( 316211 )  2025/08/15 04:19:23  
00

自民党内での権力闘争が続く中、NHKの世論調査では石破内閣の支持率が上昇し、「石破続投」に賛成する声が増えている。

自民党支持者の69%が続投を支持しており、参院選の結果を巡る意見が分かれる中での支持率上昇は、石破首相の政策や発言が評価された結果と考えられている。

一方で、総裁選の前倒しや派閥間の動きがあり、石破降ろしを目論む動きも見受けられる。

政治資金改革に関する提案もあり、自民党の内情は複雑化している。

今後の政局の行方が注目される。

(要約)

( 316213 )  2025/08/15 04:19:23  
00

自民党総裁選は実現するのか 

 

 2025年8月12日夜に明らかになったNHK世論調査で、石破内閣支持率が7ポイント上昇、「石破続投」に49%が賛成している。これで、前倒しされる「自民党総裁選」が実現するかどうか、わからなくなってきた。 

 

■「石破続投」自民支持層で69%「賛成」 

 

 7月20日の参院選・与党大敗以来、「選挙3連敗だから退陣せよ」という自民党内の権力闘争の論理は、「だれのせいで、何が問題で負けたのか」を問う有権者の声とぶつかりあってきたが、NHK調査の結果で、盆明けの政局の行方はますます混迷を深めることになりそうだ。 

 

 8月15日の敗戦記念日の石破首相のあいさつ、そしてその週末の新聞の世論調査がさらに影響を拡大するかもしれない。 

 

 NHK世論調査は8月の9~11日の3連休に実施された。内閣支持率は、前月より7ポイントアップの38%(不支持は8ポイントダウンの45%)。石破茂首相が「政治空白をつくってはならない」として「続投」する意向を示していることについては、「賛成」が49%で「反対」が40%だった。自民党支持者に同じ質問をすると、「賛成」がぐんと伸びて69%「反対」は23%だった。 

 

 政党支持率は自民党が最高の5.4%アップの29.4%。野党は国民民主党が7.1%(+2.2)、立憲民主党6.9%(-0.9)、参政党6.8%(+0.9)、日本維新の会3.2%だった。自民党支持層の69%が「石破続投賛成」だった結果などについてNHKは、「自民党内では、参議院選の敗因は石破首相だけの責任ではなく、政治とカネの問題なども影響しているという世論の表れではないか、という受け止めが出ている」と解説しているが、支持率上昇の要因についてはコメントしていない。 

 

 6日の広島、9日の長崎での原爆記念日の「石破あいさつ」は、いずれも有権者の評価が高かったことが影響しているのではないかと私は見る。広島の場合、「過去3首相のコピペ原稿と違う」と評価する声が、SNS上で相次いだ。 

 

「内容や言葉選びはすごい良かった。最後に短歌を引用したところも。過去3人の総理のコピペ原稿とは全く違う」「強く心に響いた。政治家のスピーチには珍しく『人の言葉』だった」 

 

 毎日新聞によると、2020年の安倍晋三首相のあいさつは、広島と長崎でほぼ同じ「コピペ」だった。18、19年も極めて類似。21年の広島市の式典では、当時の菅首相があいさつの一部を読み飛ばした。 

 

 心に響いたという言葉選びとは、何を指すのか。  

 

「2年前の9月、広島平和記念資料館を、改装後初めて訪問しました」「黒焦げになった無辜(むこ)の人々。4000度の熱線により一瞬にして影となった石(中略)夢や未来が瞬時に容赦なく奪われたことに言葉を失いました」 

 

 歌人・正田篠枝さんの短歌を読み上げた、その一節も注目された。 

 

「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」 

 

 長崎のあいさつでは、長崎医科大で被爆した故・永井隆博士の言葉が心に残った。 

 

「ねがわくば、この浦上をして世界最後の原子野たらしめたまえ」 

 

 

 どうやら、歴史、戦後認識などをからめた「メッセージ」は、政治家・石破茂の得意科目のようだ。敗戦記念日の「戦後80年メッセージ」を石破首相本人が練っているはずだ。閣議決定を要する「80年談話」とは別に、式典あいさつのなかで、国民に届くメッセージを考えているとされる。 

 

 一方で、日米関税協議をひとまず合意にこぎつけたり、8月上旬のコメ増産への転換表明もおおむね評価されたりで、政策上では、石破政権への逆風はおさまったかに見える。 

 

 8月の最終週に予定される自民党の「参院選の総括」後には、森山幹事長の辞任が予想され、石破氏にも大きな転機が訪れるとされる。ただし、これと同時並行で進むと見られる「総裁選の前倒し」については、自民党議員と都道府県支部の過半数が必要になるが、記名投票になった場合に事実上の「石破リコール」となるため、もし倒閣に失敗した場合を考えると「危険な賭け」になる。盆明けの週に、「石破支持率上昇」の世論調査が相次いだ場合に、「前倒し過半数」に影響が出て来る可能性がある。 

 

 さらに石破首相は、4日の衆院予算委員会の野田佳彦・立憲民主党代表との質疑の中で、政治資金改革問題に関連して、企業団体献金の受け皿を「政党本部と都道府県にひとつの政治団体に限定する」案を軸に協議すると話し合った。当時は、「党内手続きをしていない」などと自民党内から反発を呼んだが、有権者側からは、「選挙敗北を反省して動いた、石破・野田両首脳に、政治改革に動かない自民党」との見方も出ていた。 

 

 「石破降ろし」に動く自民党内では、派閥単位の動きも目立ち、「派閥は解消したはずなのに」との有権者の目もまた気になる。 

 

(ジャーナリスト 菅沼栄一郎) 

 

 

 
 

IMAGE