( 311619 )  2025/07/29 06:56:55  
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参院選の結果を受けて、臨時国会でガソリン税の暫定税率廃止が検討されているが、日本の自動車税制は依然として重税構造となっている。

具体的には、ガソリンには揮発油税や消費税などが二重課税で課され、自動車を持つことに対する税金が多重に存在する。

これにより、自動車ユーザーは高い負担を強いられている。

海外と比較しても、日本の税制は複雑かつ高負担であり、シンプルな見直しが求められている。

 

 

自動車関連税の改革が必要とされており、特に環境性能割と自動車重量税の見直しが焦点となっている。

カテゴリー別に税制を一本化し、透明性を高めることが提案されている。

さらに、走行距離課税の導入も議論されているが、特に地方部においては大きな負担を伴う可能性が指摘されている。

また、EVの普及が進む中で、補助金制度の見直しも必要であり、国内企業の競争力を高めるための規制緩和が求められている。

 

 

全体として、ガソリン税の廃止が近づく中、日本の自動車税制をどのように見直していくのかが今後の重要な課題となる。

(要約)

( 311621 )  2025/07/29 06:56:55  
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 参院選の結果を受けて、8月1日召集が見込まれる臨時国会で、25.1円のガソリン税暫定税率廃止法案が成立する可能性が高くなった。しかし、まだまだ日本の自動車税制は依然として世界でも有数の重税構造となっている。そこで、ガソリン暫定税率の次に下げるべき、日本の自動車税制を取りあげてみたい。 

 

文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(トビラ写真:ELUTAS@Adobe Stock) 

 

 近年、ガソリン価格の高騰や生活コストの上昇が続くなか、自動車ユーザーにとって「税金」は最も大きな負担の一つだ。 

 

 ガソリン税の暫定税率を巡っては、先の通常国会で立憲民主党、国民民主党、共産党、参政党、日本維新の党、日本保守党、社民党の野党7党が廃止に向けた法案を共同提出し、野党が多数を占める衆院で可決されたものの、当時与党が過半数を維持していた参院では廃案となった。 

 

 しかし、今回の参院選で与党の大敗を受けて、8月1日から招集される見込みの臨時国会で協議され、ガソリン暫定税率廃止が決まる可能性が高い。 

 

 25.1円/Lという特別上乗せ分が撤廃されるが、クルマの税金のなかには、実質的に同じ対象に課せられる税金が複数存在しており、いわゆる「二重課税」「三重課税」が構造的に放置されている。 

 

 たとえば、 

・ガソリンには「揮発油税」と「地方揮発油税」が課されている 

・その上に「消費税」がかかる(二重課税) 

・クルマ本体に「自動車税」「重量税」「環境性能割(旧自動車取得税の代替)」などが上乗せ 

 

 これらすべてが「自動車を所有・利用すること」に課されているのだ。環境負荷への配慮という名目があるとはいえ、日常生活にクルマが不可欠な地方在住者などにとっては実質的な「生活必需品への課税」に等しい。 

 

 日本の自動車ユーザーは、世界でも稀に見る"重税構造"の下でクルマを所有している。自動車を購入した瞬間から、環境性能割(取得時課税)、自動車税・軽自動車税(保有時課税)、自動車重量税、ガソリン税・軽油引取税(走行時課税)など、取得・保有・走行のすべてで課税される9種類の税金を負担しているのだ。国土交通省によれば、その総額は年間約9兆円に達し、国の租税収入の約8%を占めている。 

 

 一方で、欧州の主要国ではよりシンプル。ドイツはCO2排出量と重量に基づく単純な課税体系を採用し、フランスはEVなど環境性能の高いクルマには補助金、排出量の多いクルマには追加課税という"ボーナス・マルス"方式で誘導している。アメリカは州ごとの登録料とガソリン税が中心で、購入や保有時の課税は限定的だ。 

 

 つまり日本は国際比較でも「複雑かつ高負担」な自動車税制の代表格。こうした現状を踏まえ、ユーザー負担の軽減と制度の簡素化が強く求められているのだ。 

 

 

 日本自動車工業会(JAMA)や各政党は、次期税制改正に向けてそれぞれの方針を打ち出している。とくに注目したいのは、ガソリン暫定税率の廃止の次に改正すべきは、環境性能割・自動車重量税の見直しだ。 

 

 現行制度では、クルマを購入する際に「消費税10%」に加え、実質、旧自動車取得税の代替となる環境性能に応じた「環境性能割(0〜最大3%/軽自動車は最大2%」が課されている。 

 

 JAMA(片山正則会長)は、この二重課税構造を改善し、取得時の税を「消費税」に一本化する改革を求めている。これにより、購入時の負担がわかりやすくなり、需要喚起にもつながると主張している。 

 

 現在、保有時の自動車関連税は「排気量ベース」の自動車税・軽自動車税と、「重量ベース」の自動車重量税に分かれており、異なる課税根拠で計算されている。 

 

 JAMAはこの保有時の課税方式を「車両重量を共通基準」とした一本化を提案。加えて、電動化の進展に合わせて「環境性能に応じた軽減・増税ロジック」を導入すべきと要望している 

 

 取得時課税を消費税一本化した場合、新車購入時の負担が平均3〜5%軽減され、新車販売台数が年間5〜8%増加する可能性がある。 

 

 保有時課税を重量基準に一本化した場合、EVやPHEVなどの重量増加車に対する負担が増える一方、従来型小型車や軽自動車の一部では負担減が見込まれる。 

 

 総税収は現行比で概ね横ばい〜微減となるが、販売増による消費税収の増加で一部が補填される可能性がある。市場への影響としては、EVやPHEVの価格競争力低下を防ぐため、補助金制度との連動調整が重要になる。 

 

 現時点での立場を整理すると以下のようになる。 

 

 ■ガソリン暫定税率 

・JAMA:廃止を強く要望 

・自民・公明:大綱で「協議」とし廃止方向 

・立憲・国民:廃止+国による地方補填を明記 

・維新:全面廃止 

・れいわ新選組:ガソリン税ゼロ 

・共産党:削減・廃止方向 

・参政党:明確化なし(減税志向) 

■環境性能割(取得時課税) 

・JAMA/自民・公明/立憲・国民:廃止+消費税一本化で一致 

・維新・れいわ新選組・共産:軽減・廃止方向を支持 

■自動車重量税(保有課税) 

・JAMA:重量+環境性能課税に一本化、将来的な廃止視野 

・自民・公明/立憲・国民:重量+環境性能評価へ移行 

・維新・れいわ新選組・共産:負担軽減の方向 

■走行距離課税 

・JAMA/与党:受益と負担の公平化の観点で検討余地あり 

・立憲・国民:強く反対。地方負担・物流影響を懸念 

・維新・れいわ新選組・共産:明確な言及なし 

 

 ガソリン暫定税率の廃止は与野党で大筋合意。次は環境性能割と重量税の再設計が焦点となる。 

 

 

 走行距離課税は公平性の観点から注目されているが、負担額は決して小さくない。とりわけ地方部の住民や物流業界にとって、長距離移動は生活や業務の基盤であり、課税はそのまま生活コストや物流コストの上昇に直結する。 

 

 また、この制度は燃費性能の低いクルマや大型車ほど負担が大きくなるため、古いクルマを手放せない低所得層に不利に働く懸念も指摘されている。 

 

 さらに、運送業界からは「コストが宅配料金や物価に転嫁される」との警戒も強い。負担の公平性を担保するためには、低所得者や過疎地利用者への軽減策が不可欠である。 

 

 国交省検討値や欧州モデルを参考に1km3〜5円で試算すると、 

・都市部自家用車(年1万km):3万〜5万円/年増 

・地方自家用車(年2万km):6万〜10万円/年増 

・小型商用車(年5万km):15万〜25万円/年増 

・大型トラック(年10万km):30万〜50万円/年増 

 

 地方居住者や物流業界に大きな負担増。宅配便1個あたり数円〜十数円の値上げ要因となる可能性もあるので走行距離課税は非現実的である。 

 

 今後、EVの普及によってガソリン税収が急減するのは避けられない。仮にEV比率が50%に達した場合、ガソリン税収は2兆円以上減少するとの試算もある。 

 

■新車販売台数における主要国のBEV、PHEV普及率(2024年) 

・ノルウェー:92% 

・スウェーデン:58% 

・ドイツ:19% 

・フランス:24% 

・イタリア:28% 

・アメリカ:10% 

・中国:48% 

・韓国:9.2% 

・日本:2.8% 

 

 こうした状況に対応するため、重量・環境性能・走行距離・CO2排出量といった多角的な要素を組み合わせた新たな課税モデルが求められる。欧州ではCO2課税が一般化しつつあり、日本でも利用実態や排出量に応じた柔軟な制度が必要だ。 

 

 加えて、EV普及初期段階では購入補助金や優遇策を維持しつつ、中長期的には公平な課税体系への移行を進める「2段階方式」が現実的な答えとなるだろう。 

 

■現状の税収 

・ガソリン税:約4.5兆円/年 

・自動車重量税・取得税等:約1.2兆円/年 

 

■再設計3案 

1:重量+環境性能課税型(JAMA提案) 

取得税廃止、重量課税+環境性能評価へ 

2:走行距離課税併用型(与党案) 

距離課税1km3〜5円導入、税収安定 

3:CO2課税型(欧州型) 

排出量1トンあたり3000〜5000円課税、EV・低炭素車優遇 

 

 

 近年、国内市場でも価格の安さを武器にした中国製の電気自動車(BEV)が流入し、今後、急増しそうな勢いだ。この「CEV補助金」は日本の税金。2025年度の国による"基本の補助額"の上限はEV(普通車)の場合は85万円、小型・軽EVの場合は55万円。ただし、昨年度と異なり、2025年度は基本の補助額に"加算措置"としてEV(普通車)の場合最大5万円、小型・軽EVの場合最大3万円が上乗せされている。 

 

 日本車以外の輸入車のBEVにも支給されているのはいかがなものかという声も聞こえてくる。アメリカでは2022年に成立した「インフレ抑制法(IRA)」により、EV補助金の支給対象が「アメリカ国内で製造された車両」「アメリカ製バッテリー」など厳格な条件に限定された。 

 

 その結果、中国製BEVや中国資本によるバッテリー供給を受けた車種は、補助対象から除外されている。これにより、米国は自国のEV産業と雇用を守る政策を明確にしている。 

 

 これに対し日本では、製造国や資本関係にかかわらず、一定の性能・環境基準を満たせば補助金が支給されてしまう。そのため、国内メーカーより安価に輸入された海外製BEVが補助金によってさらに割安となり、日本車との価格差が拡大するという"逆転現象"が起きている。 

 

 本来、税金による補助制度は、産業育成や地域雇用の維持、技術開発の後押しといった「社会的便益」を伴うべきだ。現行制度のままでは、日本メーカーのBEV開発意欲に冷や水を浴びせかねない。今こそ、補助対象に関する明確な基準見直しが求められる。 

 

 具体的には、以下のような要素を補助対象要件に加えることが現実的だ。 

 

・国内組立または一定割合以上の国内部品比率 

・アフターサービス体制の国内整備拠点の有無 

・バッテリーの調達先やリサイクル体制の透明性 

・国内雇用への寄与度 

 

 こうした基準を導入することで、日本のEV産業とユーザーの安心を両立し、国内メーカーの技術革新と市場競争力の強化につなげることができるはずだ。 

 

 

 
 

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