( 317641 )  2025/08/20 06:17:46  
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高齢者の施設入所は、安心を提供する一方で自由や人とのつながりを失うリスクも伴います。

身体的なケアが整っていても、精神的なケアが不足すると孤独感や不安が生じることがあります。

ある45歳の男性は、特別養護老人ホームに入所した父が孤立していることに気づき、見守りが不足していると感じました。

入所後の孤独感を防ぐためには、家族とのコミュニケーションが重要であり、デイサービスや地域包括支援センターの活用も選択肢として考えられます。

最終的に元の自宅に戻った父は、再び穏やかな表情を見せるようになりました。

施設入所が全ての安心を意味するわけではなく、心の安心には日常的な交流が欠かせないことが強調されています。

(要約)

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(※写真はイメージです/PIXTA) 

 

高齢者の施設入所は、「安心」と引き換えに日常の自由や人とのつながりを失うリスクもはらんでいます。身体のケアが整っていても、精神的なケアが十分でないと、入所後に孤独感や不安を深めてしまうことも。家族の支え方やコミュニケーションの取り方によって、その後の生活の質が大きく左右されることがあります。 

 

8月上旬、都内在住の会社員・山口拓也さん(仮名・45歳)は、特別養護老人ホームに入所したばかりの父・浩一さん(仮名・78歳)からの電話に、思わず動揺しました。 

 

「……帰りたい。ここ、寒いし……話せる人もいないんだ」 

 

受話器の向こうで涙声になった父は、まるで幼子のように訴えてきたといいます。 

 

浩一さんは、数年前に要介護2の認定を受けて以来、自宅でひとり暮らしを続けていました。しかし最近は転倒が増え、家での生活に限界を感じた拓也さんが、兄弟と相談してホーム入所を決断したばかりでした。 

 

浩一さんが入所したのは、比較的新しく設備も整っている施設です。食事や入浴も丁寧にサポートされており、スタッフの対応にも問題はありませんでした。 

 

「正直、父の言葉を聞いたとき、何を言っているんだろうと思いました。ようやく安心してもらえる環境を整えたのに…と。でも、面会に行ってその理由がわかりました」 

 

入所3日目、施設を訪れた拓也さんが見たのは、ベッドの上で無言のまま虚ろな目をした父の姿でした。 

 

個室の中にはテレビもありましたが、電源は切られたまま。職員は必要以上の会話を避け、機械的に業務をこなしているように見えたといいます。 

 

「人と会話する機会がほとんどなかったんです。誰とも目を合わせない日が続けば、気力も失われますよね」 

 

施設への入所は、家族にとっても本人にとっても「安心できる選択」のはずでした。しかし現実には、集団生活の中で孤立を感じる高齢者は少なくありません。 

 

特に要介護1〜2程度の軽度の介護度の方は、身体の自由がある程度残されているぶん、「やることがない」「誰とも話せない」といった精神的なストレスを抱えやすい傾向にあると、介護福祉士の川上さん(仮名)は語ります。 

 

「施設に入れたからといって、すべて安心ではないんです。むしろ、入所後に孤独感が強まり、食欲や体力が急激に落ちる高齢者もいます。特に、家族と会えない日が続くと悪化しやすい」 

 

 

介護施設での孤独を防ぐには、家族の存在がカギになることが多いといわれています。週に一度でも面会に訪れたり、電話で近況を話すだけでも、高齢者の不安は大きく軽減されます。 

 

また、以下のような選択肢を考えることもできます。 

 

●デイサービスとの併用:施設ではなく、自宅を拠点としながら通所することで孤立を防げるケースがあります。 

 

●サ高住(サービス付き高齢者向け住宅):自由度が高く、軽度介護者に向いています。 

 

●地域包括支援センターへの相談:精神的なケアや地域資源の活用について、継続的な相談が可能です。 

 

その後、拓也さんは父と相談し、施設を一時的に退所することを決めました。現在は在宅で訪問介護サービスを受けながら、週2回のデイサービスに通う形をとっています。 

 

「自宅に戻ってきてから、父が本当に穏やかな顔を見せるようになったんです。やっぱり、人と関わることって、年を重ねるほど大切になるんだと思いました」 

 

「施設に入れたから安心」――そう思いたくなる気持ちも無理はありません。しかし、「心の安心」には、日々の小さな対話やぬくもりが欠かせないのかもしれません。 

 

THE GOLD ONLINE編集部 

 

 

 
 

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