( 316268 ) 2025/08/15 05:28:36 0 00 集英社オンライン
SNSの普及で真偽不明の情報が飛び交う現代において、日本人の「見極める目」は退化の一途を辿っているのではないか――。中国人移住者に関するデマが拡散される一方で、生活保護受給者の実態や日本の社会保障制度を悪用するペーパーカンパニー設立の問題など、看過できない事実が浮上している。経営・管理ビザの急増は、日本の不動産を買い漁り、空き家問題を助長する。このような移民増加の現状に対し、名物投資家の木戸次郎氏がその背景と日本の取るべき対策について警鐘を鳴らす――。
SNSの急速な普及によって情報が氾濫し、昨今は何がフェイクで何がリアルか区別がつかなくなってきている。
選挙においてもSNSでまことしやかにデマが流されると、それを事実だと信じ込んだ人たちにより、今度はそれに尾びれがついて、またそのデマが誇大化されて広まっていく。
デマか真実かを「見極める目」については、我々日本人は急速に、そして確実に退化の一途を辿っているように思えるのだ。近い将来、事の真偽はAIに判断してもらうようになるのではないか。
海外でAIコンサルタントをしている知人によると、すでに人間を騙すためにフェイク情報を流すAIもできているようで、時代はどんどんAIに翻弄、支配されていくのかもしれない。
下手をすれば、そうしたことが発端になって戦争すら起こりかねない。実際に過去の戦争というのはデマの応酬によって引き起こされることが多かったといわれている。
そのためにも我々は読解力、考察力、洞察力を常にトレーニングしておく必要があるように思う。
筆者は以前、中国人の移住問題について、日本の優れた社会保障目当ての移住者が多い書いたが、いつのまに尾びれがついて生活保護受給者の1/3は外国人であるという噂がSNSを発端に広がった。しかし、これは明らかなデマだ。
厚生労働省のデータによると2023年度(2023年4月〜24年3月)における生活保護受給世帯は全国で約165万世帯あり、このうち世帯主が外国籍(日本国籍を持たない世帯主)なのは 約4.7万世帯なので、全体の約2.8〜2.9%に過ぎないのだ。
つまり、日本の生活保護の 97%以上は日本国籍世帯であり、外国人世帯はわずか 3%未満だというのが真実だ。
とはいえ4.7万世帯、人数にすれば10万人前後の移住外国人が生活保護を受けているのは事実で、それにかかる費用は概算でも1000億円前後かかっていることもまた、紛れもない事実なのだ。
とりわけ日本へ移住を希望する中国人が注目する、日本の社会保障制度についてもSNSからの噂が発端になっている節はある。
第一に「医療制度にタダ乗り」説だ。それは「日本の経営管理ビザを取得すれば公的医療を格安で受けられる」といったものだ。
実際にそうした内容の動画が中国で拡散され、中国人の関心を集めている。上海などでは日本の医療機関に中国人が増加したという報告もあるが、日本の医療保険は国内限定であるので原則、日本人向けの医療機関であっても上海では使用できない。
例外的に補助が出る場合があるが、その手続きはかなり複雑なのでSNSのフェイク、誇張された噂に多くの人が惑わされているといえるであろう。
また、経営・管理ビザ取得によって、「高額療養費制度等が無料で使える」だとか、「医療費の払い戻しは年齢が高ければ高いほど高額になる」という根も葉もない噂も拡散されているようで、その噂が発端でペーパーカンパニー設立による悪用が広まっている問題は深刻なようだ。
実際に 経営管理ビザの増加数には目を見張るものがある。2019年は2万7000人程度だったものが、2024年末には4万1615人。そして、2025年3月末までの累計では僅か3ヶ月間で1792件、そのうち中国人が70%も占めているというのだ。
2025年中には経営管理ビザの保持者は5万人を優に超えるといわれている。その中には実際の経営実態がほとんどないペーパーカンパニー形式のケースが多数あるという報告もある。
例えば、大阪の某ビルには50社が登録されているが、そのほとんどは人の気配すらないそうだ。また、知人の行政書士によると中国人の申請者の多くは実態が乏しい会社であるという。
大阪の事例では2600件、全国では数万件規模で怪しい会社が存在しているという。そしてそれが驚く速さで増殖しているということだ。
トランプ大統領は確かに滅茶苦茶な部分は多いが、「米国に移住したい(グリーンカードが欲しい)のなら500万ドルの投資をすればすぐにゴールドカードを出す」と移住に一定のハードルを設けており、こちらのほうが、よほど国益を考えているといえるであろう。
実際にペーパーカンパニーが日本の不動産を買い漁っているのは事実であり、経営管理ビザを取得するために、合同会社を設立して不動産賃貸事業を営むパターンが一般的となっているのだ。
また、少額でも賃貸運用できる投資物件向けの法人を多数設立していて、複数物件をまとめて購入・管理する事例も散見されている。
特に日本には全国の住宅の約13.8%にあたる約900万戸もの空き家が存在しており、地方では更に高い空き家率となっている。Bloombergは「日本は非居住者でも不動産を購入しやすく、空き家を“割安物件”として外国人に売っている」と報じている。
空き家は平均600万円程度、中には数十万円からの物件もあり、外国人などからの購入が増えているそうだ。車を買うような価格なのだから、多くの外国人が飛びつくのは当たり前のことだろう。
なぜ、彼らがこれほど日本の不動産を買い漁るかといえば、何ら難しい規制もないし、何より母国である中国では不動産を所有することができないからだ。
ベトナムなどもそうだが、社会主義国の多くは使用権の売買はできても所有権ではないのだ。その上、社会保障制度は世界有数に優れている上に治安が良く、政治的にも安定している。
さらに慢性的な円安状態によりディスカウント価格で日本の不動産を買えるのだから、相当お得に映るのだと思う。
さらに中国にはいわゆる相続税が存在しない。だから、日本の不動産資産は子孫への相続が容易で安全であるといえるのだ。仮に非居住者から非居住者に相続された場合、そしてその不動産が転売された場合などは税務当局も税金の徴収は難しくなるはずだ。
近年、旧軽井沢や中軽井沢の億を超える高級別荘地や高級リゾートマンションに香港、シンガポール、台湾系、中国系の富裕層の買いが入っているという分析は報告されている。
が、それとは別に中軽井沢・南ヶ丘・追分・千ヶ滝・借宿などのエリアでは、築年数の古い中古別荘が500万円〜1500万円程度で取引されることも珍しくない。
日本人所有者が維持できなくなったり、相続などで不要になったりした「空き別荘」を中国人または合同会社名義が現金一括またはローンを使って購入する事例が報告されている。
実際に、軽井沢の駅前で不動産業を営む知人によると別荘地にとどまらず、最近では住宅地でも中国人が頻繁に購入しているという事例が多いという。この場合、日本人代理人が登記上代表の場合もあるという。
現在、私は軽井沢で生活しているが、スーパーマーケットには生鮮品を買い漁る中国人旅行者が実に多い。
軽井沢では有名なツルヤやデリシアといった大型スーパーにも日本人居住者と同じくらいの人数が押し寄せている。平日、休日問わず日本語よりも中国語が聞こえてくるほうが圧倒的に多いほどだ。
実は軽井沢町は全国でも特に民泊規制が厳しい自治体で有名だ。住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届け出型民泊は、軽井沢町では「ほぼ全面的に制限」されている。
営業するには「旅館業法の簡易宿所営業許可」が必要だが、これも別荘地や住環境を守る目的から、町は積極的に認めていない。正直言って合法的に民泊を行うのは非常に困難、いや不可能な地域といえる。
それなのに生鮮品を買い漁る中国人旅行者が異常なほどいるということはどう考えても不自然で、隠れ民泊をしているのだろうか(真実はわからないが)。
あくまでも一般論として、よくある隠れ民泊、隠れハイヤー(タクシー)のスキームは 「知人宅」「友人への短期貸し」「身内利用」や「友人の送迎」「知人の送迎」を装うケースだ。
利用者は中国本国でSNSやWeChat経由で予約をし、 中国国内でAlipayやWeChat Payなどで事前決済をして日本側には痕跡を残さないというカラクリのようだ。
物件の様子も住民票なしで電気・水道がほぼ使われないばかりか、 住民不在でも頻繁に高級ミニバンやレンタカーが停まっていて、大きなスーツケースを持った旅行者が出入りしており、民泊行為をしているなら違法である可能性が出てくる。
仮に違法民泊であれば、更なる問題が出てくる。正規ホテル利用なら地域税・雇用を創出するが、違法民泊は課税対象外なので収益があっても絶対に申告されないし、住民票も納税もない“幽霊所有者”が増加すれば所有者不明化し、やがては防災・治安対策が難しくなる。
|
![]() |