( 316898 ) 2025/08/17 06:37:21 0 00 TBS CROSS DIG with Bloomberg
かつて「日銀を打ち負かした男」と言われた時期があるアメリカのベッセント財務長官ですが、「日銀はビハインド・ザ・カーブに陥っている」と明言。米国の財務長官が日銀の金融政策に言及するのは極めて異例なことですがその真意は何なのか?FRBの金融政策、中国との通商交渉、米ロ首脳会談、そして米雇用統計を管轄する労働統計局のトップ後任についても激白したブルームバーグによる独占インタビューです。
■“NVIDIAモデル”を「拡大しない手はない」
Q: 今週出てきた話題でぜひお話を伺いたいものがあります。NVIDIAを巡る新たな合意です。これは誰が思いついたのでしょうか? (※NVIDIAとAMDは中国へのAI半導体販売による収入の15%を米政府に支払うことで合意)
ベッセント財務長官:トランプ大統領です。大統領は私が知る中で最も考え方が柔軟な人物です。この非常にユニークな解決策によりNVIDIAは中国に進出できます。NVIDIAのチップは中国のテクノロジーの先行指標となり 米国の納税者がその分け前を得るのです。
Q: この合意はNVIDIAやAMDだけに当てはまることなのでしょうか?それとも他の企業にも広がるモデルですか?
ベッセント財務長官:将来的には他の産業でもあり得ると思います。現時点ではユニークなものですが、このモデルと試用テストができたのですから拡大しない手はないでしょう。
Q:輸出許可とひきかえに 国家安全保障上の懸念に値段をつけるとの声もありますが、どう反論しますか?
ベッセント財務長官:まず国家安全保障上の懸念はありません。先進的なチップは一切売りません。H20は 4・5・6段階も下のレベルのものです。ファーウェイが「デジタル一帯一路」を持つことを私たちは望んでいません。世界の、あるいは中国国内の標準が中国製になってほしくありません。
Q:私たちの独自報道によると 北京が企業に対しH20ではなく国内製品を使うよう通達した模様です。この件についてカウンターパートと協議する予定はありますか?
ベッセント財務長官:もちろん協議しますが、この件はNVIDIAのチップが中国で標準になることを心配している証拠です。NIVIDIAのチップは素晴らしい製品です。中国の技術の多くはこの製品に「便乗」しています。「取得する」という言葉は使わずあえて「便乗」という言葉を使わせていただきますが…
Q:つまり、技術を「盗んでいる」ということですか?
ベッセント財務長官:あなたの言葉ですが、その通りです 。NVIDIAのジェンスン・ファンCEOは中国より何年も先を行っているのです。
Q:このユニークな政策に関してウォール・ストリート・ジャーナルの論説委員会は政府が民間企業を支配する一歩手前だと批判しています。これらの政策が リスクを軽減しようとしている相手国に似てきたという懸念はありますか?つまり中央計画経済だった頃の中国に似てきたという懸念です。
ベッセント財務長官:いいえ、全くそんなことはありません。何故なら今まで通りの無制限の貿易では安全で公正な貿易ができなかったのです。それを今、安全にしようとしているのです。最高レベルのチップは送っていません。私たちは何もかもを誰にでも売るつもりはありません。介入が必要なのです。ウォール・ストリート・ジャーナルは言いたい放題ですね。昨日、私は会ってきたばかりですが、あそこは不機嫌な老人たちの集まりです。
■トランプ関税による収益は3000億ドルを超える
Q:この政策によって収益が上がります。収益をどう使う予定ですか?
ベッセント財務長官:債務の返済に充てます
Q:すべて債務返済に充てられるのですか?国民に還元されるという話も聞きましたが…
ベッセント財務長官:トランプ大統領はそのことについて話していますが、「大きくて美しい法案」では所得の低い50%の賃金所得者は別の形でお金が返ってきます。チップ ・残業代・社会保障年金には税金がかかりません。自動車ローンは税控除の対象です。もし この政策でかなりの額を債務返済できれば国民に還元するという話もできるでしょう。
Q:現時点での収益の想定額を教えていただけますか?NVIDIAだけではなく、関税全体で月々どのくらい収益が上がっていますか?
ベッセント財務長官:今年は3000億ドルに達すると私は言っていましたが、その数字を超えると思います。私はいつも控えめに見積もって良い結果を出すのが好きです。しかし、今回は 数日か数週間のうちにその数字を大幅に引き上げるかもしれません。
Q:経済界では 誰が関税を払うのかという議論が何カ月も行われています。定義上、輸入業者が関税を払います。しかし、重要なのは誰がその負担を吸収するかということです。海外の供給業者か、米国の国内企業か、それとも消費者か。
昨日、データが出ましたが予想に比べて関税の転嫁が限られていました。そのため 企業が予想外の方法でコストを吸収しているか、今後も転嫁は抑制されるのではないかという見方があります。この状況をどう見ますか?それとも今後 数カ月でバランスが変わると思いますか?
ベッセント財務長官:あなたのおっしゃった事はまさにその通りです。関税は港で支払われますが、相手国の生産者が価格を下げていたらどうでしょう?10%・15%・20%値段を下げていれば関税がかかっても価格は変わりません。ご存じのように私たちの最大の貿易赤字国は中国です。中国は他の西側諸国とは異なり利益を追求する目的を持っていません。
中国政府はいわば雇用機関なので 関税を負担し続けるだろうというのが私の見方でした。その通りになっています。この状況は今後も続くと思います。また コロナ禍で企業の利益率が高くなっていたので今は通常の利益率に戻りつつあるのでしょう。
Q:これはメインストリート(消費者)とウォール街、企業と消費者の間の富の再分配ということですか?
ベッセント財務長官:トランプ政権はメインストリートのことを第一に考えていますが、ウォール街も最高値を更新しています。なのでこれは誤った二元論です。私は「並行する繁栄」と呼んでいます。ウォール街もメインストリートも好調なのです。
■アメリカの政策金利は「150〜175ベーシスポイント低くてもいい」
Q:FRBが利下げすればウォール街はさらに良くなるかもしれません 大統領は昨日コメントを発表しました。「遅すぎるパウエル議長はすぐに利下げすべきだ」と。状況を判断するために もう少し時間を与えるのが妥当ではないですか?
ベッセント財務長官:まず言えるのは、もっと質の高い米国雇用統計のデータがあれば6月と7月に利下げができたでしょう。つまり50ベーシスポイントの利下げが行われる可能性は非常に高いということです。トランプ大統領はあだ名をつけるのが得意ですが、パウエル議長を「遅すぎる」と呼ぶのは彼が利上げを繰り返したがっているからです。パウエル議長は、先見の明があったアラン・グリーンスパンと違います。
パウエル議長はデータ重視ですが私はそれが間違いだと思います。米国は1990年代のような経済に戻りつつあると思います。なので、パウエル議長の考え方は古いです。9月に50ベーシスポイントの利下げから始まる一連の利下げが行われる可能性があると思っています。
Q:9月に50ベーシスポイントの利下げは経済が経済の不調の表れと受け取られませんか?
ベッセント財務長官:これは調整であり金利を引き締め過ぎているというシグナルになります。どのような試算をしても 金利は今より150〜175ベーシスポイント低くてもいいはずです。FOMCは立ち止まって考える必要があると思います。最も政治色が強かった理事の一人が辞任しました。彼女は政治色が強かったと思います。
Q:クーグラー理事のことですよね。なぜ彼女にそのような印象を?
ベッセント財務長官:内部の事情がたくさんあります。カマラ・ハリス氏が大統領選挙に出ていた時にクーグラー理事は利下げが必要だと言っていました。「滑走路を整える必要がある」と。その後、突然....トランプ氏のせいか、関税のせいかは分かりませんが。
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