( 317136 )  2025/08/18 06:22:58  
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定年退職を迎えた後の生活には、最初の解放感とは裏腹に現実的な課題が待ち受けていることが多い。

仕事から離れると時間はたっぷりあるが、充実感や楽しみを見失いがちになる。

多くの人が退職後に旅行や趣味を追求するが、オフシーズンには飽きてしまうことも。

社会的なアイデンティティや自己肯定感が失われることも体験し、何をライフワークにするかが大きなテーマになる。

新たな目的や活動、コミュニティを見つけることが重要であり、人生の楽しみ方を再考する必要があると提言されている。

(要約)

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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

長い会社員生活に終止符を打ち、迎えた定年退職の日。多くの人が、晴れやかな瞬間を迎えることでしょう。しかし、時間に縛られない“夢のセカンドライフ”が、実はそう長くは続かない現実をご存じでしょうか。楽しみだったはずの趣味に飽き、手元には膨大な時間だけが残る――。本記事では、ふくしまゆきお氏の著書『定年後を豊かにするシンプルライフ お金・モノに頼らない生活の実現へ』(ごきげんビジネス出版)より、定年後のリアルに迫ります。 

 

私は60歳の定年とともに会社を去りました。退職日の解放感は忘れられません。職場で最後のあいさつをし、お世話になった人たちに見送られてエレベーターに乗り込みました。ホッと一息つき、「これからは、昔の人たちの暮らしや生き方を調べ、彼ら彼女らの『人生の楽しみ方』を学ぶことに時間を使おう」と思った次第です。 

 

「ネクタイは犬の首輪と一緒。ネクタイをしているうちは会社につながれている」と父親がいっていたのを思い出しました。漠然とした不安をもってではありますが、一歩踏み出したのです。 

 

PGF生命が還暦になった人へのアンケートを毎年行っています。2024年のアンケート結果を見ると、叶えたい夢や目標の第1位は「旅行をする」でした。「日本1周をする・世界1周をする」をあわせると、男女2千名の回答者のうち365名が旅行を挙げています。 

 

2位は「健康に過ごす・健康になる」で127名ですから、旅行がダントツ1位です。しかしながら、旅行三昧といっても、1年もせずに飽きてしまう人が多いのが実状。夢が簡単に叶ってしまうのです。旅館の豪勢な夕食・朝食、各地の名物料理を食べ続けるのは1週間が限界。車で日本各地を巡る人、海外に行く人もいますが、結局のところ「年2〜3回の旅行でいいか」となることが多いのです。 

 

ゴルフは人気スポーツで、65歳以上の男性がグループで行うスポーツの実践者数は第1位です(2019年)。ゴルフ場の近くに住みゴルフ三昧の人もいますが、毎日のようにプレーをしている人はほんのひと握りです。勤め人時代はどれほど朝早くてもゴルフ場へ行くのが楽しみだった私の友人も、「週に数度の練習と一度のコースで十分だ」といっていました。 

 

多くの人は貴族のように来る日も来る日も遊び続けられません。貧乏性といえば貧乏性なのです。さて、あなたは定年後や仕事を辞めたあとの暮らし方、楽しみ方をどのようにお考えでしょうか? 

 

最後の出勤を終えて花束をもって帰宅し、翌日はのんびり。問題はそのあとです。旅行をするけど、楽しみはとくにない。これでは切なくないでしょうか。そのときは確実にやってきます。多くの人は役職の限界が見えてくる50代後半から漠然と考えはじめ、定年を経て、継続雇用がおわるころ真剣に考えはじめていると思います。 

 

しかし、それではいささか準備不足なのです。会社を離れた日から何が起こるのかを、まずは考えてみましょう。 

 

 

退職すると会社のありがたみをいろいろと実感するものです。まず、行き場があります。そして、「ちゃんと稼いでいる」と誇れる毎日があります。家(とくにリビング)にいると妻が嫌がる場合が多いようです。 

 

継続雇用で働く理由には、老後資金が必要なのではなく、妻からの質問「会社を辞めて何するの?」「毎日家にいるつもり?」に答えられなかったから、という私の元同僚も多くいます。「教育と教養」(きょう、行くところがある。きょう、用がある)で責められるのです。 

 

また、名刺があるのがありがたいことです。「〇〇社の■■です」だけで、初対面のあいさつも知人への近況説明もすんでしまいます。会社を離れると「いまは何をしているんですか?」といった質問が刺さります。私はオンラインでの日本語教師をしていてよかったと実感しています。「昔の人々の楽しみ方研究家です」とはいいにくいのです。実際にいったこともありますが、「何をするの?」「収入はどうなの?」「会社勤めはしないの?」など次々と質問され、大変厄介でした。 

 

会社は所属するだけで、私たちにアイデンティティーだけでなく、自己肯定感も与えてくれます。ですが、会社を離れる日は誰にでもきます。自分で会社を経営していない限り、やがてきてしまうのです。 

 

退職すると「会社に代わる何か」が必要です。報酬がなくてもOK。ボランティア活動、家庭菜園での野菜づくり、楽器演奏、なんでもOKです。いくつあってもよいですが、はつらつと生きていくためには、アイデンティティーや自己肯定感を得られる何かがいるのです。 

 

それだけではありません。会社を離れたあと、何を楽しみにして生きるのか。これはアイデンティティーよりも重要な問いかもしれません。そして、どこで、誰と、どのような暮らしをするのか、そのための資金はどうするか、など自分で決めなければならないのです。しかも、何をするか、できるかは、年齢とともに変わっていきます。時間軸もイメージしておかなければなりません。 

 

ふくしま ゆきお 

昔の楽しみ研究家 

 

※本記事は『定年後を豊かにするシンプルライフ お金・モノに頼らない生活の実現へ』』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。 

 

 

 
 

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