( 314671 )  2025/08/09 06:05:57  
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日本の最低賃金問題が注目されており、全国平均が現在の1055円から1118円に引き上げられ、全都道府県の最低賃金が1000円を超える見込みです。

しかし、急激な引き上げが中小企業の経営を圧迫すると懸念されています。

中小企業経営支援協会や経営者たちは、特に地方や小規模企業にとって対応が難しい現状を指摘しています。

中には、賃上げを支援する制度が存在する一方で、申請が難しいことや、企業文化の改善が必要だという意見も出ています。

また、生産性の低い企業が淘汰されるべきだとの意見と、地域を支える企業の重要性が存在するため議論は多様です。

石川浩氏は、賃金アップは重要だが、政府の過度な介入は問題であると訴えています。

(要約)

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すべての都道府県で最低賃金1000円超えへ 

 

 今年度の「最低賃金」の議論がようやく決着。過去最大の上げ幅となる63円の引き上げとなった。この通りに引き上げられれば、現在の全国平均1055円から1118円にアップし、すべての都道府県で最低賃金が1000円を超えることになる。 

 

 この物価高の中で賃金が上がるのは喜ばしいことである一方、X(旧Twitter)であがる「最低賃金の引き上げは中小企業にとって苦しいだけ」「中小企業がどんどん潰れていくんじゃないかな?」といった声。価格転嫁を十分に進めることができない中小企業にとっては、急激な引き上げが経営を圧迫しかねないと不安視されているのだ。一方で、「賃上げできない企業は早く淘汰されるべき」という意見も。 

 

 急激な最低賃金引き上げによる副作用と企業のホンネについて、『ABEMA Prime』で議論した。 

 

2社を経営する石川浩氏 

 

 電線製造業ときのこ栽培のアグリカルチャーという2つの会社を経営する石川浩氏。前者は今年5月に賃上げしパート時給1150円、後者のパート時給は1078円できのこへの価格転嫁などでの賃上げを検討している。「農業分野はなかなか付加価値がつけづらく、価格が市場で決まるので、利益が非常に出しづらい」とした上で、「ここ数年の急激なアップによる経営へのダメージは非常に大きい。周りの同業者も相当厳しい状況が続いている」と語る。 

 

 石破政権は2020年代に全国平均「1500円」という目標を掲げているが、これを達成するには今後5年間、年7.3%のペースで上げる必要がある。石川氏は「正直、会社を潰そうとしているのではと。人口減で今の企業数を維持できないと思っている。『(最低賃金を)払えなければ退場を』と言った人もいるように、国もそういう考えがあるのではないか」と推測した。 

 

 日本商工会議所の3月発表によると、前述の政府目標について、地方・小規模企業の4社に1社が「対応不可能」と回答。2025年度に7.3%引き上げの場合、2割が「休廃業を検討」としている。 

 

 小規模企業経営支援協会代表理事の立石裕明氏は、「毎年7%の賃上げなんて、できるはずのない議論だ」としつつ、「日本は世界最大の中小企業・小規模事業者支援国家。それを踏まえた上で考えないと、“あれダメ・これダメ”だけを言ってはいけないと思う」との見方を示す。 

 

 実業家・タレント・インフルエンサーの宮崎麗果は、自身が経営する企業を引き合いにコメント。「20人以下の規模の会社を2社経営しているが、優秀な人材の取り合いになっている。うちはバイトに1700円ぐらい出していて、それぐらいの対価を出さないと良い人材は集まらない。最低賃金で2人雇うよりも、すごく優秀な人材を1人雇ったほうが、モチベーションは高いし、会社の利益も上がって雇用が増え、より社会に還元できると考えている」との考えを述べた。 

 

 

小規模企業経営支援協会代表理事の立石裕明氏 

 

 「実質的に倒産状態だが営業を継続している」「債務不履行状態が続いている」といった企業は“ゾンビ企業”と呼ばれ、全国に22.8万社存在、ゾンビ率は15.5%(2024年11月末時点)とされている。帝国データバンクの定義(国際決済銀行定義)では、設立10年以上で3年連続ICR(インタレスト・カバレッジ・レシオ)が1未満(入ってくるお金÷出ていくお金)となる。 

 

 そんな中、中小企業に対する支援は様々で、「補助金(ものづくり、持続化、IT導入など)」「金融支援資金繰り、マル経融資など」「税制優遇(賃上げ促進、事業承継など)」「事業承継支援(M&A、グループ化など)」「取引支援(下請法、フリーランス保護)」などがある。 

 

 一方で、宮崎は「支援制度は結構あるが、申請が大変で、審査も厳しい。そのために専門家を雇わなければいけないこともある。ただ、不正に給付金を受け取る悪徳な人もいるので、そこは精査した上で、頑張りたいのに頑張れない企業は淘汰されるべきではないのではないか」と投げかける。 

 

 これに立石氏は「経営者には、もっと経営者になってほしい。欧米だったら“自分で取りに行け”で、良い仕入れ先を向こうから教えてくれることなんかない。でも、日本はここまで支援したことで、なんなら“もらって当たり前”の企業も出てきている」と苦言を呈した。 

 

 また、日本の経営者は「最も数字に弱い」とも指摘。「例えば、利益がどれだけ取れているか、決算書をきちんと読めるのか。そこを変えたいと、中小企業政策審議会の中で入れたのが『経営者リテラシーの向上』。来春から銀行の融資制度も変わるので、そこに合わせてもうちょっと数字を見ようよと、推進する方向に行こうとしている。やはり収支の計算ができなければ淘汰されていく」とした。 

 

 ただ、「中小企業庁で政策議論を十数年する中で、『淘汰されればいい』という言葉は聞いたことがない」という。「それは単純に“自然淘汰”されるから。誰かの言葉に乗って言ってしまっているだけではないか」と指摘。さらに、人口減少社会では辞めた人が“次に行く職場”があるという認識が重要であり、「生産性が低いからダメなのではなく、地域社会を守っている企業も存在する」との認識を示した。 

 

 こうした議論を踏まえ、石川氏は「賃金を上げて従業員に還元していくことは、経営者として常に考えている。それを政府主導でやろうというのは、ある一定以上になると厳しいということは理解してもらいたい」と訴えた。(『ABEMA Prime』より) 

 

ABEMA TIMES編集部 

 

 

 
 

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