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日本の不動産市場は、世界的なインフレや建設費の高騰、外国人投資家による購入ラッシュなどにより価格が高騰しています。

特に、中国の富裕層が日本の不動産に注目し、多くのマンションを購入してきました。

これは、日本の不動産が完全な所有権を提供することや、経済の安定性が背景にあります。

しかし、長期的な金融緩和や円安により、一時的な価格高騰がもたらされました。

これからは金利上昇の影響が本格化し、期待される賃料収入が上がらない場合、市場価格の下落が懸念されます。

そもそも、現在の価格形成が外国人投資による歪みであることも指摘されており、バブル崩壊のリスクが高まっています。

 

 

(要約)

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中国人などの買いあさりによって価格高騰が続いてきた日本の不動産市場。しかし、それも次第に限界が近づいてきているようです(写真:FUTAYAKU Camera Works/PIXTA) 

 

世界的なインフレ、建設費の高騰、外国人投資家のマネー流入。さまざまな要因によって、近年、日本の不動産価格は高騰を続けています。その中でも、話題になることが多いのは、外国人投資家による日本の不動産購入。彼らは、なぜ日本の不動産に目をつけるのでしょうか?  そして今後の不動産マーケットはどうなっていくのでしょうか?  『不動産の教室 富裕層の視点が身につく25問』(大和書房)から一部を抜粋・編集して紹介します。 

 

前編:新築マンションの「4戸に1戸」がタワマン、それでも供給が止まらないデベロッパーの懐事情 

中編:林立はもはや東京や大阪だけの出来事じゃない!  タワマンの「5戸に1戸が地方都市」という衝撃事実の背景 

(外部配信先ではハイパーリンクや画像がうまく表示されない場合があります。その際は東洋経済オンラインでご覧ください) 

 

 第二次安倍政権によってはじめられた大規模金融緩和は10年余りにわたって続きました。延々と継続された金融緩和は一つの大きな副産物をもたらします。円安です。 

 

 日本だけが世界の中で低金利の一人旅を続けた結果、欧米主要国との金利差が拡大。為替は円安に向かいます。 

 

 一時は円ドルレートが80円を切るほどに円が強い時代があり、日本人がハワイなどの外国に遊びに行くと、物価が安く感じられ、今でいう商品の「爆買い」を行っていたことが嘘のような逆境となります。最近では1ドルが150円程度となり、日本人の海外旅行(アウトバウンド)にも大きな影響を及ぼしています。 

 

 こうした過度の円安は、海外からの不動産投資を誘発しました。急速に経済力をつけた中国人の富裕層が日本に押し寄せ、マンションを爆買いします。北京や上海の新築マンションが日本円で3億円、4億円があたりまえになる中、東京のマンションは2億円程度で良い物件が手に入ります。 

 

■外国人が歪ませた日本の不動産市場 

 

 しかも、日本の不動産は中国とは異なり完全な所有権が外国人にも与えられる点は、大きな魅力となりました。彼らは、日本には何度もリピートするので、来日時のホテル代わりとする者、子弟を日本の大学や専門学校に入学させ、住居として利用させる者、同胞に賃貸する者、転売目的で空き住戸のまま所有する者など様々な理由でマンションを取得しています。 

 

 外国人投資家による不動産の取得は個人に限りません。欧米などの不動産投資ファンドが都市部のオフィスビル、マンション、商業施設、ホテル、物流施設などの取得を積極的に行っています。 

 

 

 彼らはバックに海外の機関投資家の金を抱えており、政治的に比較的安定し、不動産情報の開示が進み、不動産価格が上昇している日本の不動産を好んで取得しています。彼らは不動産のみならず、日本企業をターゲットに買収(M&A)を仕掛けており、特に台湾などのアジア系の企業が日本の企業を傘下に収める例が頻発しています。 

 

 さらに見逃せないのが在留外国人の存在です。日本で暮らす外国人の数は、コロナ禍での一時的な減少を除いて増加傾向にあり、高度人材などの富裕層が多く在住するようになっています。 

 

 彼らは日本で子供を持ち、教育を受けさせるようになっていて、日本語を流ちょうに話す二世、三世が多数世の中に出てきています。彼らの購入も目立つようになっているのです。 

 

 これまで一般実需層の動きだけで判断されてきたマンションをはじめとした日本の不動産マーケットは、長らく継続してきたアベノミクス政策により、投資マーケットとリンクしたやや歪な価格形成を行うようになってきているのが実態なのです。 

 

 一般実需層だけでマーケットを判断するのならば、不動産価格の高騰はここまで顕著にはならなかったはずです。2010年頃から日本の人口は減少を始めています。都市部でも高齢化が進展します。 

 

 住宅需給バランスからいって2020年以降は価格がかなり落ち着くのではないかと私を含めた多くの専門家が判断していたのですが、この予想を大きくゆがめたのが長すぎる金融緩和でした。 

 

 本来、日本銀行もここまで長期にわたる金融緩和を行うつもりはなかったのでしょうが、2020年に発生したコロナ禍によって世界的にも金融緩和が行われたことで世界中が金余りとなり、不動産資産へと向かったのです。投資マネーが暴走を始め、これに目がくらんだ個人投資家が実際に不動産を買って儲けました。 

 

 これをもって予想は外れた、まだこの宴は続くと思っている人が多くいますが、投資マネーだけに支えられた現在の不動産マーケットのリスクは、途方もない規模に膨らんでいるのが現実なのです。 

 

■「金利のある世界」の不動産マーケット 

 

 さて、「金利のある世界」に戻った日本で、これまで宴を続けてきた不動産マーケットはこれからどのようになっていくのでしょうか。 

 

 長らく不動産と金融の世界に身を置いてきた私にとって、金利はとても恐ろしい存在にみえます。不動産投資において金利上昇が持つ意味合いは非常に重要であるからです。 

 

 

 これまで投資利回りが3%台であっても積極的に都心物件を購入していた投資ファンドにとって、調達金利の引き上げは、当然ながら期待投資利回りを引き上げて考える必要が出てきます。 

 

 通常投資利回りの善し悪しを判断するには、ベースレートとなる絶対安全といえる投資対象の利回り、例えば国債レート(10年物など)を基準に置きます(2025年5月時点で年1.525%)。そのうえで、どれくらいのリスクを覚悟するか(リスクプレミアム)を上乗せして、投資利回りを決定します。 

 

 政策金利は、短期プライムレート(銀行などが設定する最優遇取引先に対する1年未満の貸出最優遇レート)に連動しています。つまり調達レートが上昇することは、投資にあたってのマーケットリスクが高まることを意味しています。 

 

 これまでは3%前半でもOKだった投資にさらなるリスクプレミアムを乗せる必要があるかを投資家は判断しなければならなくなるわけです。要求する期待投資利回りが上がれば、その分購入価格を下げるか、物件から得ることができる賃料収入が上がるという前提が必要になります。 

 

 社会がインフレの状況になって賃料がうなぎ上りになっていけば、物件価格は下がらずに新たに設定した投資利回りを確保できますが、賃料が期待通りに上がらない場合は、投資目線(金額)を下げていかなければならなくなります。2025年以降の不動産マーケットはこの状況を見極める状況にあります。 

 

■価格はすでに頂点にある?  

 

 大企業を中心として年収は上がる傾向です。人手不足は全業界共通なので、企業は優秀な人材を確保するためには給与引き上げのみならず、社宅など福利厚生費の充実が求められるようになっていきます。そうした意味で賃貸マンションの賃料は今後の上昇が期待できる状況にあります。 

 

 ただし、既存の賃貸住宅のテナント賃料がただちに上げることができるのかと言えば、日本の借地借家法は、借手側に非常に有利な設定になっています。 

 

 家賃の引き上げを大家が要求しても、テナントがこれを拒否(現状の賃料であることを主張)した場合、大家側は賃料引き上げについて合理的な理由を提示し、テナントの納得をもらわない限り、値上げを実現できません。つまり、家賃上昇が世の中広くに定着していくにはかなりの時間がかかるということです。 

 

 またオフィスは日本国内でも完全なリアル勤務に戻る会社があるいっぽうでハイブリッド型の働き方はこれからの時代の標準になる可能性が高いといえるでしょう。その意味では更なる賃料の引き上げにはおのずと限界があることになります。 

 

 ということは今後、高くなっていく期待利回りに対して、現状の物件利回りが上がる可能性が少ない、つまり価格は頂点にすでにあることを意味しています。買い手がいない限り、価格は下がらざるを得ません。バブルの崩壊は意外と近いのかもしれません。 

 

牧野 知弘 :不動産事業プロデューサー 

 

 

 
 

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