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日銀は、物価上昇率が今後縮小すると見ており、現時点では金融政策が「ビハインド・ザ・カーブ」に陥っていないと主張している。

今期の実質GDPは市場予想を上回ったが、米国の経済情勢や高関税政策の影響を注視する必要があると考えている。

また、賃上げ率は低く、企業の価格設定行動を注意深く見守っている。

米国の経済動向にも注目が集まっており、日銀内では下振れ懸念があることが報告されている。

(要約)

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 日銀の金融政策運営を巡り、国内外からビハインド・ザ・カーブとの指摘が出ているが、日銀は今後、物価指数の上昇率が縮小していくとみており、現時点でビハインド・ザ・カーブに陥っていないとの見方を維持している。写真は2024年3月、都内の日銀本店前で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon) 

 

Takahiko Wada 

 

[東京 15日 ロイター] - 日銀の金融政策運営を巡り、国内外からビハインド・ザ・カーブとの指摘が出ているが、日銀は今後、物価指数の上昇率が縮小していくとみており、現時点でビハインド・ザ・カーブに陥っていないとの見方を維持している。4―6月期の実質国内総生産(GDP)は市場予想を上回ったものの、経済・物価のシナリオを変える必要はなく、米国の経済情勢や国内経済への高関税政策の影響などを見極めていく必要があるという。 

 

<ビハインド・ザ・カーブではない> 

 

足元では、国内外の要人から日銀の金融政策運営が「後手に回っている」との批判も聞かれる。13日にはベセント米財務長官が一部メディアのインタビューで私見と断った上で「日銀は後手に回っている」と述べ、金融市場に波紋を呼んだ。 

 

しかし日銀は現状、ビハインド・ザ・カーブに陥っていないとの見方だ。コメ価格の前年比上昇率が先行き大きく縮小することや、関税の影響による経済の減速により、物価指数の伸び率を縮小させていくとみているからだ。 

 

春闘での賃上げ率が30%を超えた年もあった1970年代に比べれば、足元の2%台の賃金上昇率は格段に低く、賃金と物価がどんどん上がってしまう局面にはない。足元の食品値上げには物流費や人件費転嫁の側面もあり、日銀は企業の賃金・価格設定行動が一段と積極化しないか注視しているが、現状はあくまで物価の上方向のリスク要因に過ぎず、ビハインド・ザ・カーブに陥っているわけではないという。 

 

植田和男総裁は7月末の会見で「現状ではビハインド・ザ・カーブに陥っているとは思っていないし、そうなるリスクが高いとまでは思っていない」と述べている。 

 

<GDPで想定変わらず、米国経済の動向に警戒感> 

 

4―6月期の実質GDPについても、日銀では、関税の影響でいったん経済の成長ペースが鈍化し、その後に再び伸び率を高めていく想定を変えるほどの結果ではないとの受け止めが出ている。 

 

日本の自動車メーカーは、米国の高関税政策の下で競争力を維持するため、輸出価格を大きく引き下げ、輸出数量を維持する戦略を取ってきた。日銀でも、輸出数量が維持されることでGDPへの影響は軽微にとどまるとの見方があり、その通りの結果となった。 

 

7月の展望リポートで現状判断を「底堅く推移している」に後退させた個人消費は0.2%増となり、日銀内では物価高が続く下でも底堅い推移が続いているとの見方が聞かれる。 

 

日銀では、4―6月期GDPは関税の影響が少なかった時期の指標だとして、むしろ今後の経済動向を注視している。自動車メーカーが輸出価格を大きく下げることは、収益面で関税のダメージを吸収する形になるため、長くは続かないとの見方もある。各メーカーが輸出価格を上げていった場合に米国市場での競争力が維持されるのか、収益への影響が賃上げにどう波及するのかなどが注目ポイントになる。 

 

日銀内でそれ以上に関心が向かっているのは米国の経済動向だ。1日発表の7月米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比7万3000人増にとどまり、5月、6月分が大きく下方改訂された。日銀の一部では米国経済の下振れ懸念が出ており、秋にかけて動向を見極める必要があるとの声が聞かれる。 

 

 

 
 

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