( 311146 ) 2025/07/28 03:00:31 0 00 笠佐島の一部を複数の中国人が買収。電信柱も建って通電開始、生活環境が進む
中国資本による日本国内の不動産買収が止まらない。瀬戸内海では笠佐島(山口県)の一部を中国人が取得した。別荘目的で、林道(町道)を整備、電柱が敷設され生活環境が整いつつある。土地見学に来島する中国人の姿もみられ「島全体が中国人に買い占められるのではないか」と不安を口にする島民もいる。中国人の瀬戸内海への関心は高く、広島市沖の離島でも不動産を買い求めるケースが増えているという。
笠佐島は周防大島の小松港から西へ約2キロ離れた瀬戸内海に浮かぶ。県のホームページ(HP)によると、広さ94万平方メートルで島民は5世帯7人。小松港から1日3~4往復する連絡船が本土との唯一のパイプだ。
5月初め、島の船着き場から東西に走る林道を歩いて島の反対側に向かった。林道は整備され、歩くのが苦にならない。真新しい電柱が並ぶ。米軍岩国基地の航空機の飛行航路に当たり頭上で時折爆音が響く。上り下りを繰り返し約45分。森林を抜けると木々が伐採された空間が広がる。中国人が購入した土地で電柱が2本確認でき、工事用重機が放置されていた。
登記簿などによると購入された土地は2筆で計3651平方メートル。仲介した山口県周防大島町の不動産業者によるとHPに掲載した「分譲」情報を見た中国人男性から問い合わせがあったという。
■中国人購入土地、海自基地に近く
業者は何度も男性が暮らす中国の上海市に渡り商談を重ねたとする。男性は上海で3つの日本企業に勤めた経験のある親日家。「別荘を建てたいと言うので『問題はない』と判断し売却した」と業者は説明する。
土地は平成29年11月~30年8月、男性と妻、その知人の計3人の中国人の手に渡った。購入された土地は瀬戸内海に面し正面に「野島」、左側に周防大島が迫る。クルーザーや連絡船を係留するためか、中国人所有者は「桟橋を建設したい」と話していたという。
島民によると、船さえあれば、瀬戸内海を自由に動き回れ、潜水艦や護衛艦を間近に見学できる海上自衛隊呉基地や旧陸軍砲台跡などがある江田島、松山市まで、いずれも片道1時間~1時間半で行き来できるという。
■中国人、瀬戸内海に関心
中国人夫婦らに別荘用地の売買を仲介した業者によると、笠佐島の人気は高く、東京都や埼玉県に住む中国人から高額での購入の問い合わせがあるほか、中国の大連などからの視察もあるという。笠佐島と周防大島を結ぶ連絡船の船長によると、筆者が島を訪ねた日、都内の中国人家族4人が高級車で乗り付け、連絡船で島に渡って、4時間、島内を散策していた。
この不動産業者は、笠佐島の7割に上る土地を所有しているといい「いずれは企業誘致を狙ってまとまった土地を売りたい。問題がないなら中国資本でも構わない。弁護士に相談すると、『法律上は問題はない』と言われている」と積極的な姿勢を見せていた。ただ中国資本への不動産買収の是非を問う声が強くなってきたため、7月ごろから中国資本への仲介は差し控えているともいう。
瀬戸内海に関心のある中国人は多いようで、この業者は、周防大島や広島市の沖合の離島でも多くの中国人が別荘用に分譲地を購入しているケースが増えているとし「中国本土に住む中国人がインターネットなどで物件を見つけ、東京や大阪などで中国人が経営する不動産業者に仲介を頼むようだ。うちも1年ほど前から東京や大阪の中国系不動産業者から問い合わせが入るようになった」と証言した。
■安全保障上、重要な島
日本は平成6(1994)年、GATSと呼ばれる、世界貿易機関(WTO)の「サービスの貿易に関する協定」に署名する際、外国人の不動産取得について、日本人と平等に扱うとした。
WTOに加盟する国・地域の大多数は、住宅購入禁止や投資目的での販売禁止、課税など、外国人の不動産取得に条件を設けており、日本の対応は突出している。このため、笠佐島の中国人への売買は法的には問題はないとみられるが、懸念は尽きない。
瀬戸内海は多くの船舶が行き交う交通の要衝で自衛隊や在日米軍の基地もある。海上自衛隊呉基地からは潜水艦や護衛艦が発着する。その瀬戸内海に浮かぶ笠佐島は、安全保障上も重要な島といえる。
中国には、有事の際に国内外問わず、同胞が所有する土地や施設を政府が徴収できる国防動員法や情報工作活動に協力義務を課す国家情報法がある。有事の際に島が「利用」される可能性は否定できない。
■「中国人の島になりかねない」
政府は令和4年、「重要土地等調査法」を全面施行させ、安全保障上重要だと判断した自衛隊基地や原子力施設といった重要施設周辺や国境離島での土地建物の利用状況、持ち主を調査できるようにした。
しかし調査対象の「周辺」は約1キロ圏内にとどまり、法の名の通り、日本政府は「調べる」のが主体で何ら実行力を伴うものではない。いわゆる「ザル法」だとされ、日本の土地は中国人らの手に無条件で渡っていく。
長年外国資本の不動産買収を調査している山口県岩国市議の石本崇氏は笠佐島の現状をこう警戒する。「小さな船さえあれば自由に瀬戸内海を動き回れる。その島が今のままではいずれ中国人の島になりかねない。ドローンの基地にもなり得るし、広島沖など瀬戸内海の島が面として買われるようになると、もはや中国に実質侵略されているようなものだ」(編集委員 宮本雅史)
|
![]() |