( 315746 )  2025/08/13 05:28:39  
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2025年8月5日、トランプ大統領は「フォードのF-150が日本で受け入れられる」と主張したが、日本市場でのアメリカ車の販売は非常に厳しい状況にある。

アメリカ車は日本で売上が伸びず、2024年にはテスラを含むアメリカ車が1万6700台しか販売されなかった。

日本車は同時期に588万台以上売れているため、トランプ氏の発言に対して懐疑的な見方が強い。

日本の道路事情や文化に合わない大型ピックアップトラックのF-150の販売は難しく、特に右ハンドルモデルや販売サポートが不足していることが問題とされている。

過去にアメリカ車が日本で苦戦した事例があり、今後もアメリカ車が日本市場で成功する見込みは薄い。

 

 

(要約)

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 2025年8月5日、トランプ大統領は「日本はフォードのベストセラーピックアップトラック、F-150を受け入れる」と語ったという。またしても勘違いが甚だしい言動だ。そこでフォードF-150というクルマはどんなクルマなのか?日本で売れるのか?アメリカ車のなかで、日本で売れるクルマは何なのか、考えていきたい。 

 

文:ベストカーWeb編集部、写真:ベストカーWeb編集部 

 

 2025年8月5日、トランプ米大統領は米CNBSとの電話インタビューで「日本は我々のクルマを受け入れる。彼らは非常に美しいフォードF-150を受け入れる」、また「他にも米国で成功しているものは、向こうでも成功するだろう」とも語ったという。 

 

 かねてより「日本の自動車市場は閉鎖的」と批判しており、アメリカ車がほとんど売れていない現状を問題視していたトランプ大統領。 

 

 2025年4月14日、「アメリカ車がほとんど日本で走っていない……」。石破総理は衆議院・予算委員会に出席し、アメリカのトランプ大統領と電話会談した際、トランプ氏から不満の声があったとコメントした。 

 

 第一次トランプ政権の時にも、当時の安倍首相にも同じことを言ったそうだが、安倍首相はアメリカ車のボディサイズは日本の道路事情に合っていない、ドイツ車は右ハンドルを用意し日本の実情に合わせている、アメリカの自動車メーカーの努力が足りないと一蹴。 

 

 たしかに日本車はアメリカで588万2438台(2024年)も販売しているのに、日本で販売されているアメリカ車は、5600台あまりのテスラを含め1万6700台あまり(JAIAの統計)で、国内全体の新車販売の0.3%にとどまっている。 

 

 2024年1〜12月の輸入新車販売台数(JAIA)を見てほしい。アメリカ車はまったくといっていいほど日本市場で売れていないことがわかる。アメリカ車は、ジープがようやく9633台で11位にランクイン。フランス車、イタリア車を抜いてランクインしているのは大健闘といっていいだろう。ちなみに他のアメリカ車勢はというと、587台でシボレーが28位(0.18%)、449台でキャデラックが35位(0.14%)と、トランプ大統領が嘆くのも仕方ない。 

 

  

■2024年1〜12月の輸入新車販売台数(JAIA調べ) 

1位:メルセデスベンツ5万3195台(シェア16.58%) 

2位:ホンダ4万5107台(シェア14.06%) 

3位:BMW3万5340台(シェア10.99%) 

4位:VW2万2779台(シェア7.1%) 

5位:アウディ2万1415台(シェア6.68%) 

6位:BMWミニ1万7165台(シェア5.35%) 

7位:日産1万4354台(シェア4.47%) 

8位:トヨタ1万4213台(シェア4.43%) 

9位:ボルボ1万2331台(シェア3.84%) 

10位:マツダ9686台(シェア3.02%) 

11位:ジープ9633台(シェア3.00%) 

 

 さらに詳しく、車名別のアメリカ車の販売台数を見ると以下の通り、3桁、2桁と厳しい販売状況である。 

 

■2024年車名別新規輸入販売台数 

ジープ:9633台 

キャデラック:449台 

シボレー:587台 

クライスラー:6台 

ダッジ:126台 

フォード:217台 

(JAIA調べ新車並行車含む) 

 

 

 そもそも日米自動車摩擦はいまに始まったことではない。1970年代の石油危機の際にはすでに勃発、低燃費なホンダシビックなどが大人気となった結果ビッグスリーの業績は悪化。1980年には全米自動車労組(UAW)などが日本車の輸入制限を求めて米国際貿易委員会(ITC)に提訴したが、同年、日本の自動車生産は米国を抜いて世界一になっていた。 

 

 当時、日本政府と自動車業界は1981年、対米自動車輸出台数を制限する「自主規制」を導入することになり、自主規制は1993年度まで続いた。日本車メーカーは米国での現地生産を加速したが1990年前後には「米国で現地生産するクルマの米国製部品の調達量が少ない」と今回のようにイチャモンがつけられたのだった。 

 

 ブッシュ第41代大統領はビッグスリー首脳らと来日し、当時の宮沢喜一首相との首脳会談を経て、日本車メーカーによる米国製部品購入の「努力目標」が設けられることになった。 

 

 1995年にもクリントン政権の米通商代表部代表が、日本市場の閉鎖性を理由に「レクサス」など日本製高級車13車種の輸入に100%の関税を課すと発表。 

 

 これに対して、当時の日本政府は世界貿易機関(WTO)に提訴する形で応戦するも、トヨタは1996年1月、GM製シボレーキャバリエにトヨタバッジを付けてOEM供給する形で、いわば国家的な外圧により販売された。 

 

 トヨタはしっかりとプロモーション活動を展開したが、さっぱり売れず、年間2万台の目標販売台数にはまったく届かないまま、予定していた5年間の販売期間を前倒しし、2000年4月に販売終了した。 

 

 日本に合うボディサイズのクルマで、価格を安くすれば売れるはず……というGMの考え方が安易すぎたといっていいだろう。大失敗したクライスラーネオンやサターンも同様だ。 

 

 2000年以降、アメリカ車の販売は下降線を辿り、特にヤナセがGMの輸入権を返上してから加速し、2016年にはフォードが日本法人を撤退してからはひどい状況に。そして2017年にはクライスラーブランドも日本市場から撤退、現在はジープ、シボレー、キャデラック、テスラの4ブランドのみだ。 

 

 とはいえ、アメリカ車がまったくダメダメというわけではない。1990年代に比べると、現在のアメ車はクオリティが格段にアップしているし、大排気量V8OHVといった時代から2Lターボや1.2Lターボなどダウンサイジングターボをはじめ、ハイブリッド車やPHEV、BEVをピックアップトラックやSUVに積極的にラインナップしている。 

 

 アメリカ車の特徴ともいえるデカいボディサイズも、日本車やドイツ車が年々拡大していて、かつて全幅は1800mmを超えると大きく感じたが、いまでは全幅1850mmも珍しくないので、昔ほど大きく感じなくなっている(ランクル300は全幅1980mm)。 

 

 よく言われる右ハンドル化していないことについては、売れる車種の一部に留まっている。努力はしているという程度で、欧州車のように「日本で売るために右ハンドルは必須」という考えはない。 

 

 ちなみに、1980年代〜1990年代にかけてチェロキーにも右ハンドルが用意されていたし、フォードの日本撤退直前に発売予定だったマスタングにも右ハンドルがあった。さらに現行モデルのコルベット日本導入時は右ハンドルが用意され、300台が即完売。 

 

 GMジャパンは、日本市場において2026年末までにBEV3車種を投入する計画を立てており、その第一弾として2025年3月からミドルサイズSUVのリリック、2026年にはコンパクトSUVのオプティック、3列シートSUVのヴィスティックを発売する。GMの本気が感じられる全車右ハンドル、そしてCHAdeMO(チャデモ)規格の急速充電器にも対応するというから見ものである。 

 

 ただし、かつてヤナセがインポーターだった頃と違い、どこにいけば買えるのかわかりにくいし、そもそも販売拠点が少ない。重要なポイントはビッグ3が日本で売る気がないこと。たいした市場ではないからと、日本に寄り添う姿勢を見せていないからだ。 

 

 

 トランプ氏が日本売れると、声高く挙げたフォードF-150は、米国ピックアップトラック市場で48年間ベストセラー1位を誇るフルサイズピックアップトラックでガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、電気の4種類のパワートレインを用意している。 

 

 1回でもロザンゼルスを訪れたことがある人ならわかると思うが、道幅は広いがガタガタな路面が多く、東京都心部のような狭すぎて曲がるのに苦労するところはほとんどない。道がクルマを作るというが、アメリカ車はアメリカに合ったクルマしか作っていないというのが正直な感想。 

 

 かれこれ30年以上前に「なぜ日本でピックアップトラックが売れないのか?」という企画を掲載したことがある。垣根やブロックで家を囲う日本人からしてみると(一般的なアメリカの一軒家の前は芝生)、大型スーパーで1週間分の食料品を買って荷台に積む文化は、キャンプや車中泊などが流行し、コストコが人気になっている今の日本でもまだまだ多くはない。ピックアップはまだまだメジャーにはなりきれないのである。 

 

 とはいえ、数十年ほど前よりはピックアップトラックの人気は高まってきたと肌で感じる。2017年9月〜204年1月まで日本で販売されたハイラックスは最大年間1万1080台(2023年)を販売。 

 

 2024年2月から販売されている三菱トライトンは2025年1月までの12カ月間累計の販売台数は3978台。 月平均約332台で、目標とする月200台の1.5倍強の水準で推移している。 

 

 しかし、年間76万5649台販売するピックアップトラックNO.1であるフォードF-150が、日本で売れるかは別問題である。 

 

 なにしろデカすぎるのだ。 

 

 現行フォードF-150は2020年6月にフルモデルチェンジした14代目。2ドアのレギュラーキャブ、2+2ドアの5人乗りの2ドアのエクステンドキャブのスーパーキャブ、4ドアのスーパークルーの3種類あり、荷台の長さも5.5フィート(167cm)、6.5フィート(198cm)、8フィート(244cm)を用意。 

 

 2ドア5人乗りのスーパーキャブ(5.5フィートの荷台)のボディサイズを見ると、全長5893×全幅2030(ミラーを除く)×全高1912mm。4ドア5人乗りのスーパークルーは全長5885〜6185mm、2ドアのレギュラーキャブでも全長5311〜5784mmもある。 

 

 ちなみにトヨタハイラックスはZ、Xグレードで全長5340×全幅1855×全高1800mmだから、特にF-150の全長と全幅がデカすぎる! 

 

 

 搭載されるエンジンは2.7LエコブーストV6ツインターボ、3.5LエコブーストV6ツインターボ、3LV6ディーゼルターボ、フルハイブリッドの3.5LパワーブーストV6ツインターボ、高性能版ラプター用の5.2LV8スーパーチャージャーを用意。全車、10速ATを組み合わせている。 

 

 さて、気になる燃費。最小排気量の2.7LエコブーストV6ツインターボで、市街地約8.5km/L、高速約11.0km/L、複合モード9.4km/L。3.5Lのフルハイブリッドは市街地約10.6km/L、高速約11.1km/L、複合モードで約11.1km/L。ラプター用の5.2LV8スーパーチャージャーは市街地約4.3km/L、高速約6.4km/L、複合モード5.1km/Lと極悪燃費ぶりを発揮。 

 

 トランプ大統領は、一番売れていてメジャーなフォードF-150を例に挙げただけだと思うが、せめてSUVの車種を挙げるべきだったと思う。 

 

 日本の道路事情には適さず、都内の駐車場には入らないボディサイズの大きさだけではなく、右ハンドルがない、正規ディーラーがなくサポート&メンテナンス体制がどうするのか、ないないづくしでお手上げ状態といっていいだろう。 

 

■2025年1〜6月北米新車販売台数ランキング 

1位:フォードFシリーズ/34万2971台 

2位:シボレーシルバラード/23万9526台 

3位:トヨタRAV4/20万2641台 

4位:ホンダCR-V/18万2656台 

5位:Ramピックアップ/14万4562台 

6位:GMCシェラ/14万930台 

7位:トヨタカムリ/12万9995台 

8位:シボレーエクイノックス/11万1535台 

9位:トヨタタコマ/10万9365台 

10位:ホンダシビック/10万8338台 

 

 1990年代から30年経った今、日本で売れるアメリカ車はなにか?ぶっちゃけ、日本人がアメリカ車に求めるものは、ボディの小ささや燃費のよさではないのだ。しかも低燃費、安全装備、クオリティ、価格……、はっきりいって日本車に勝てるはずがない。 

 

 ここで、並行輸入車も含め、過去日本で売れたアメリカ車(フォードの欧州生産車を除く)を見ていきたい。ジープはラングラー、チェロキー&グランドチェロキー。フォードは、エクスプローラー、マスタング、シボレーはアストロ、タホ、ブレイザー、カマロ、コルベット、キャデラックSLS&STS、エスカレード、クライスラーはボイジャー、PTクルーザー、ダッジデュランゴ、チャレンジャーなど。これらのアメリカ車に共通するのは、「アメ車らしさ」なのである。 

 

 一番の好例はジープラングラーである。ジープは2024年暦年で9633台、そのうちラングラーだけで3294台も売れている。 

 

 ちなみに、今日本で売れることが確実なアメリカ車は、フォードブロンコではないだろうか。1966〜1977年の初代アーリーブロンコを復活させたデザインで、2.3L直4のエコブーストターボ(275HP&420Nm)と2.7LV6ターボ(310HP/420Nm)に7速MTと10速ATを組み合わせる。アメリカでは爆発的に大ヒットし、中古車はプレミアム価格で売られているほどだ。特に高性能版のラプターは人気が出そうだ。 

 

 そのほか、売れそうなアメリカ車を探してみた。フォードではSUVのエスケープ、ブロンコスポーツ、エクスプローラー(ただしボディサイズは全長5047×全幅2004×全高1768mm)、マスタング。繰り返すが、フォードジャパンは2016年末に日本から撤退している。 

 

 GMは現在、正規インポーターのGMジャパンが、シボレー、キャデラックブランドを販売している。シボレーはコルベットのみ(カマロは2024年1月に販売終了)、キャデラックはSUVのXT4、XT5、XT6、エスカレード、EVのリリック。 

 

 アメリカ本国のシボレーブランドのサイトを見ると、トラックス、トレイルブレイザー、エクイノックス(EVもあり)、ブレイザー(EVもあり)、トラバース、タホ、サバーバンと、コンパクトからフルサイズまでSUVはフルラインナップ体制を敷いている。 

 

 日本で売れそうなシボレーはコンパクトSUVのトラックス(全長4537×全幅1824×全高1567mm)、過去に日本で販売したこともあるトレイルブレイザー(全長4890×全幅1900×全高1850mm)、2025年上半期で新車販売台数8位に入っているシボレーエクイノックス(全長4646×全幅1843×全高1688mm)までのサイズがデカすぎないSUVたちだろうか。とはいっても貿易摩擦を解消するほどの台数は稼げないのは火を見るよりあきらか。 

 

 

 
 

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