( 313851 )  2025/08/06 06:45:47  
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日本では物価高や老後不安が広がっている一方で、富裕層の増加が顕著です。

最近の調査によると、金融資産1億円以上を持つ世帯は全体の約2.75%(約153万5000世帯)に過ぎないものの、全体の資産の約26.1%を占めています。

また、富裕層および超富裕層の世帯数と資産額は増加傾向にあり、資産形成の背景には株価上昇や不動産価格の上昇、制度改革などが影響しています。

一方で、多くの世帯では貯蓄額が低く、老後への備えに不安が残る状況です。

このような中で、資産形成に対するアプローチの違いが明確になっています。

自分に合った資産形成方法を見つけることが重要です。

(要約)

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elbud/Shutterstock.com 

 

物価高や老後不安が叫ばれる一方で、日本国内の富裕層は年々増加しています。 

 

最新の調査によると、金融資産1億円以上を保有する世帯が全体の数%にすぎないにもかかわらず、日本全体の資産の4分の1を占めるまでになっています。 

 

こうした格差の広がりに注目が集まるなか、富裕層とはどのような人々なのか、そしてどのようにして資産を築いてきたのでしょうか。 

 

本記事では、野村総合研究所や金融経済教育推進機構の調査データをもとに、富裕層の定義や世帯数の推移、年代別の貯蓄実態などを詳しく解説します。 

 

資産形成を考えるうえで、富裕層の動向から学べるヒントがあるかもしれません。 

 

※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。 

 

野村総合研究所は、世帯として保有する金融資産の合計額から不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いた「純金融資産保有額」もとに、総世帯を以下の5つの階層に分類しています。 

 

 ・マス層:3000万円未満 

 ・アッパーマス層:3000万円以上5000万円未満 

 ・準富裕層:5000万円以上1億円未満 

 ・富裕層:1億円以上5億円未満 

 ・超富裕層:5億円以上 

野村総合研究所の定義によれば、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の世帯を「富裕層」としています。 

 

●日本の富裕層は全体の約2.75%、超富裕層は約0.21% 

野村総合研究所が2025年2月に公表した調査によれば、2023年時点で日本における富裕層(純金融資産1億円以上5億円未満の世帯)は約153万5000世帯で、全世帯の約2.75%を占めています。 

 

さらに、純金融資産5億円以上を保有する「超富裕層」は約11万8000世帯と推計され、富裕層と合わせると計165万3000世帯となります。 

 

両者が保有する純金融資産の合計は、推計で約469兆円に達しており、日本全体の純金融資産(約1795兆円)のうち、26.1%を占める水準です。 

 

つまり、全体のわずか3%程度の世帯が、日本の金融資産の約4分の1を保有している計算となります。 

 

●富裕層・超富裕層は増加傾向に 

2005年から2023年までの推計結果を見ると、富裕層・超富裕層の世帯数および純金融資産額は、2013年から一貫して増加傾向にあります。 

 

富裕層および超富裕層の総資産額の推移は、以下のとおりです。 

 

 ・2005年:86万5000世帯・213兆円 

 ・2007年:90万3000世帯・254兆円 

 ・2009年:84万5000世帯・195兆円 

 ・2011年:81万世帯・188兆円 

 ・2013年:100万7000世帯・241兆円 

 ・2015年:121万7000世帯・272兆円 

 ・2017年:126万7000世帯・299兆円 

 ・2019年:132万7000世帯・333兆円 

 ・2021年:148万5000世帯・364兆円 

 ・2023年:165万3000世帯・469兆円 

日本の富裕層が増加している背景には、株価上昇や円安、不動産価格の上昇といった資産価値の拡大が大きく影響しています。 

 

特に、リスク資産を多く保有する層は、アベノミクス以降の株高や外貨建て資産の円換算価値上昇で資産を大きく伸ばしました。 

 

加えて、相続や贈与による資産の世代交代、NISA・iDeCoなどの制度改革も資産形成を後押し。都市部の不動産高騰も資産評価を押し上げ、富裕層増加の一因となっています。 

 

 

金融経済教育推進機構(J-FLEC)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」から、貯蓄額の平均値と中央値を年代別に見ていきます。 

 

●【単身世帯】貯蓄額の平均値と中央値 

年代が上がるにつれて、貯蓄の平均額・中央値ともに増加する傾向があります。 

 

とはいえ、実態に近いのは「中央値」です。特に50歳代以下では中央値が100万円未満と低水準であり、老後に向けた備えとしてはやや不安が残る結果となっています。 

 

●【二人以上世帯】貯蓄額の平均値と中央値 

単身世帯に比べ、二人以上の世帯では貯蓄額の平均値・中央値ともに高めとなっています。 

 

ただし、平均値は一部の資産が多い世帯(アッパーマス層以上)に引き上げられている傾向があり、全体像を把握するうえでは中央値を重視することが大切です。 

 

60代以降は退職金などによって貯蓄が増えるケースもありますが、それでも中央値は1000万円未満にとどまっており、十分とは言い切れない状況です。 

 

日本における富裕層や超富裕層は、株式や不動産といったリスク資産を積極的に保有し、資産価値の上昇を背景にこの10年で着実に世帯数を増やしてきました。 

 

一方で、多くの世帯では貯蓄額の中央値が低水準にとどまっており、老後に備えるには不安が残る状況です。 

 

こうした対照的なデータから見えてくるのは、収入や貯蓄の差だけでなく「資産の持ち方・増やし方」の違いです。 

 

とはいえ、資産の築き方は人それぞれ。長期的な視点での資産形成や制度の活用、家計管理の在り方を見直すなど、自分に合った方法で、着実に備えていくことが大切です。 

 

 ・株式会社野村総合研究所「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計 | ニュースリリース | 野村総合研究所(NRI)」 

 ・金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」 

 

加藤 聖人 

 

 

 
 

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