昇して終えた。翌24日もさらに655円上昇した。日本に続き、アメリカとEUの交渉も終結しそうだ、さらには米中の会談も予定されていて、こちらももしかしたらまとまるかも、という期待が膨らみ、世界中の株式が全面高となっている。
日本においては、政治的状況も、一時の最悪の想定から見ると、一時的な安定が得られ、大幅高を後押しする材料になっている。「石破政権は選挙で負けて政権を投げ出し、減税を主張する野党が政権を握り大減税を実現する。だが、結局金(カネ)をばらまく(あるいは徴税という、面倒で嫌われる仕事を放棄する)こと以外は何もできない政権だから、社会は崩壊し、経済も崩壊する」という恐怖のシナリオが、選挙結果の開票直前には目の前に示されつつあった。
ところが、最終的な投票結果を見ると、自民党は最悪よりは少しだけましな結果だったし、自民党政権内でも新しい首相が選出され、混乱すると思われたのが、石破氏は、真意はともかく、辞任しないと宣言したため、もしかしたら、少なくとも8月あるいは9月の衆議院が開会されるまでは、大混乱は先送りされるかもしれない、という一時しのぎの希望が出てきた。
■日本にとって、起きたことは悪いことばかり
この2つの要素が相まって、日本株は、今回、世界株をはるかに上回る暴騰をした。しかし、そんな馬鹿な、である。
日本にとって、なんのいいことが起きたのか。何もない。起きたことは、悪いことばかりだ。
まずトランプ関税。トランプ大統領就任前と比べれば、単に、すべての対米輸出に15%関税がかかるようになった、ということだ。最悪だ。大雑把に言えば、対米輸出から得られている利益の半分が吹き飛んでもおかしくない。いや、トヨタ自動車のレクサスなどは、もともと利益率が高いからそれで済むが、部品メーカー、いやそのほかの雑多な輸出品、さらには日本酒なども利益が吹き飛んでもおかしくないだろう。
一方で、対価として、日本はアメリカに投資の名目で80兆円の金を差し出すのである。輸出を締め出され、その見返りに80兆円巻き上げられる。これで、なぜ株価が上がるのか。そもそも、そんなアメリカをなぜ日本政府は許すのか。日本国民はオーバーツーリズムの外国人よりもトランプ大統領や、彼を支持する約半分のアメリカ人を恨み、攻撃すべきではないのか。
株価が上がった理由は、いつまでも決着がつかないのが最悪だ、15%かけられてもどうなるかわからないよりましだ、これで対策が立てられ、動き始めることができる。不透明性、不確実性が最悪だ。確かにそうかもしれない。
「いや、当初は25%だった。15%に下げられたのだから、最悪の予測から改善した。だからプラスだ」という人もいる。しかし、25%と言われたときは、「いや、トランプ大統領は『TACO』(トランプ大統領はいつもビビってやめる)であり、言っているだけで、結局何もできやしない」ということで、25%が打ち出されたときは、25%を無視していたのではなかったか。
結局、「どうせ何もできない」どころか、ほぼすべてのものに15%をかけてきたのである。それも、日本人がそれを大喜びで、「そのくらいならいくらでも払います!」という洗脳にまで成功したのだ。
そのうえで、80兆円巻き上げる。アメリカ政府が指定するものに投資させられ、かつ9割はアメリカのものだと。つまり、80兆円の9割、72兆円は、ただくれてやるのと同じである。額面どおりではないにしても、投資はもともと自由にできるのに、アメリカに干渉されて投資を行う。これのどこが、日本経済にプラスなのか?
■洗脳から覚めたときの反動はとてつもなく大きい
トランプ大統領がめちゃくちゃすぎて、投資家もエコノミストも官僚も人々も、感覚がマヒしてしまっているのだ。洗脳されてしまったのである。しかし、それは洗脳だから、いつかは覚める。そのときの反動はとてつもなく大きいだろう。
世界経済にとっても、アメリカ経済にとってもマイナスである。関税で守るということは、アメリカの生産性の改善は止まる。努力はしない。競争力はさらに落ちていくだろう。アメリカの製造業は、これでとことん終わる。消費者も、結局購買を控えるようになるだろう。しかし、世界にとってはもっと悪い影響がある。
確かに、アメリカの目的は、関税で税収を得て、所得税・法人税減税をするだけかもしれない。しかし、所得税・法人税は、それにより、労働量を減らすとか、企業が活動を控えるとか、そういう効果はない。理論的にはあり得ても、現実は、そういう人はいないし、企業は活動の場所を、国境をまたいで変えるだけだ。だから、世界にとってプラスはない。
しかし、関税というのは、価格そのものを変える。市場経済においてもっとも重要な価格メカニズムによる資源の効率配分機能を直接的に阻害する。だから、税制の中でもっとも経済にマイナスのものなのだ。したがって、世界経済はなにがあっても悪化する。
このように、トランプ関税がいかに日本経済、世界経済、そしてアメリカ経済にとってすら悪い、ということは「トランプの妖術」から覚めれば、誰もがすぐにわかることだろう。
一方、日本政治や日本社会の崩壊にはもう少し解説が必要であろう。参政党は、なぜ躍進したのか。それは、とらえどころのない不満をぶつけ、退屈しのぎになる「革命ごっこエンターテインメント」を与えたからである。
■「革命ごっこエンターテインメント」の問題点とは何か
ある人は「パンとサーカスの、サーカスを提供した」と言う。確かに少し似ているが、もっと本質的に危険なおもちゃを人々に与えたのである。サーカスであれば、既存政党、ぱっとしない古臭いやつら、かつ政治という権力を握っているやつら、彼らをやっつける見世物を提供したということにすぎない。しかし、今回のイベントは、見世物ではなく、つまり、見るだけではなく、自らの手で、壊す、破壊する、それを自ら感じることができる快楽を提供したのである。
外国人が悪い、というののしり、悪口で憂さ晴らしをするのではなく、日本社会、日本政治の秩序を壊す、破壊するという暴力的な快楽を味あわせる、その破壊活動に参加する機会を提供したのである。しかも、その破壊は、罪悪感がまったく生じず、それどころか、世の中の諸悪の根源を破壊するという正義感をも与えたのである。
しかし、もちろん、革命というのは本来そういうものである。歴史上のほとんどすべての革命、成功した革命、失敗した革命、未遂に終わった革命、いずれもが、この要素を部分的にもっていたであろう。だから、今回の革命ごっこは、本当の革命になる可能性は論理的にはある。だから、この革命ごっこを否定的にとらえているのは、私の個人的な判断にすぎない。
したがって、これこそ、真の革命につながると思っている人々もいるだろう。しかし、例えば、フランス革命と異なるのは、フランス革命には、自由、平等、博愛という理念があり、民主主義を実現するという使命があり、かつそれを実現する政治体制に対する具体的な理論があった。ただ、壊すだけでなく、壊した後に据えるものを明確に持っており、それを実現する力も持っていたのである。
参政党は、憲法草案を提示したが、これは、真の革命であるイメージを与えるための戦術であろう。ここでいちばんの問題は、その中身の是非ではない。参政党の支持者を熱狂させているのが、憲法草案に書かれた中身にあるのではなく、憲法草案を作った、提示した、というその行為(ごっこ)が存在することにあるのである。だから、中身の巧拙、是非はどうでもいいのだ。
そして、重要なのは、参政党の是非を議論することではない。問題は、持続しないであろうという見通しである。
私は、参政党躍進の原動力は、「自分が投票したことによって、世の中に影響を与えた、ネットの中だけでない、リアルの世界に影響を与えた、壊した、それを自分(自分たち、というよりも結局自分。結局はみな孤独な自分の集まりであるからだ。そして、革命というのも、ほとんどの参加者にとってはそういうものだ)がやったんだ」という感覚、手ごたえである。
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