( 315816 ) 2025/08/13 06:46:37 1 00 2024年度の混雑率調査によると、全国で最も混雑したJR路線は「埼京線」で、混雑率は163%に達した。
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( 315818 ) 2025/08/13 06:46:37 0 00 2024年度、最も混雑した路線とは? 画像はイメージ
国土交通省が例年発表する「混雑率調査」では、JR路線、地下鉄・私鉄路線の混雑率(ピーク時の1時間で、輸送人員÷輸送力で算出した数値)が明らかとなっている。
「座席につくか、座席前の吊革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる」状態が100%だとすれば、全国で最も混み合う路線の混雑率は、実に177%。体の向きを変えるのも困難で、もはや通勤中の押し合い・へし合いだけで、1日の体力を使ってしまう勢いだ。
さて、今般発表された2024年度の混雑率では、どのような路線が上位に入っているのか。今回は「全国のJR路線」のランキングを見ていく。(全3回の1回目/ 地下鉄・公営・新交通システム編を読む / 民鉄・モノレール編を読む )
まずはトップ5のうち、3〜5位を見ていこう。2024年度は、次のような結果となった。
3位:京浜東北線(計測区間:川口〜赤羽) 混雑率156%(2023年:150% 2020年:118% 2019年:173%)
4位:東海道線(計測区間:川崎〜品川) 混雑率 154%(2023年:151% 2020年:103% 2019年:193%)
5位:京浜東北線(計測区間:大井町〜品川) 混雑率 153%(2023年:146% 2020年:112% 2019年:185%)
京浜東北線が川口〜赤羽で混雑率156%、大井町〜品川で混雑率153%と、上り・下りともにランクインした。いずれも前年度から5ポイント以上悪化している。
2位:中央線快速(計測区間:中野〜新宿) 混雑率:161%(2023年:158% 2020年:116% 2019年:184%)
2位は中央線快速だ。混雑率は161%。最混雑区間は中野〜新宿で、輸送人員が前年度から微増し、混雑率も158%から3ポイント悪化した。
過去のランキングを見ても、2023年度は2位、2022年度は4位で安定した混雑ぶりを見せている。中央線の各駅停車を担う「緩行線」の混雑率は91%で、あまり分散しておらず、高尾・八王子方面からくる快速列車の利用者の多さが、この混雑率に繋がっているといえるだろう。
今後、劇的な混雑緩和は難しそうだが、あえて期待するなら、2025年3月から本格稼働した「2階建てグリーン車」への分散だろうか。
全席コンセント付き・Wi-Fi完備で広々としたグリーン車は、1両90人の2両編成を増結する形で、輸送能力が純増する。早ければ来年に発表する2025年度のランキングから徐々に混雑率が緩和されていくかもしれない。
2024年度のJR路線で、混雑率トップは「埼京線」だった。
1位:埼京線(計測区間:板橋〜池袋) 混雑率:163%(2023年:160% 2020年:127% 2019年:185%)
2021年度から1位を連続で記録しており、コロナ前と比較した混雑度は次のようになる。
〈2024年度〉 編成・本数:10両編成・19本 輸送力・輸送人員:2万8040人・4万5790人 混雑率:163%
〈2019年度〉 編成・本数:10両編成・19本 輸送力・輸送人員:2万7960人・5万1850人 混雑率:185%
1時間当たりの輸送力ではコロナ禍前とさほど変わらず、輸送人員(ピーク時に乗車した人数)も当時と比較して9割弱にとどまっているが、不名誉な1位に輝き続けている。
埼京線が混雑する原因は「車両不足」と「他より短い10両編成」にある。
埼京線の車両はりんかい線、その他私鉄では相鉄などに乗り入れており、見かける範囲はかなり広い。にもかかわらず、車庫は川越線・南古谷駅に近接した「川越車両センター」にしかなく、現行の10両・38編成以上に車両を増やして増便しようにも、配置できるスペースがないのだ。
他の路線が続々と15両編成化しているなか、埼京線は今のところ10両編成から増結しそうな気配がない。そもそも十条・板橋の両駅が15両に対応しておらず、地上にある十条の高架化が済む2031年以降に、何らかの動きがあれば可能性はあるかもしれない。とはいえ、乗り入れ先であるりんかい線も10両編成以上の対応ができておらず、混雑の根本的な対策となる15両編成化には、そこまで期待が持てないかもしれない。
かつ、車両センターは埼京線と離れた川越線の沿線にあり、車両の入出庫だけで単線の容量が埋まってしまう。荒川の強風で速度制限がかかると、車両の送り込みすらおぼつかなくなる。ダイヤが乱れても車両の送り込みがスムーズにできないことからトラブルも多く、乗客の集中による混雑に輪をかけている。
国交省の集計によると、東京近辺の平均混雑率は前年度の136%から139%に悪化している。全体的に混雑悪化か横ばいの路線が多く、首都圏の通勤ラッシュは徐々に戻っているといえるだろう。
ここまで触れたように、都心に向かう路線の混雑ぶりはコロナ前に戻りつつあるが、一方で郊外に向かう路線では利用者の減少で混雑が落ち着き気味だ。
例えば、横須賀線(計測区間:武蔵小杉〜西大井)だと、2019年度には1時間に2万504人だった輸送能力が2024年度は1万8680人に低下しているにもかかわらず、輸送人員はさらに減少。その結果、混雑率が195%から134%まで大幅に改善している。
これは、同様の都心行きルートを担う「相鉄・JR直通線」「相鉄・東急直通線」が開業したことによる影響と思われる。例えば、直通列車が走る東急新横浜線の混雑率は「54%」と混雑度は低いが、通勤の選択肢を増加させて横須賀線の混雑度の緩和に寄与しているはずだ。
ほか、根岸線ではコロナ禍前と比較して輸送人員が2万8080人→1万5210人とほぼ半減している。混雑率は146%→73%と大幅に改善した。
振り返れば、コロナ禍で混雑率ランキングに大幅な異変が生じた。2020年度は従来上位を独占していた首都圏の路線が、業務のリモート化や外出規制で利用者が大幅に減少。代わって「JR信越本線」(新潟県・混雑率135%で1位)や「JR可部線」(広島県・混雑率132%で3位)など、地方の路線が上位に食い込んできた。
もちろん、これらの路線は利用者が急増したわけでもなく、首都圏路線を利用する人の大幅減で、相対的に順位を上げたに過ぎない。こうした地方路線のうち、2024年度時点では新潟県内の路線(信越本線・白新線・越後線)の3線がコロナ禍前の利用水準に近付くか上回っており、白新線が10位(142%)、信越本線が11位(141%)にランクインした。
新潟都市圏の人口は140万人ほど、信越本線では朝の輸送力が1時間に4000人以上と広島・仙台・福岡などの近郊路線とそん色ない。ただ、新潟だけ私鉄・地下鉄がなく、鉄道での通勤・通学がJRに集中している。混雑率調査が行われる10月以降、冬場の降雪とともに、さらに混み合うのだろう。
一方で可部線は、旧来の2両編成の4両化を進めていることもあり、混雑率が2020年度の132%から2024年度には114%まで激減した。しかし、近くにアストラムラインが走り、バイパス道路や旧道では2〜3分に1本は市内行きのバスが来る状況でアクセスは充実している。その中での混雑率114%は、かなり驚くべき数値だ。
「日本一の通勤地獄」かも…朝の“混雑率”が5年連続トップなのに、なぜか赤字の「残念すぎる路線」とは《2024年度・公営、地下鉄、新交通システム混雑度ランキング》 へ続く
宮武 和多哉
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