( 316186 ) 2025/08/15 03:48:36 1 00 静岡県伊東市の田久保眞紀市長は、卒業証書の提出を拒否し続けており、法律的な助言を受けて抵抗しています。 |
( 316188 ) 2025/08/15 03:48:36 0 00 記者会見で続投を表明する静岡県伊東市の田久保真紀市長と弁護士
どう考えてもニセ物としか思えない卒業証書を頑なに出さず、居座りを決め込む静岡県伊東市の田久保眞紀市長。その徹底抗戦を法律家の立場から助言しているのが、田久保氏と20年来の付き合いがあるという東洋大学法科大学院卒の福島正洋弁護士である。はたしてこの弁護士がアドバイスしている戦略はどこまでまっとうなのか。元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士が解説する。
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要は、紙っぺら一枚見せてくれさえすればいいだけの話。だが、ニセ物疑惑のある卒業証書は現在、福島弁護士の事務所の金庫に封印されたままで、田久保氏は頑なに出そうとしない。この戦略について西脇氏は「時間稼ぎをしているようにしか見えない」と語る。
「福島弁護士は田久保市長がとりあえずその場をしのぐため、思いつくあらゆる法律用語を伝授しているように見えます」(西脇氏)
例えば、田久保氏は百条委に提出した回答書の中で、黙秘権を規定した憲法38条1項を持ち出した。公職選挙法違反容疑で市民に刑事告発されている状況も踏まえた上で、提出拒否は「自己に不利益な供述を強要されない権利に基づく『正当な理由』に該当する」と訴えたわけだが、
「黙秘権は不都合なことを『喋らなくていい』という権利であって、『書類の提出』とは別問題。百条委員会は強い権限を持っており、求める文書などについて正当な理由なく提出を拒否したら罰則があると決まっています。ここに『黙秘権』を持ち出すのは、一見、もっともらしく見えて実はお門違いだと思います」(西脇氏、以下同)
今後、司法が介入して金庫から強制的に卒業証書を押収する可能性について福島氏は「押収拒絶権があるので許されない」としているが、この主張についても、
「確かに弁護士は、業務上保管・所持する物で『他人の秘密』に関するものについては、押収を拒むことができると法律で定められています。しかし、今回の場合、預かっているものは『卒業証書』。これが『秘密』といえるのか疑問です」
つまり、どれも無理筋な理屈だというのだ。
「どこまで頑張っても捜査機関が本格的に捜査に乗り出せばいつかは行き詰まる可能性が高い。しかし一方で、議会も百条委員会も、田久保市長側から無理やり証拠そのものを差し押さえる権限はない。できるのは市長を地方自治法違反等で告発するところまでです。そこで市長側は後に有罪の証拠となりうるNGワードに気をつけつつ、何かと理由をつけて証拠を表に出さないという戦略をとっているように見えます。そうすれば、今後卒業証書を捜査機関に押収されるという事態にならない限り、曖昧なままで粘ることができる」
しかしこの戦略は、弁護士としてリスクのあるようにも見えるという。
「依頼人の正当な利益を考えると、私だったら弁護士として勧めない戦略だと思います。百条委員会への資料提出拒否などは刑事罰のリスクがあるわけですから。ただし『誤りを認めたら負け』という考えに振り切り、『時間が経てば皆忘れ、刑事事件化もされず、うやむやに終わる』という展開に一縷の望みを託すなら、今は何を言われても地位を譲らず再選挙などを狙うことになるのでしょう。でも仮に再選挙に勝っても、その後に刑事事件化したら大混乱になる気がしますが…」(同)
このような「先延ばし戦略」は今、流行りなのだという。
「パワハラ疑惑が生じた斎藤元彦兵庫県知事は、様々な指摘を受けても粘って出直し選となって再選。第三者委や百条委が問題を厳しく指摘する報告書を出したのはその後でした。性的不祥事の疑惑が浮上した永野耕平前岸和田市長も、議会を解散し妻が市議選に出馬するなどの展開の中で粘りました。永野氏の場合は、結局、出直し選挙に敗退しましたが」(同)
田久保氏も、永野氏と同様、今のところ好材料は見当たらない。しかし時間稼ぎをしている間にも、税金から市長の給料は支払われていく。
その行く道は険しく見える田久保氏だが、やはりここまで来ると、市民のみならず国民がどうしても見たいのが「卒業証書」だ。公開される日は来るのだろうか。
「このまま百条委の求めに応じなかったとしても、仮に刑事事件化された場合には、警察によって『卒業証書』が押収され、裁判に証拠として出されるでしょう。その際は、検察側から法廷で証拠内容の説明はあると思いますが、実物を見られるのは裁判関係者だけ。刑事事件の証拠が公開されるのは裁判が終わった後が原則です。その際、理由によってはコピーが許される場合もありますが、そうなるまでには早くても1〜2年の時間は要するのではないでしょうか」(同)
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西脇亨輔(にしわき・きょうすけ) 1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。弁護士登録をし、社内問題解決などを担当。社外の刑事事件も担当し、詐欺罪、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反の事件で弁護した被告を無罪に導いている。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。
デイリー新潮編集部
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