( 316876 ) 2025/08/17 06:15:02 1 00 共働き世帯の年収800万円の「普通の家庭」が、生活が厳しい理由について解説されています。 |
( 316878 ) 2025/08/17 06:15:02 0 00 わが家は「共働き・世帯年収800万円」で“普通の家庭”なのに…増税されても“支援”なし! 日本の「中間層」こそ生活が厳しい理由
「うちは共働きで世帯年収800万円。ぜいたくしなければやっていける!」そう思っていた平均的な家庭が、じわじわと追い詰められています。厚生労働省によると、児童のいる世帯の平均所得は820万5000円で、うち64.3%が「生活が苦しい」と感じています。
本記事では、“平均的な家庭”が、なぜ今「生活が苦しい」と感じているのかについて解説します。
厚生労働省の「2024年(令和6)年国民生活基礎調査」によると、図表1のとおり、「生活が苦しい」と感じている世帯の割合は、全体で58.9%、高齢者世帯で55.8%、そして「児童のいる世帯」では64.3%です。
図表1
図表1
厚生労働省 2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況
つまり、共働きで子育て中の現役世代の家庭こそ、もっとも生活が苦しいと感じていることが分かります。
一方、同調査によると、児童のいる世帯の平均所得820万5000円で、過去10年で最高水準です。これだけで判断すれば、「好景気?」とも思えますが、話はそう単純ではありません。
総務省の「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)6月分」によると、図表2のとおり、モノやサービスの値段の変化を示す指数である消費者物価指数は2020年比で111.7%です。つまり、約11.7%の物価上昇が確認されています。
図表2
図表2
総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)6月分
例えば、2020年に年収740万円の世帯が、5年後の2025年に、年収820万円だったとします。そして、物価上昇が11.7%だと、何もぜいたくできるようにはなっていないどころか、むしろ買えるものは減ります。
要するに、所得が上がっているのに生活が苦しい理由は、所得の伸び以上に物価が上がり、「実際に使えるお金が減っている」からです。
ではなぜ世帯年収800万円程度の「中間層の子育て世帯」が、もっとも「生活が苦しい」と感じるのでしょうか? その背景には、根本的な問題が隠れています。その問題は大きく3つです。
(1)人生の三大支出が一気に押し寄せるタイミング 物価上昇の影響は全ての家庭に及びますが、特に30~50代の子育て中の平均所得の世帯にとって、その負担はより深刻です。なぜなら、ちょうどこの世代は住宅費・教育費・老後費用という人生の三大支出が重なりやすい時期にあり、それぞれの支出が、長期化しやすく、かつ金額も大きくなりやすいためです。
加えて、物価上昇や円安の影響で食費・光熱費・学費など、生活コストが確実に上昇しています。つまり、出ていくお金は増える一方なのに、実質的な所得は減っている、板挟み状態になっているのが、中間層の子育て世帯なのです。
(2)増税され支援されない中間層の矛盾 財務省の「令和7年度 国民負担率(対国民所得比)」によると、図表3のとおり、国民負担率は1970年には約24.3%だったのに対し、2025年には46.2%まで上昇しています。
図表3
図表3
財務省 令和7年度 国民負担率(対国民所得比)の推移
国民負担率とは、税金や社会保険料などを「国に納めるお金の割合」を示す指標です。つまり、収入の約半分が国や社会保障のために引かれているということです。
加えて、日本の所得税に関しては、累進課税で、収入が多ければ多いほど、その税率も高くなります。結果として「手取りが減少し、自由に使えるお金のゆとりが奪われている」という現実があります。
中間層の場合、所得税や住民税の負担が大きくなる一方、低所得者層が受けられるような公的支援も対象外となるケースも多くあります。例えば、2024年まで申請可能だった「すまい給付金」は、一部の例外を除き、原則として年収が650万円以下の人のみ給付対象でした。
多くの公的支援制度は、一定の所得以下を条件としています。中間層はその恩恵を受けにくく、それでいて税や社会保険料の負担は重いという板挟みになりやすい、構造的に最も圧迫を感じやすい層だといえます。
(3)少子高齢化の影響を最も受けやすい世代 内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によると、図表4のとおり、2040年には65歳以上の高齢者が3926万人、15~64歳の現役世代は6350万人です。これは、高齢者1人を約1.6人で支える構図です。2060年には、支える人1人あたり約1.36人、2070年には、支える人1人あたり1.3人に悪化する見込みです。
図表4
図表4
内閣府 令和7年版 高齢社会白書(全文)
この構造のなかで、社会保障制度を支えるのは、言うまでもなく現役世代です。そして、会社員は「厚生年金」という報酬比例型の年金に加入しています。簡単にいえば、収入に比例して多くの保険料を支払う仕組みになっています。
つまり、働き盛りの中間層ほど「年金保険料の負担が重く」、老後の給付は不透明という、二重構造の厳しい現実を突きつけられています。
物価上昇、円安、そして将来は現役1.3人で高齢者1人を支える社会が到来すると言われる中、共働きの中間層の家計負担は、今後ますます重くなる可能性が高い状況だといえます。何の対策もせずに過ごしていれば、じわじわと生活が圧迫され、やがては家計破綻に陥るリスクもあります。
こうした時代においては、社会や制度に依存しきるのではなく、副業・資産運用・保険の見直しなど、自分たちで備える力を育てることが何より重要です。
出典 厚生労働省 令和7年版 高齢社会白書(全文)生活意識の状況 総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)6月分 財務省 令和7年度 国民負担率(対国民所得比)の推移 内閣府 令和7年版 高齢社会白書(全文)
執筆者 : 諸岡拓也 2級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャルフィールド編集部
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