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長崎市で行われた平和祈念式典では、94年ぶりにロシアの代表が参加しました。

参加者の中には、戦争中の核兵器を持つ国の理解と平和への意義を求める声が上がる一方で、ロシアの参列を不快に思う被爆者もいました。

式典は、長崎市が国境や思想を超えて各国を招待する試みの一環として行われました。

出席した被爆者たちは、ロシアやイスラエルに対して原爆の実情を理解し、平和のための行動を呼びかけました。

(要約)

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長崎への原爆投下から80年となり、大雨の中、傘を差して原爆落下中心地碑に手を合わせる人たち=長崎市で2025年8月9日午前8時37分、北山夏帆撮影 

 

 長崎市の平和公園で9日あった平和祈念式典には、ウクライナ侵攻を続ける核保有国ロシアの代表が侵攻前の2021年以来4年ぶりに参列した。「来るからには、被爆の実相を知って帰ってほしい」「参列は腹立たしい」。式典に参列した被爆者は取材に複雑な心情を吐露した。 

 

 市は22年の式典から、ウクライナ侵攻を始めたロシアとそれを支援したベラルーシの招待を「不測の事態への懸念」を理由に見送ってきた。今年は、日本に公館などを置く157の国・地域全てに招待状を送るなどし、鈴木史朗市長は「恩讐(おんしゅう)、国境、思想信条の違いや分断を乗り越え、あらゆる国の代表に集まっていただきたい」と呼び掛けた。 

 

 式典会場を訪れた被爆2世で会社員の村里春美さん(60)=長崎市=は「ロシアの参列は意義がある。核兵器を持っている国こそ参列し、原爆の被害を学び、平和について考えるべきだ」と話した。 

 

 ストックホルム国際平和研究所によると、25年1月時点で世界には推計1万2241発の核弾頭があり、その9割をロシアと米国が占めている。長崎で1歳の時に被爆した埼玉県行田市の白浜紀子さん(81)も「ロシアの代表は式典に参列するだけでなく、原爆資料館を訪れ、被爆の実相、現実を知って帰ってほしい」と求めた。 

 

 一方で、長崎で被爆して両親と弟を失い、現在は東京で暮らす森田富美子さん(96)は式典に参列後、「ウクライナとの戦争も終わっていないのにロシアが式典に来るのは腹立たしい」と思いを打ち明けた。 

 

 長崎大大学院2年のアナスタシア・ストラシコさん(26)はロシアの侵攻後、ウクライナから長崎市に避難した。「毎日のようにウクライナを攻撃し、人々やその暮らしを傷つけているロシアが参列するのはおかしい。市としては、戦争や原爆の恐ろしさを伝え、平和につなげたいという考えだと思うが、ロシアにその思いが伝わるとは思えない」と話した。 

 

 今年の式典には、昨年招待を受けなかったイスラエルも参列した。長崎で1歳の時に被爆し、現在は東京で暮らす山下和宏さん(81)は式典参列後、「ロシアもイスラエルも含め、世界のリーダーたちは広島、長崎の訴えに向き合い、対話と行動で(平和への姿勢を)示してほしい」と求めた。 

 

【百田梨花、竹林静、田崎春菜、尾形有菜】 

 

 

 
 

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