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石破茂首相についての個人的な見解を述べた記事で、筆者は反自民の立場を持ちながらも、先の参院選敗北後の「石破おろし」に対して違和感を抱いていると伝えている。

著書『私はこう考える』を通じて、石破氏の一貫した考え方や主張を確認し、「誠実さ、謙虚さ、正直さ」が重要であると強調している。

2009年の自民党の衆院選敗北を振り返り、当時の教訓は現在にも通じると指摘している。

自民党の変化が乏しい一方で、石破氏には国民の信頼を取り戻すための行動が求められていると結論している。

 

 

(要約)

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国会に出席する石破茂首相の胸中は…(8月1日) Kazuki Oishi/Sipa USA via Reuters Connect 

 

最初にお断りしておくが、私は石破茂総理の政策すべてに共感しているわけではなく、そもそも立場的には反自民の思想を持つ一市民にすぎない。偉そうに持論を展開する気もないし、自分自身をそんなことができるほどの人間であるとも思っていない。 

 

それでも、先の参院選での敗北を受けた「石破おろし」の激化については違和感と不快感を覚えずにはいられない。つまり、その点に関しては「辞任しなくてよい」と主張する人々に近い立場だ。 

 

ただ、「石破支持」ではない自分は市民としてどう考えるべきなのかを明確に判断できず、ずっとモヤモヤしていた。昨年末に入手して以来、「いつか読まなきゃ」と思いながら結局は放置していた『私はこう考える』(石破茂・著、新潮新書、2024年12月刊)を読んでみようと思ったのは、そんな理由からだ。 

 

本書は、石破氏がこの10年間に新潮新書から刊行した『日本人のための「集団的自衛権」入門』『日本列島創生論 地方は国家の希望なり』『政策至上主義』『異論正論』の4冊から、「これからの日本を考えるうえで重要だと思う論考」を選び、まとめたものだという。 

 

読んだ結果、基本的な考え方や主張には一貫したものがあると感じた。なかでも印象的だったのが、「誠実さ、謙虚さ、正直さを忘れてはならない」という項である。 

 

2018年の『政策至上主義』に収録されていたものだが、書かれていることは今回の参院選敗退に通じるものがあるのだ。 

 

ここで石破氏は、自民党が野党に転落した2009年の衆院選について「衝撃は非常に大きく、忘れられないものだった」と振り返っている。 

 

Newsweek Japan 

 

あのとき、自民党の議席は300議席から119議席へ、すなわち、ほぼ3分の1に減った。世論調査などから敗北が避けられないことは分かっていたものの、結果には大きな衝撃を受けたようだ。 

 

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 ただ、野党になってすぐにやらなければならないこともわかっていました。なぜ自民党は敗れたのか。野党にならなければいけなかったのか。このことを徹底して検証することです。 

 当分政権に戻ることはないとしても、その間にできることは何か。何をすべきで、何をすべきではないか。 

 もう一つ、強く思ったのは、自民党が分裂するような事態は絶対に避けなければいけない、ということでした。(102ページより) 

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石破氏は今、参院選大敗後も続投に意欲を示していることで非難を浴びている。その理由としては「日米関税合意の確実な実行」などに取り組む必要性を示したわけで、それがまた炎上につながったりもした。 

 

だが上記の記述を確認する限り、どれだけ非難を受けようとも揺るがない今回の姿勢は、当時から一貫したものなのではないかと感じもする。人それぞれ感じ方は異なるだろうが、私はこの部分を読んだときにそう感じた。 

 

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 そもそもあの時、なぜ自民党は野党に転落したのでしょうか。なぜ有権者に嫌われたのでしょうか。 

 私は、決して自民党の政策が間違っていたのではなかったように思います。それよりも、党のあり方に対する厳しい見方が大きかったのではないでしょうか。簡単に言ってしまえば、「自民党だけは嫌だ」という思いが有権者に蔓延していた気がします。(104〜105ページより) 

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先の参院選での敗北については、裏金問題などにけじめをつけなかったことが大きく影響したとも言われ、この点についても今回と同じだ。 

 

意地の悪い言い方をすれば、自民党は昔も今もまったく変わっていないのである。事実、石破おろしに奔走している議員の姿を見せられ、「やはり自民はこの程度」と感じた人も少なくないことだろう。 

 

石破氏は、2009年の自民党についてこうも述べている。 

 

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 このとき痛感したのは、政策が正しければそれでいい、というものではないということです。もちろん政策が正しいことは大前提です。間違った政策、実現不可能な政策を選挙目当て、イメージ先行で進めていいはずはありません。 

 必要なのは、正しい政策を用意したうえでさらに「政府は私たちのことをわかってくれている」と思ってもらえるように、丁寧な説明を繰り返すことなのです。(108〜109ページより) 

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この「『政府は私たちのことをわかってくれている』と思ってもらえるように」という部分は、まさしく国民が望んでいることであるはずだ。しかし、それはほぼ実現不可能かもしれないと多くの人々が感じたからこそ、参院選があのような結果になったわけだ。 

 

石破氏がどう考えていたとしても、結局のところ自民党は16年前からまったく進歩していないということになる。「ポスト石破」をめぐるみっともない騒ぎを見ていても、残念ながらそう感じずにはいられない。 

 

繰り返すが、私は石破支持派ではない。しかし、この状況下では、ましてや本書を読んだ今となっては、比較的まともに見える石破氏を多少なりとも応援したくなってもいる。 

 

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 どうやって国民の信頼を取り戻せるか、あんなに一所懸命やった三年間はありません。その経験はその後の政権交代の大きな力となっています。だからこそ野党時代の経験というのは、私にとっても、自民党にとっても忘れてはならないものであると思うのです。(116ページより) 

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2009年衆院選の「衝撃」を振り返る「誠実さ、謙虚さ、正直さを忘れてはならない」はこのように締めくくられる。 

 

今こそ再び、こうした思いを形にしていただきたい。そうすれば、自民党に対するイメージも変わってくるだろうし、なによりそれこそが、いま石破氏に求められているものではないだろうか。 

 

印南敦史(作家、書評家) 

 

 

 
 

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