( 315206 )  2025/08/11 05:15:40  
00

「ヴィレッジヴァンガード」(ヴィレヴァン)は、かつてはユニークな品揃えと独特の店作りで多くのファンを集めていましたが、現在は経営不振に直面しています。

2025年5月期の決算では、2期連続の赤字と81店舗閉店を発表。

ヴィレヴァンの主な顧客層である地方都市での競合店の増加や、活字離れ、デジタルコンテンツの台頭などが影響しています。

また、オンラインショップの競争も厳しく、店舗網の縮小とオンライン事業の強化を進めていますが、復活の兆しは見えません。

(要約)

( 315208 )  2025/08/11 05:15:41  
00

黄色いPOP、独特の陳列、見たこともないコアな漫画に誰が買うか分からないオモシロ雑貨――「ヴィレヴァン」はどうして不振に陥ってしまったのか。(写真:若杉優貴) 

 

 平成世代の青春を彩ってきた遊べる本屋「ヴィレッジヴァンガード」が危機的状況だ。 

 2025年5月期の決算では2期連続の最終赤字を計上。これを受けて全店舗の約3割に当たる81店舗を閉店させる方針を発表しており、最盛期に約400店舗あった店舗数は約200店舗ほどにまで半減してしまう。 

 

 日本を代表するサブカル文化の発信基地は、どうして経営不振から抜け出せなくなったのか――。 

 

 ヴィレッジヴァンガード(以下、ヴィレヴァン)は1986年に愛知県名古屋市郊外で生まれた。 

 

 キャッチフレーズは「遊べる本屋」で、書店でありながらヴィレヴァンがセレクトしたちょっとクセのある本やCD、さらには使い道の分からないオモシロ雑貨やキャラクターグッズ、珍しい輸入菓子などを幅広く取り揃え、一部の店内にはイベントステージも設置。店外にはガチャガチャがずらりと並ぶなど、ほかの書店とは一線を画した新鮮な店づくりが人気を集め、全国各地へと店舗網を拡大した。 

 

 1998年にはサブカルの街として知られる下北沢に東京1号店を出店。現在、1986年に開業した1号店(名古屋市天白区)とともにもう1つの「本店」を名乗っている「ヴィレッジヴァンガード渋谷本店」は渋谷センター街にあった渋谷宇田川店(ビル建て替えのため閉店)を2017年7月に移転開店させたもので、店内のステージでは毎日のようにアイドルをはじめとしたさまざまなアーティストやクリエイター、作家たちのイベントが開催されている。 

 

 このように大都市にはメディアに登場する機会も多い華やかな旗艦店がある一方、現在(2025年)ヴィレヴァンは国内47都道府県のすべてに出店しており、店舗の半分以上は「イオン」や「ゆめタウン」などといった地方のショッピングセンター内。実は「ヴィレヴァンの主戦場は地方都市」なのだ。 

 

 それでは、ヴィレヴァンが不振から抜け出せないのはどうしてか。 

 

 ヴィレッジヴァンガードといえば(タテマエは)本やCDがメインのお店。支払いには図書カードや図書券も使うことができる。それゆえ「活字離れ」や「CD売上の減少」、さらには「電子書籍や音楽配信の普及」も大きな影響を及ぼしているであろうが、一方で明確に「買いたい本やCDがある」という人は真っ先にヴィレヴァンへと足を運ぶことはあまりないだろう。 

 

 ヴィレヴァンにとってそれ以上に痛手だったといえるのが、主戦場である地方での「競合店の増加」だ。 

 

 ヴィレヴァンといえば個性的な黄色いPOPに、何とも形容しがたい独特の陳列と独特の品揃え(※店舗による)が特徴。ヴィレヴァンファンは「そんな店なんて他にはない唯一無二だ!」と思うかもしれないが、果たしてその「商品」についてはどうだろうか。 

 

 

 かつて「ヴィレヴァンっぽい商品」を売る店は、もちろん都市部にはいくつもあったものの、ヴィレヴァンの主戦場である地方都市にはそれほど多くはなかった。 

 

 だが、考えてみて欲しい。令和となったいま、リアル店舗で買い物をする場合、「友達にオモシロ雑貨をプレゼントしたい」ならばディスカウントストアの「ドン・キホーテ」を、「推し(2次元)の新グッズを手に触れてチェックする」ならば漫画・アニメ専門店の「アニメイト」を、「未知の海外菓子に出会う」ならば輸入食品店「カルディコーヒーファーム」を真っ先に連想する人が少なくないだろう。これら3社はかつて地方都市では店舗が少なかったのだが、いずれも2015年から2025年にかけて「47都道府県すべてへの出店」を達成。ヴィレヴァンの主戦場である地方でも、ヴィレヴァンの影響力は相対的に大きく下がっているといえよう。 

 

 また、ヴィレヴァンの多くの店頭には「何かと回したくなってしまうガチャガチャ」がずらりと並んでいる光景もおなじみだが、今やそのガチャガチャさえも「かつて商業施設の空きスペースなどにひっそりと置かれていた」ような存在から、大型の「ガチャガチャ専門店」がすべての都道府県に出店するほどに。なかには「ヴィレヴァンの隣にガチャガチャ専門店がある」というショッピングセンターすらある。 

 

 地方においても、オンラインのみならず実際に手に取って選べるリアル店舗の選択肢が増えたいま、「確かに最近ヴィレヴァンで買い物しなくなったなぁ…」という読者も多いのではないだろうか。 

 

 もちろん消費者にとって選択肢が増えたことは嬉しいのだが、もはや「ヴィレヴァンが地方唯一のサブカル文化の発信基地」であった時代は終わりを迎えつつあるのかも知れない。 

 

 ヴィレヴァンは赤字が続くなか、反転攻勢策の1つとして「実店舗網を縮小しつつオンラインショップ事業を強化すること」を掲げている。 

 

しかし、オンラインショップこそリアル店舗以上に競合が激しい分野だ。言うまでもなくオンライン上ではヴィレヴァンならではともいえる「遊べる本屋」の魅力を存分に感じることができるとはいいがたく、ヴィレヴァンはさらなる荒波へと船を進めることとなる。 

 

 果たして、われらの青春を支えた「ヴィレヴァン復活」の日は来るのだろうか。 

 

【参考】 

菊地敬一(2005):「ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を」新風舎. 

 

【若杉優貴(都市商業研究所)】 

『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitter:@toshouken 

 

日刊SPA! 

 

 

 
 

IMAGE