( 315581 )  2025/08/12 06:53:23  
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「起立性調節障害」という病気は、中学生の約10人に1人がかかるとされ、朝起きられない症状が特徴です。

取材対象の岡安碧唯さん(11歳)は、診断を受けた後、周囲から「怠けている」と誤解されることもありました。

病気への理解が進む中、碧唯さんとその家族は、対処療法で症状に向き合いながら、学校生活を送っています。

また、親の会に参加することで、同じ悩みを持つ家庭との情報共有やサポートを受ける機会が増え、少しずつ前向きに子どもと向き合えるようになっています。

岡本穂乃華さん(18歳)も同じ病気を経験し、現在は教員を目指していることが紹介されました。

 

 

(要約)

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khb東日本放送 

 

 「朝、起きたくても起きられない」「怠けている」と誤解されがちな“起立性調節障害”という病気があります。中学生の約10人に1人がかかるとされるこの病気と向き合う当事者とその家族の思いを取材しました。 

 

 「起きて起きて、起きて。時間だよもう。薬は?持ってくる?」 

 

 仙台市宮城野区に住む小学6年生の岡安碧唯さん(11)。朝、起きようとしてもめまいなどがしてどうしても起きられません。今年3月、悩んだ末に診察を受けたところ、医師から「起立性調節障害」と診断を受けました。 

 

 岡安碧唯さん「体が動かないわけじゃないけど、なんか気付いたら眠ってるみたいな。起きようと思って、『あ、起きなきゃ』と思ったら寝てるみたいな感じ」 

 

 昭和医科大学保健管理センター・田中大介小児科専門医「気持ちで頑張ろうというだけではなかなかうまくいかない。学校に通えないとか遅刻するとかやりたいことができないとか心理面への影響もすごく(ある)」 

 

 若い人に多いと言われる「起立性調節障害」。 

 

 碧唯さんが、体の異変を感じたのは、去年12月ごろでした。 

 

 岡安碧唯さん「めまいが酷かったりとか朝起きられなかったりして、元から(起立性調節障害のことを)知っていたから、そうなんじゃないかと思って」 

 

 起立性調節障害は若い人に多く、中学生の10人に1人がなるとも言われています。背景には、第2次性徴期のホルモンバランスの変化や自律神経の乱れがあります。血圧の低下により血液が全身に回らず立ち眩みやめまいがして朝起きられないのです。午後には体調が回復することや年齢が上がると、症状が改善されていくことも特徴です。 

 

 昭和医科大学保健管理センター・田中大介小児科専門医「午後とか夕方になると調子が戻って普通に生活をしていることもあるので、なかなか理解されていない部分もある。すべての重症度に効く特効薬はなかなかない」 

 

 碧唯さんは症状が出た当初、「病気」ではなく「怠けている」と誤解されたこともあったと話します。 

 

 岡安碧唯さん「(最近は)どんなに遅れても『おはよう』って言ってくれるけど、最初は『怠けだ怠けだ』って言われて、起立性調節障害って分かって、先生が(クラスメートに)教えてくれたのか、だんだん私に気遣ってくれてるのかなみたいなのはある」 

 

 周囲の理解は得られるようになりましたが、根本的な治療法はないため、朝起きた時に血圧を上げる薬を飲むなど対処療法で乗り切っています。取材をしたこの日は、何とか朝のうちに起きることができました。最近は、午後からの登校や欠席が続いていたため、1時間目から学校へ行くのは10日ぶり。その分、荷物も多くなります。 

 

 午前8時すぎ、自宅を出た碧唯さん。しかし、見送る親は心配そうな様子です。 

 

 「(時間通りに行けて)安心って感じですか?」「いやーでもすぐ帰ってきちゃうんじゃないですかね」「疲れて?」「そう。あと帰ってきてからもすぐ寝ちゃうっていう」 

 

 取材の翌日。碧唯さんの母から記者へメッセージが届きました。 

 

 『帰ってから友達のお家に行ったようですが、疲れて1時間寝てしまい、家でも19時から2時くらいまで寝て、あとは眠れなくなりました。きょうは欠席しております』 

 

 岡安碧唯さんの母「職場にいながら起きられたかっていう確認の連絡をするんですけど、起きられて、きょうは行けそうだっていうから行けたんだなと思っていると、やっぱり寝てしまって行けなかったって言われて。原因をすごく聞いたりして、言い合いになったりとか」 

 

 「怠けやサボり」と誤解されやすいこの病気は、親の悩みも大きくなります。どうしたら、娘の病気と冷静に向き合えるのか。碧唯さんの母は、起立性調節障害の子どもを持つ「親の会」の存在を知り、この日初めて参加することにしました。 

 

 定期的に集まりを開き、悩みを話し合ったり情報を共有したりする親の会。この日は約15人が参加し、当事者の姿もありました。 

 

 当事者の1人、大学1年生の岡本穂乃華さん(18)です。発症したのは中学1年生の時。朝の不調などが続き、学校に行けない日もありましたが、全日制の高校に進学しました。 

 

 岡本穂乃華さん「高校生活ってキラキラして見えたんで、通えるなら毎日行って部活とかも参加したいなって思ってたので」 

 

 しかし、高校入学後も朝起きられない日が続いた穂乃華さん。休みがちになってしまいクラスに馴染むことができませんでした。 

 

 岡本穂乃華さん「学校があまり楽しくない感じの私が家でも結構落ちてて、それで親にあたっちゃったりも結構あったので毎日ピリピリしていた」 

 

 2学期に思い切って通信制の高校へ転校したことで、体調に合った生活を送れるようになり、学校行事にも積極的に参加できるようになりました。穂乃華さんは、教員になる夢を目指しています。自分と同じように悩む子どもたちを支えたいと考えているのです。 

 

 岡本穂乃華さん「(親が)聞きたいけど、子どもに聞けないことを答えることができたり、人に話すだけで違う。居場所づくりをしたいなって思ってて」 

 

 親の会で碧唯さんの母は、抱えている悩みを話しました。 

 

 岡安碧唯さんの母「来月には修学旅行があってそれも行くって言ってるんですけど、その行けなかった時が気持ちが崩れるな、砕けちゃうだろうなと思って、親として見越して心配している自分がいて。起こす時に『こんなんじゃ修学旅行行けないよ』とか言ってたなって、きょうここに来て反省もある」 

 

 岡本穂乃華さん「やれなかったら『やりたい時にまたやろう』とかそういう感じになったら楽になるのかなって」 

 

 穂乃華さんなどの話を聞き、視野が広がったという碧唯さんの母。碧唯さんに対する心境も変化しました。 

 

 岡安碧唯さんの母「叱ってしまいたくなって実際叱ることは多いんですけど、親の会の存在を思い出して、ひと呼吸つけるようになりました。今は今で受け止められるように自分を変えていきたいと思う」 

 

 今の状況を受け止めたいという思いは碧唯さんも同じです。 

 

 岡安碧唯さん「なるべく普通に生きていきたくて。なんかみんなと同じ道でいきたくて。そのまま楽しく過ごして、大人になっていければいいなって」 

 

khb東日本放送 

 

 

 
 

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