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ヴィレッジヴァンガード(ヴィレヴァン)は、かつて「遊べる本屋」として人気を集め、ピーク時には400店舗を超える規模に成長していた。

しかし、2010年代中頃から赤字が続き、営業損失が膨らむ中で、多くの店舗が閉店に追い込まれる危機に直面している。

その原因には、競争の激化や若者文化の変化が影響しており、特にSNSの普及が実店舗の流行発信地としての機能を低下させたことが指摘されている。

現在、ヴィレヴァンは実店舗への依存を減らし、オンライン事業の強化を図ることで再起を目指している。

(要約)

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商品の陳列がユニークなヴィレッジヴァンガード(写真:ロイター/アフロ) 

 

 かつて「遊べる本屋」として注目を浴び、サブカルのシンボルと言われたヴィレッジヴァンガード(以下ヴィレヴァン)が、岐路に立たされている。若者文化の一角を築いたこの企業はなぜ迷走してしまったのだろうか。 

 

■ピーク時には400店舗超も 

 

 ヴィレヴァンは1986年、ニューヨークの老舗ジャズクラブの名前をとって、愛知県名古屋市郊外に1号店をオープンした。 

 

 書店でありながら、書籍に限らずCDや雑貨、Tシャツに食品などが雑多に並べられた、カオスな空間演出が特徴だった。 

 

 独自の手書きPOPで紹介された商品の陳列は各店舗の店長に委ねられており、店舗によって雰囲気も違う。 

 

 こうした、よくわからないけど面白い「変わった感性」が、1980年代以降のサブカルブーム期の若年層にフィットし、尖った流行の発信地として「サブカルの隠れ家」的な一種のカルチャーアイコンとなった。 

 

 これらの好況もあってヴィレヴァンは2000年代には全国展開を加速し、ピーク時には400店舗を超える規模へと成長していく。 

 

 しかし2010年代中頃からは赤字が続き、2025年5月期の通期連結決算では営業損失が9億3500万円、当期純損失は42億4700万円と、2期連続で最終赤字を計上。全国およそ4分の1となる、293店舗中81店舗が「業績回復困難」で閉店の可否を判断されるまでに、苦戦を強いられてしまう。 

 

 その理由はなぜか。 

 

 まず、ヴィレヴァンは2003年の株式上場以降、店舗の全国拡大をするなかで、属人性の強い店作りに対応できる人材育成が間に合わなかった、という指摘が多くなされている。 

 

 加えてショッピングモールなどファミリー層にも対応する店作りをしなくてはならず、かつての尖った品揃えがしづらくなったことも一因だ。 

 

 そして、サブカルブームが拡大を続けたことで、映画や漫画、アニメやアイドルなどの趣味が「変わった」ものではなく、ごく「普通」のものになってしまい「ヴィレヴァンらしい」ものが、普通のものになってしまったという皮肉な時代変化が起こった。 

 

 また、長くターゲットとしてきた若年層の流行発信地は、実店舗からSNSなどのネットに移り、その「バズる」情報の移ろいも飛躍的にスピードアップしてしまった。 

 

 そのうえ、ドン・キホーテが「コスメドンキ」や「キラキラドンキ」などの店舗を展開するなど、「変わった感性」の店が増え、競争が激しくなってきている。 

 

 このようなさまざまな要因が、ヴィレヴァンを苦境に立たせてしまったのである。 

 

 ヴィレヴァンは先の通期連結決算発表において、今後の対応策として実店舗への依存を減らし、期間限定で店舗を開設するポップアップ事業と、ECショップなどのオンライン事業を強化するとしている。 

 

 外部イベントへの出店を活発化させ、後れをとったEC市場に対応し、売上高約18億円規模に拡大させる見通しだ。 

 

 サブカルの隠れ家、尖った流行の発信地だったヴィレヴァンは再起を果たせるのか、注目が集まる。 

 

 

 
 

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